【ライブレポート】2021/5/14 新宿Marble 17th ANNIVERSARY×THE KING OF ROOKIE pre. 「MARBLE JACK 3DAYS」-DAY1-
新宿にあるライブハウス・Marbleの17周年を記念した、新潟のロックバンドTHE KING OF ROOKIE企画「MARBLE JACK 3DAYS」。初日のメンツには自分が参加しているプロジェクト・IMALABとも縁があるNIYOCOが出演するということで、足を運んでみた。
最初の目的はもちろんNIYOCOのライブを観ること。IMALABが初めて実施したオンラインライブを現場で観て以来、ライブハウスでの彼らに触れていなかったからだ。
板歯目とTHE KING OF ROOKIEについてはほとんど知識もなく、1曲耳に入れた程度で臨んだスリーマンだったが、結論から言えば最高だった。
そんなめちゃくちゃ熱い夜になった各バンドのライブについて、短めに振り返ってみたいと思う。
※なお、コロナ禍におけるライブ開催ということで検温、連絡先記入はもちろん、観客全員マスク着用でライブ中はいっさい声を出さずに鑑賞していたことを付記しておく。
板歯目(@banshimoku)
詞音(Vo/Gt)、ハルカ(Ba)、庵原大和(Dr)の3人による、都立練馬高校軽音部所属のスリーピースバンド、らしい。ライブが始まる前、ステージに立つ詞音の佇まいからして、すでに只者ではない、独特の雰囲気がある。しかしライブが始まってすぐに、雰囲気と呼んだものがオーラに変わる感覚を味わった。
まず、感情が高ぶりすぎて何を言っているのか聞き取れない。バンド名や曲タイトルも紹介しているのだが、初見がこれを拾うのは厳しい…!それくらいエンジン高回転のスタートダッシュ。
いちばんの衝撃は詞音の歌声だ。腹から生まれ喉でうねりを加えた声の強さ大きさたくましさ。高校生という枠を飛び越えて、数多くいるインディーバンドの中でもそう簡単には出会えないような魅力あふれるパワフルなこの声に惚れた。“エバー”“バトルカメ”といった激しい曲はもちろん、BPMの低い曲“私が悲しいんです”でも激しさを損なうことなく、フロアに突き刺してくる。※“私が悲しいんです”は音色や譜面もちょっと面白い曲
また「めんどくさいって曲」という紹介とともに演奏した“Y”での《めんどくせぇ》フレーズの繰り返しにはとんでもない破壊力がある。声にマッチした言葉の選び方も素晴らしい。カッティングギターによる色気のようなエッセンスも入った、個人的にイチオシの曲。
演奏中の彼女たちの笑顔、楽しそうなパフォーマンスはシンプルに観ていて気持ちが良かった。詞音とハルカは靴を脱いで靴下でステージに立っていたが、裸足ではなかったのが面白い。まるでステージ上は土禁なのかと錯覚してしまう。
10代にしては、だとか10代なのに凄い、という言葉はいらない。ひとつのバンドとして粗削りの中にも光るものがたくさんある、めちゃくちゃカッコいいスリーピース。衝動を惜しげもなくぶちまけるライブで強烈な爪痕を残した板歯目の活動は、これからもチェックしていこうと思う。
1.エバー
2.まず疑ってかかれ
3.私が悲しいんです
4.バトルカメ
5.Y
6.コモドドラゴン
※セットリストの2曲目、3曲目は板歯目にヒアリングして判明
NIYOCO(@NIYOCO1)
“オールドオアダイ”を合わせながらセッティングしている…と思ったらいつの間にか本番が始まっていた。彼らのライブ最大の魅力はその熱量であり、時に暴走と称されるほど激しいパフォーマンスを繰り出す川瀬(Vo/Gt)から目が離せない。
“オールドオアダイ”での《いつなの?》の歌詞にからめて《緊急事態宣言が明けるのはいつなの?》《不安にならない日々はいつなの?》《俺の借金がなくなるのはいつなんだろう?》と現状とユーモアを入れ込むスキルも見せつつフロアを盛り上げていく。《光はここにあるからね》とまるで悲痛な叫びのようにも聞こえるフレーズに胸が締め付けられる。
手加減を知らない川瀬は1曲目から120%だ。その全力っぷりは顔で歌う彼の表情ですぐにわかる。
いきなり燃え尽きたのか、MCでは「終わりです、もう疲れました!」と言い出し、集中し過ぎて真っ白になったせいか「なんだっけ次?」と2曲目を忘れる始末。その2曲目“マフエル”でさらにフロアの熱量も上がり、手を挙げて楽しむ観客の姿も。
一旦MCを末永(Ba)に任せ、彼が真面目に話し始めた途端に遮って自らMCを横取りする王様、川瀬。これで下手なこと言うと顰蹙ものだが、「緊急事態宣言で制限されてる今はチャンスだと思ってる」「音楽業界や飲食店が制限されて」「制限されたら反発したくなる」「そういうエネルギーはチャンスだと俺は思ってます」と熱く語り、観客の心を掴んでいく。
「ライブハウスに来れないからね今」
「今来てる方たちは単純に音を楽しんでください」
「俺の顔を見てください!」
まさに、先ほど触れたようにNIYOCOのライブは川瀬の顔も大きな要素。「俺の顔を見て」という彼の言葉の本意とはズレるかもしれないが、結果として間違ってはいないのだ。
今回、サポートギターを入れて4人編成となっているため“ロックンロール”ではギターを手放し、ハンドマイクで歌う川瀬。歌詞を身振り手振りで表現していく様は、伝えたいもの、届けたいことがあると証明しているようにも見えた。
やがて彼の「スイッチ」が入る。マイクが床に放り投げられた際の「ボコッ」という音を残し、暴走が始まった。マイクのないマイクスタンドを握り、ないはずのマイクに向かって絶唱する川瀬。異様な光景ではあるが、ある意味これがNIYOCO印だ。歌い終わって「怖くないよ!大丈夫!」とフロアに語りかける川瀬、そして苦笑いを浮かべる末永とカンタ(Dr)。このふたりがいるから川瀬は自由に暴れられるのかもしれない。
4曲目が始まる前の語り。音楽と出合うまで、高校にも行かず引きこもっていたという川瀬は、鹿児島時代、実家で飼っていた猫のエピソードを話す。2月24日に家に来たから「二ヨ」と名付けられ、NIYOCOというバンド名の由来となったその猫は、昨年亡くなってしまったんだそう。
二ヨが死んでしまって寂しかった、涙が出ちゃったと川瀬は言う。
引きこもっていて自分に余裕もなく、だから人のためや家族のためには歌えない、自分の言葉だけをわがままに発してきたという川瀬が、それでも「誰かのために歌います」と告げ、二ヨを歌った“夏風邪”を披露する。
これまでの暴走が嘘にように、切実な思いと悲しみを漂わせながら、どこか優しい笑顔も浮かべて《二ヨ 二ヨ 君はどこにいるの?》と歌う。
暴走と哀愁のコントラストもまた、NIYOCOの大きな魅力だと気づかされる瞬間だ。
ラストは爽快なカタルシスを味わえるキラーチューン“存在ビーム”で改めてフロアの温度を上昇させ、NIYOCOのステージは終幕となった。暴風が訪れ、凪となり、そして再びの暴風。まるで台風のようなステージ。これぞNIYOCO。
1.オールドオアダイ
2.マフエル
3.ロックンロール
4.夏風邪
5.存在ビーム
THE KING OF ROOKIE(@The_eeeeekie)
トリを担うのはTHE KING OF ROOKIE。こちらも板歯目同様にまだ10代と若いバンドだ。
黄色つなぎのヒロム(Gt)に上裸&黒ジャケットの鈴木琳(Vo/Gt)、青ジャージのワシミリョウ(Ba)、左肩丸出しTシャツなちゃんけん(Dr)と衣装の統一感ゼロ。そしてフロントの3人は裸足。この子らちょっとヤバいかも、という予感は的中することになる。
1曲目からさっそく混沌を生み出す彼ら。鈴木はステージ前に設置された柵に足をかけて歌うが、勢い良すぎて思いっきり踏み外してしまう。ケガしないか不安になる立ち上がりだ。
肝心のライブはというと、すさまじい爆音で、これぞライブハウスの音楽!と興奮させてくれる。またパンクバンドらしいガチャガチャ感もありながらメロディはポップで初見でも楽しく音の波に乗れる、そんな曲が多い印象。
ものすごい圧でもって激しいパフォーマンスを展開しつつ、演奏自体は決してグダグダにはならないのも凄い。
“愛によろしく”を演奏時、鈴木が勢いつけて柵めがけてダイブするという事故、いや事件も発生。腰から九の字に曲がって柵にぶら下がるかたちになった鈴木。本当にケガが心配になるシーンでもあったが、本人も「びっくりした!」と想定外だったようだ。
ハチミツアレルギー(?)のせいで全身にアレルギー症状が出て目も腫れてしまったという鈴木だが、そんな不調をものともしない、アグレッシブという枠からはみ出るステージには終始圧倒させられた。
マイクの向きがズレた際に手で戻すのではなく、ギター演奏を続けながら口を使ってズレを直す様を見ても、今日これまでのライブを観れば何の違和感もない。むしろそれ一択だろうとすら思えてくる。
激しいアクトは鈴木だけではない。ちゃんけんのド派手なドラムも、ヒロムの迫力あるギタープレイも強烈だが、中でも個性的だったのはワシミリョウだ。常に苦しそうな表情を浮かべながらベースを弾いている。なぜそんな、苦痛で悶えているような顔なのだろう…。途中から気になってずっと彼を見ていたような気がする。
歌詞を間違えてしまい演奏をやり直す場面もあったが、そんなハプニングは些末的なこと。そう思えるくらいにひとつひとつの曲やアクションが事件だった。
ギターを捨ててハンドマイクで暴れだす鈴木、思わずベースを放り投げてしまうワシミリョウ…俺たちひとりひとりが輝くんだという気概を感じるようなステージ。4人の爆発力はこれからの可能性をじゅうぶん感じさせてくれるものがあった。
今日出演した3バンド、すべてが爆音を奏で、暑苦しいほどの圧があって、最高にカッコ良かった。こういうご時世なのが本当に惜しいくらい、ぜひともライブハウスで直に味わってほしい、そういうライブを繰り広げていた。川瀬の言うように、この状況を逆にチャンスと捉えて、ガンガン攻めていってほしい。
ライブハウスから帰宅して感じる耳鳴りは、いつだって心地いい。シンプルだが大切な感覚を思い出させてくれる夜だった。
ちなみに、ライブ後に物販で入手したNIYOCOにとって初めてのCD。これが貴重な品になるくらい、大きくなってくれたらと願う。
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