【ライブレポート】2022/7/12 一寸先闇バンド「ルーズ」リリース記念 プレイベント@渋谷HOME
一寸先闇バンドのレコ発プレイベントに行ってきた。個性的な名前と確かな演奏スキル、そして何よりその歌声と楽曲の魅力で注目度上昇中のバンドが、ついに全国流通盤を発売する。その記念となるプレイベントが今日のライブだ。バンドにとって馴染みのある渋谷HOMEでの開催ということもあり、リラックスした雰囲気のなかで行われた1時間ほどのライブを振り返る。
ピンスポットを浴びたおーたけ@じぇーむず(Vo/Gt)がひとりギターを弾きつつ歌い始め、ライブスタート。
オープニングを飾る「あそぼう」はかくれみの(Pf)によるリフともいうべきピアノのフレーズが印象的な一曲。おーたけもギターを弾いていない時間は身振り手振りで曲を表現しながらのパフォーマンスだ。
竜生(Syn)のシンセベースによるエレクトロ感とおーたけの生ギターという対照的な組み合わせの妙もたまらない。
2曲目は、「知らんがな」というつぶやきから始まる、その名も「知らんがな」。表情豊かに歌うおーたけに視線が吸い寄せられる。また、どこか80年代サウンドを感じさせる、浮遊感漂うシンセベースの主張も強力だ。
曲終盤ではかくれみのと竜生が飛び跳ねるアクションでフロアを盛り上げるも、あまりのジャンプっぷりに「そんな跳びますか?」とおーたけがぽつりこぼす場面も。
続く「日記」での、大山拓哉(Dr)と竜生によるグルーヴ感たっぷりなリズムと、おーたけがつま弾く軽やかなギターサウンドのコンビネーションに酔いしれ、「ごみ屋敷」では前半、曲の世界に集中するかのように目を閉じて歌うおーたけから目が離せなくなる。
曲と曲の合間にはこんなメンバー紹介が。
「お面の鍵盤、かくれみの」
「メガネ髭の鍵盤、竜生」
「真ん中分け、大山」
「メガネ金髪ギター、おーたけ@じぇーむずです」
MCでは、今日のリリース記念イベント開催について「我々の初めての全国流通盤『ルーズ』が発売されるのです。今日はフラゲ日なので、いっぱい持ってきました」と話すと、AKB48の「フライングゲット」のポーズをするおーたけ&かくれみの。“一寸先闇バンド”と名乗りながら、こんなキュートな一面も持ち合わせている。
竜生がおーたけ@じぇーむず画伯によるジャケデザインにも言及するなど、様々な角度から新譜をPRするメンバーたち。
ギターボーカルがMCをする際、雰囲気作り(と言っていいだろうか)としてコードを鳴らしながら喋る場面をよく見かける。しかしおーたけの場合は少し違っていて、シンプルにコードを鳴らすのではなく、単体の演奏として聴いてもレベルの高いギターを披露しながらトークを放っている。脳から口、そして指先とすべてが一体化しているかのようだ。
新譜「ルーズ」についての告知メインとなったMCからの流れで、ここから3曲は「ルーズ」収録曲を一挙にパフォーマンス。
音の出し入れによる表現が印象的な表題曲「ルーズ」は
《めんどくせえだなんて言うなよ
目を逸らしたって無くなりはしない》
という歌詞が刺さる。
「意外と静かな街」では赤い照明がステージに広がり、歌も演奏もどこか攻撃的で、タイトルから連想されるサウンドとのギャップも面白い。
「ここがどこかになっていく」では先ほどのギラついた照明から暗転すると、おーたけのギターから曲スタート。次にかくれみののピアノと大山のドラムが加わり、最後は全員揃っての演奏へと繋がる展開が楽しい。曲自体はミニマルで、「意外と静かな街」からの高低差がスゴイ。
最後のMCブロックでおーたけは「みなさんが『こういう曲なのね』と身体を揺らしてくれてるのがめちゃくちゃ嬉しくて、一寸先闇バンドじゃなくて未来明るいバンドだなって思いました」と喜びを露わにする。
そして「今、盤作ったって…みたいなことをめっちゃいろんな人が言ってるんですけど、盤を作ってそこに足を運ぶワクワクドキドキってあるじゃないですか。そういうのを少しでも共有できたらいいなと思って今回のリリースになりました」と、デジタルリリースが当たり前になりつつある今、CDを作って発売することの意図を語った。
また、それぞれの曲について、こんなシチュエーションで聴いてほしいというトークでは、「意外と静かな街」について「イライラがMAXのとき、ぶつかりどころがないときに聴いてほしい」と話すおーたけ。「…そんな曲?」なんて言葉も出たが、曲調的には納得の、エネルギーを感じるナンバーだ。
「私は、『ここがどこかになっていく』聴きながら酒飲んで泣きたい」と話すかくれみののキャラクターも面白く、開演前に物販で披露していたセールストーク含めて個性溢れる存在感が光っていた。
次の曲がラスト、ということで、かくれみのと竜生がお互いの楽器を入れ替えスタンバイすると「我々の活動もみなさんの生活もステップバイステップなので、最後は『身の丈』という曲で終わりにしたいと思います」というおーたけの曲紹介と共に「身の丈」を演奏。
《FU FU FU FU HA》と繰り返されるフレーズが頭に残る一曲。優しく歌われるおーたけの声の後ろで、楽器チェンジしたかくれみのによるシンセベースがよりメロディアスに躍動し、不思議な魅力を醸し出していた。
本編が終わりステージを去った後、想定外となるアンコールで再び戻ってきたメンバーは、おーたけがさらりと弾いた音でこれから演奏する2曲を確認。言葉でなく音でコミュニケーションする、ザ・ミュージシャンな一面を見せる一寸先闇バンド。
小さなミラーボールによるささやかな光りが舞うなか、「一寸先闇」と「テキーラ」という“暗と明”両極端なナンバーでアンコールを盛り上げ、リリース記念イベントは終幕となった。
おーたけの、ギターだけでなくボーカルとしての、強弱・硬軟の引き出しが多い表現力にグッと引き込まれてしまう時間でもあり、アンコール2曲の組み合わせがいい例だが、あちこちに「ギャップ」が見え隠れする、刺激に満ちたライブだったように思う。
バンド初となる全国流通盤のリリースを祝いつつ、これからのますますの活躍を期待したい。高円寺から日本全国へ羽ばたく彼女たちをこれからも追いかけていきたいと思う。
セットリスト
01.あそぼう
02.知らんがな
03.日記
04.ごみ屋敷
05.ルーズ
06.意外と静かな街
07.ここがどこかになっていく
08.身の丈
EN.
09.一寸先闇
10.テキーラ