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【ライブレポート】2021/10/24 "pavilion 2nd EP『run-up!!』release party"@新代田FEVER

本日のライブはpavilionのレコ発企画。日曜15時スタートという長時間が予想されるイベントではありつつも、呼ばれたメンツが個人的に関心の高いバンドばかりということもあり、足を運んでみた。

各バンドともにとても楽しく、そして興味深くライブを味わうことができたので、それぞれ短めに感想をまとめていこうと思う。

■Sisters In The Velvet

今日のトップバッターを務めたわけだが、トークは最小限。曲を終えたタイミングでの「ありがとうございます」と「pavilion、新譜おめでとうございます」と「次が最後の曲です」くらい。

音源はサブスク等で聴いていたものの、あまり詳しい情報を拾えておらず、また公式サイトもなくいろいろと謎の多いバンドという印象。昨年春ごろにネットメディアの取材を受けていたようで、そこからわかるのは90sのオルタナ、グランジ、特にNirvanaの影響を受けた3人組のバンドである、ということ。

メンバーはAoyama Tatsuro(Vo/Gt)、大久保和希(Ba)、小西耀一朗(Gt)、で合っているのだろうか…。まとまったメンバー情報を紹介するページがなかなか見当たらず、取材を受けたメンバーの名前が記載されている各ネット記事から拾ったものだ。(そのためここでは英語表記と漢字表記が並んでいる)

そして今、目の前のステージには4人いる。サポートとしてドラムが入っている、という認識でいいのだろうか…。

特にバンド名も名乗ることをせず、寡黙で、ひたすらに音楽を鳴らすストイックなパフォーマンス。曲と曲の間も言葉でつなぐことはせず、3人は黙々とチューニングを行っていた。フロントにマイクスタンドが3本立っていたが、使われたのはステージ下手に陣取るギターボーカル・Aoyamaの分のみ。センターに歌もコーラスもしないベースプレイヤーが立つという編成もユニークだ。

全体的にテンポはゆったり気味、しかし芯を捉えたサウンドには強い存在感がある。輪郭のしっかりしたリードギターもカッコいい。

魅せることより聴かせることにパラメータを全振りしたかのようなパフォーマンスはとても印象的だった。

■aoni

2番手に登場したのは4人組ロックバンドのaoni。オルタナ、グランジサウンドの後に登場したaoniの直球ロックは、そのコントラストゆえか、スコーンと抜けるタイプの気持ちよさを感じさせてくれる。

ほぼ動きのない聴かせるステージで聴く者の耳に集中力を与えていたSisters In The Velvetから打って変わって、激しい動きと共に派手なアクションで盛り上げるaoniのライブ。最初の2組で思い切り振り幅のあるバンドを用意するとは、pavilionはなかなか憎らしい演出をしてくれる。

曲のところどころでアジカン等、00年代ジャパニーズロックの香りがして、このあたりの音楽をがっつり浴びた者として思わずニヤリとする瞬間も。

ちょっと面白かったのが、Kosuke Saito(Ba)がフロアに背を向け、Issei Kobayashi(Dr)を向いて演奏するシーン。通常こういった場合ベースとドラムは視線を合わせたりするものだが、Isseiは顔を上げようとせずドラムに集中。ああ、Kosukeの思い届かず…!(こちらの勝手な想像)

Naoto Yamashita(Vo/Gt)はMCで、pavilionの「Yumeji Over Drive」はバンドへの憧れをかき立てられる曲だと語り、Yumeji=夢路、というタイトルに絡めて今日出演の各バンドそれぞれに夢や目標があるんだ、とも話す。バンドマンとしての熱い気持ちの一端がこぼれるようなMCだ。

ライブのラストを飾った「JIDAI」では、最後の絶叫とばかりにIkuto Matsukawa(Gt)はギターを歪ませる。ディストーションの咆哮が響き渡り、aoniによる30分のライブは幕を閉じたのだった。

■Jam Fuzz Kid

今日出演の6バンドの中で、もっとも野心に溢れている、そんな印象を持ったのがJam Fuzz Kidだ。

5人中4人がステージに現れ、後から今村力(Vo)がゆっくり登場するという演出からして大物感たっぷり。

ジャケットにキャップスタイルの黒木徹(Gt)は下手に、もうひとりのギター・ヤマザキタイキは上手で、小畠舜也(Ba)は後列で村松知哉(Dr)の横にスタンバイ。

そして小柄なボディを遥かに上回るスケール感を漂わせて、アディダスジャージを着用した坊主&ピアスなフロントマン今村が堂々センターに立つ。

黒木のリードギターはもちろん、まるでジョジョ立ちのごとくアクロバティックな姿勢で弾くヤマザキのリズムギターがJam Fuzz kidの強烈な音色を形作っている。時にリフやソロ要素も担うヤマザキの足元にあるエフェクターはまるで要塞のようだ。

90年代のUKロック、特にオアシスの影響を強く感じさせる彼らの音楽だが、偉大なバンドへのリスペクトの中にもJam Fuzz kidとしてのオリジナルな光を放っており、大きな飛躍が期待せずにはいられない。

これまでの代表曲のひとつ「Floating away」や確実に認知度UPに繋がった「Tyler」、そして最新リリース曲「Afterglow」、さらには近日公開という新曲(「consequences?」)など、6バンド出演のイベントにもかかわらず多士済々な曲が揃ったセットリストは実に贅沢。

バンドの轟音サウンドにかき消されずしっかり届く今村の歌声は、強さがあるのに音が割れて耳にダメージを与えることもなく、スピーカー前にいた自分でも気持ちよく楽しむことができた。

皆がライブに来られるようになって、ようやく大阪や名古屋に遠征できるようにもなり、こうして観客たちと同じ時間を共有できることが嬉しいと話す今村。いつも悔しいことばかりで、昨夜も風呂でひとり、「俺は今何をやってるんだろう」と泣いたんだと語り、それでも自分の作った音楽を皆が楽しんでくれることで救われていると話すと、今日のこのメンツでみんなを大きい場所に連れていきたいとその夢を告げる。

「最後、ロックルロールしましょう」という言葉に続いて「Sunshine Highway」を披露してフロアを大いに盛り上げると、まだアウトロ途中にもかかわらず今村だけがステージから去っていった。これまた大物感あふれる演出だ。

セトリを3つのブロックに分け、合間にしっかりとMCを挟む。30分の中でどういうライブをするのか、Jam Fuzz Kidをどう見せていくのか、何を伝えたいのか。ちゃんと考えて構成された、プロフェッショナルなライブだと感じた。大きなステージに立つために必要なこと、やるべきことを意識してのパフォーマンスは、フロアにも着実に届いていたと思う。

セットリスト
1.Untitled(?)
2.Fringe
3.Concorde
4.Floating away
5.consequences(?)
6.601
7.Tyler
8.Afterglow
9.Sunshine Highway

■Transit My Youth

4バンド目は、大阪発の5人組男女混声バンド、Transit My Youth。サブスクでは試聴済みだが今日初めてライブを観て、パワーポップな陽気さと主にナカヤマポンタ(Vo/Key)が担うエレクトロ要素が混ざり合ったような楽しいロックにあっという間に心を掴まれてしまった。

爽やかで気持ちの良いモリノササイ(Vo/Gt)の歌声を軸にした、ナカヤマとの男女ツインボーカルによる華やかさがあり、笑顔たっぷりなゆう(Gt))のギターにはハッピーな空気が宿る。ゆうとぽやいぬ(Dr)が笑顔を交わす瞬間は、aoniのそれと対照的でまた面白い。

樋川(Ba)は、そのベースプレイより、2回ほど炸裂した突然の「イエヤァァァァァァァァ!!」という奇声…いや絶叫が耳に残っている。

モリノの歌声、ナカヤマのキーボードが奏でる旋律、そしてゆうの笑顔や積極的にステージ前方に飛び出しての演奏(+樋川の絶叫)などが生み出す陽のオーラや勢いがフロアを活気づけ、コロナ禍でのライブだということを忘れさせてくれるくらい楽しい気持ちで満たされた時間だった。

モリノはpavilionの音楽を聴いたとき、仲間を見つけた!という気持ちになったんだと語るくらい彼らのことを気に入っているらしく、あまり面識ない中でもイベントに呼んでくれたことを感謝していた。

今日をきっかけに6バンドが交流を育み、お互いがお互いのイベントに呼び合うような流れが生まれたら最高だ。

セットリスト
1.ソングバード
2.Fed up
3.光
4.Daisy Song
5.スーサイスーサイ
6.I'm weaker
7.Hipopo

■Lucie,too

大事なトリ前を務めるのは、Chisa(Vo/Gt)とヒカリ(Ba)による2人組バンド、Lucie,too。サポートにたんこぶちんのまえの ほのかを迎えた体制でのライブとなる。

音の形が見えるようなハッキリ伝わってくるChisaの歌声と、丁寧なヒカリのベースのコンビネーションも楽しく、それは演奏面だけでなくステージでの振る舞いにも表れていた。

オフェンシブなChisaが積極的に喋り、受け答えするかたちで会話に参加するヒカリ。ヒカリは昨年、新メンバーになったばかりということなので、彼女とサポートのほのかのふたりを引っ張っていくのは自分しかいない、というChisaのリーダシップは見事だ。

彼女たち自身一年ぶりのFEVERでのライブということで、この一年いろいろあったでしょうと観客に語りかけながら、自分たちにもありましたと告げ、「脱退だったり脱退だったり」と自虐を織り交ぜて場を和ませる。

主催のpavilionをパラビオンと言い間違え、楽屋でParaviの話してたから…と言い訳する様もなんだか可愛らしい。

新メンバー(一年経ったからもう新メンバーではない、とはChisaの言葉)とサポートドラマーをけん引するChisa、踊る運指が見ていて楽しいヒカリ、サポートの立場からメンバーとしっかり呼吸を合わせようとアンテナを張るほのか。シンプルにこの3人の音だけで突っ走る、編成上正真正銘スリーピースのストレートなロックは音もパフォーマンスもどこか清々しく、そして気持ちよかった。

■pavilion

ラストはイベントの主催にしてレコ発おめでとうのpavilionが登場。サブスクで聴いていたときの印象は、センスあるギターロックバンドで、どちらかというと泥臭さよりは洗練さがにじんでいる、そんな印象。しかし目の前で繰り広げられたステージはとても肉体的で、体と気持ちでぶつかってくるようなライブだった。

まず、何といっても今日イチの爆音が凄かった。一日スピーカー前にいたせいで耳へのダメージが蓄積していたという可能性もあるが、それでもひとつひとつの音に力があったように思う。

森(Vo/Gt)の歌声や山本(Gt)のギター、そして小山(Dr)のスネアもかなり破壊力があった。佐藤(Ba)のベースはパワーとはまた違ったベクトルで耳に残る。音質なのかベースラインが個人的に好みだったなのか…。次にまたライブを見たら何か気づくのかもしれない。

ライブ中のちょっとしたチューニング時間でできた空白を埋めるように、2年前の10月23日が初ライブだったと小山が話し始め、こうして初の自主企画を立ち上げることができて嬉しいと語れば、森は「呼んでくれてありがとう、と言われるのは初めて」と初々しいMCを披露。

きっとこれから先、たくさんのバンドマンから「呼んでくれてありがとう」と言われることだろう。その最初の一歩を目撃できたことは幸運だ。

その曲名からして面白い、でも楽曲はカッコいい「エンタイトルツーベース」をはじめとする2nd EP『run-up!!』収録曲を中心に、aoniのNaotoが言及していた「Yumeji Over Drive」などを披露し、トリにふさわしい盛り上がりをフロアにもたらしたpavilion。

本編を終えて一度楽屋に戻るも、ほぼ間髪入れずにステージに帰ってきて1曲だけ演奏し、『pavilion 2nd EP『run-up!!』release party』を締めくくった。

今回の企画を通じて知り合ったり、仲良くなったりしたバンドもいるだろう。すでに11月にはJam Fuzz Kid企画にpavilionの出演も決定している。

若手バンドによる若手バンドのイベントとはいえ、Lucie,tooのように、すでにある程度名の知られたバンドもいる。しかし彼女たちはメンバーの入れ替えもあって、リスタートの一年という捉え方もできる。

そんな、これからの音楽シーンを支えていくポテンシャルを持つ、6組のバンドたちのさらなる活躍を楽しみにしたい。


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