【ライブレポート】2022/12/29 心臓爆発日和 -2022FINAL-@shibuya eggman
shibuya eggman主催のイベント『心臓爆発日和 -2022FINAL-』へ行ってきた。11月末からずっと動悸が続いている自分にとって、これ以上ないくらいピッタリなイベントタイトルだ。
2022年、とても印象に残る時間を何度も味わわせてくれたJam Fuzz Kidと板歯目がタイテに並ぶ、まさに今年を納めるにふさわしいライブ。出演バンドはほかにも多数いるのだが、今回はこの2バンドに絞って振り返ってみる。
Jam Fuzz Kid
持ち時間25分という短い尺ではあるが、セッティング中にRiki Imamura(Vo)が「ちょっと音合わせするんで気楽に待っててください」と告げて「Tunmbleweed」、さらには「601」をさらりと演奏して転換中の観客を楽しませる。
「ルールないんで自由に楽しんでってください、よろしく!」
そんな言葉から「Sunshine Highway」でライブスタートだ。ライブの最後を飾ることも多く、一方で1曲目という大役を担うこともある同曲はまさにライブ鉄板曲。
アサイリュウ(Gt)がめちゃくちゃ気持ちのいいギターリフを弾けば、ヤマザキタイキ(Gt)は間奏でギターソロを繰り出すなど、Jam Fuzz Kidの両翼は、ふたりとも主役を張るギタリストだ。
「東京のロックンロールバンド、Jam Fuzz Kidです、よろしく!」とRikiが挨拶をすると、続けて「eggmanに呼んでもらって、こうやって初めての人と出会えるの超嬉しいし、ライブ終わった後最高だったって言ってもらえるように頑張るんで、全力で楽しんでください」と語り、初見が多いフロアに俄然テンションを上げている様子。
「次の曲めっちゃ盛り上がるんですけど、ジャンプする元気あります?」
そんなメッセージに拍手で応えるフロアがメンバーに勢いをもたらし、2曲目「KABUKI」へ。
正直、ステージからの煽りに拍手で応えつつ、実際には何のアクションもないという構図を何度も観てきていたので、今回もそうかな…などと考えてしまったのだが、今日のeggmanの観客は違った。曲が始まるとフロア最前はもちろん、真ん中あたりにいる観客もジャンプしている。
この景色に、思わず笑みがこぼれてしまう。初見も巻き込めるステージの力と、初見でも楽しめる観客のノリの良さが素晴らしい。
ヤマザキがイントロのリフを演奏するのだが、アサイのギターにJohn S.Kobatakeのベース、そしてオオコシタクミのドラムと各楽器隊に見せ場がある。Rikiの魅力溢れるボーカルだけでなくバンド全体として輝いているのが、彼らのライブに魅せられてしまう理由のひとつだ。
Kobatakeがピックで刻むベース音ですぐそれとわかる、「Tyler」が3曲目に披露される。ステージと柵の間に用意された緩衝地帯に降りて、まさに観客の目の前で歌い上げるRiki。ショートセットの中にも様々な変化で観る者を楽しませていく。
「これからもめちゃくちゃ頑張ってロック続けていくんで、悲しいことがあったり元気になりたい日があったらぜひライブ来てください」
Rikiの言葉に続けて演奏されたのは「Pluto」だ。アサイのギターリフから始まり、リズム隊がなだれ込んで濃度を上げていく瞬間にゾクゾクさせられる。RikiはTシャツを脱いでタンクトップ姿にチェンジ。初見の観客が多いフロアとは思えないレベルで上がる無数の拳の向こう、照明の光りを背に歌うRikiの姿が最高のムードを演出する。
「今年ラスト、最高にブチ上がろうぜ!」
威勢のいいRikiの叫びと共に、本日のラストナンバー「Shimmer」が始まった。Kobatakeの、四弦の上を舞うような指使いに思わずうっとり。さらにタッピングでさらなる見せ場を作ると、入れ替わるように両翼ギターがステージ前方で華のあるプレイを披露する。
個々のスキルという土台の上に、いろいろなファンを巻き込んで、共に次のステージへ歩みを進めて行こうというRikiの立ち居振る舞いが重なって、ライブを観るたびにどんどん頼もしくなっていくJam Fuzz Kid。
いつものようにアウトロでメンバーを残してステージを去るRikiの背中を観ながら、いずれ立つであろう大きな舞台での彼らのライブを想像し、濃密な25分の余韻に浸った。
板歯目
続いで登場するのは、板歯目だ。セッティング中に音を出しながら「大和の声がおっきいから下げてほしいです笑」と笑みを浮かべながらリクエストする千乂詞音(Vo/Gt)。先ほどのJam Fuzz Kidのライブにテンション上がったと話す庵原大和(Dr)。それぞれが軽く会話を交わしながらも、セッティングが問題無さすぎて時間を持て余してしまう3人の姿が微笑ましい。
なんとか転換時間をやり過ごして、いざ本番。「ちっちゃいカマキリ」からライブスタートだ。ゆーへー(Ba)によるエグいスラップベースが耳を捉えて離さない。千乂が歌に専念し、リズム隊だけが音を奏でるパートも違和感がないどころか、めちゃくちゃカッコいい。まるで掌が躍っているかのようなベースプレイは、一見の価値あり。
続く「ラブソングはいらない」では、スリーピースロックバンドの真骨頂とばかりに3人の全力爆音がぶつかり合って共鳴する。今度はウッドベースばりの角度で演奏するゆーへー。曲ごとに豊富なバリエーションを用意してド派手なパフォーマンスを見せる彼は、千乂と双璧のフロントマンと言っていいだろう。
ドラムの庵原も負けてはいない。椅子の上に立って大いにアピールだ。圧倒的パワフルな歌声を持つ千乂に、スター性のあるゆーへーのベースを後ろから支える役目は、並大抵のドラムでは務まらないだろう。このふたりと張り合える庵原の迫力のドラミングもまた、板歯目の大きな武器だ。
3曲目の「コドモドラゴン」では、ゆーへーが跳ねるようなポップなベースで楽曲を彩れば、千乂は抑え目の歌唱から、サビ直前で一気にギアチェンジして怒涛の絶唱を解き放つ。
“アンチョビットマシンガン”を連呼して終わるユニークな楽曲「アンチョビットマシンガン」や、ぶっきらぼうな歌い方からウィスパーボイス、そして絶叫と様々な声で表情豊かに歌を表現する千乂の魅力全開な「dingdong jungle」、疾走感溢れるナンバーで躍動するゆーへーのプレイも楽しい「Ball & Cube with Vegetable」と、強烈な個性の塊のような楽曲たちを次々と投下する板歯目。
すでに音楽シーンで注目を集めつつある彼女たちに観客たちも好反応。ひとつ前のJam Fuzz Kidとは全く異なる音楽性だが、たくさんの手が上がり、それぞれにライブを楽しんでいる様子だ。
板歯目の中では少数派なのでは…と感じる、しっかりキャッチーなサビが美味しい「KILLER,Muddy Greed」では、ベースリフともいえるフレーズがビリビリと響き渡り、鳴りやまないドラムの一瞬の休符がグッと心を惹きつける。(キャッチーなメロディだけに頼らず、強度のある楽曲を次々と生み出しているのも板歯目の凄いところなのだが)
今日が年内最後のライブだという板歯目。
「(shibuya eggmanに)出るの久しぶりなんですけど、ステージ大きいから楽しいよね♪」
「はじめましての方が多いかもしれないけど、観てくれてありがとうございました」
そんな千乂のピュアで素朴なMCにほっこりしてしまうが、最後を飾る「地獄と地獄」で豹変する様はまさに圧巻だ。G-FREAK FATORYの茂木レベルと言っても過言ではないような、よどみない高速歌唱。TikTokでバズったキラーフレーズの《陰キャ陰キャ陰キャ》もバッチリ決まり、さらにはゆーへーの“床置き琴スタイル”なベースパフォーマンスも炸裂。
耳と目で楽しませ、最終的には心臓にドスンと響く爆裂スリーピースの面目躍如なステージを繰り広げ、板歯目の2022年は幕を閉じた。
2022年、何度もライブを観に行った2バンドと共にライブ納めができて大満足。今年着実に前に進んだ両バンド、きっと2023年はさらなる飛躍の一年になるはず。引き続き彼ら、彼女らの躍進する姿を見届けていきたいと思う、そんなライブだった。