【ライブレポート】2024/11/23『Parking Out 25th Anniversary One Man Show』
出演
◆Parking Out
◆ACID HEAD SOME RISE
個人的にいろいろお世話になっていた祥太さん率いるParking Outの25周年ライブを観に、吉祥寺CRESCENDOへ行ってきた。
初めて訪れるハコは、そこにちゃんとたどり着けるのか、から始まって、階段下りたり、ドアを開けたり、バーカンの場所を確認したりと、ひとつひとつのアクションにドキドキしてしまう。
年齢層高めなファンと、その子供たちで埋め尽くされた会場に、25周年という時の経過を感じずにはいられない。同窓会か、はたまた親戚の集まりか、というくらい和気あいあい、あちこちで挨拶が交わされていた。
ライブは、まずParking Outが演奏し、続いてACID HEAD SOME RISE、そして3番手としてParking Outが再登場するサンドイッチスタイル。
私は音楽プロデューサー・川原祥太さんと出会い、いろいろとお世話になったのだが、バンドマン・SHO-TAとは初めまして。つまりParking Outのライブは初体験だ。だから、楽曲について細かいことを言えるような立場でもない。
難しいことは置いておいて、ここは素直に、観て感じたことをテキストに残しておこうと思う。
コロナ前よりもややスケールアップしたボディをフルに動かしながら、時にステージでジャンプしながら歌い、ギターを弾くSHO-TA。48歳、常にライブをしているわけではない、そんな状態ながら、ハツラツとした動きに思わず興奮。
ライブ前から、喉が続くのか心配していたようだが、MCの時間をうまく使い、また他のメンバーに話を振るなどして適宜、喉を休めながら最後まで歌いきっていたのは見事だ。
今回のライブは、メンバーチェンジが多かったバンドの歴史を振り返るように、数曲、あるいは1曲ごとに演者を入れ替えてのパフォーマンスとなっていた。新たにステージに登場するメンバーとの、ここでしか言えないようなエピソードなどを入れ込んで、懐かしい思い出話にステージ、そしてフロアからも笑い声が絶えない。
ライブ直前に飛んでしまったメンバーと、半ば絶縁のような状況になりながら、久々に再会したら「めっちゃいいヤツだった」と、あの頃とはまた違う関係を築くふたり。後輩ドラマーからは「あんなにドラムに注文の多いヴォーカルは初めてでした笑」と今だから言える話も飛び出しつつ、そのおかげで勉強になったとSHO-TAへ感謝の言葉も。
炊飯器を持ち込んでツアーをしていた貧乏時代、洗剤が残ったままの皿にカレーをよそってしまい「今日何食べればいいんですか!」とメンバーが激怒した事件や、打ち上げ中、バンドの金庫を持って失踪したメンバーを必死で探したら、どこぞの社用車内で爆睡していたという事件など、波乱万丈な出来事の数々に、あらためてバンドって、バンドマンって面白いな…と感心しきり。
一つひとつ演奏される楽曲や、代わるがわるステージに上がるメンバーのパフォーマンスを浴び、そんな彼らが披露するたくさんのエピソードに驚き、そして笑うという行為は、Parking Out初心者の私にとって、落書きだらけの「Parking Out教科書」を1ページずつめくっていくような感覚。
こうやってParking Outは、SHO-TAはライブシーンを生きてきたんだなあと、感慨深い思いでいっぱいになった。
対バンのACID HEAD SOME RISEはラップを駆使するミクスチャーバンド。ゲストにACEを呼び込んでのパフォーマンスなど、激しいライブに会場はめちゃくちゃ盛り上がっていた。最前には十代らしい若い観客の姿も。
彼らがMCで言っていた「場違いな人は(ここには)いない」という言葉がめちゃくちゃ刺さったし、メインのParking Outすらライブを観たことがない、もちろんACID HEAD SOME RISEも今日初めて触れる、という私にはとんでもなくありがたいメッセージだった。もうそれだけで好きになってしまいそう。
冒頭でも触れた、親戚の集まりのような会場にひとり部外者が紛れ込んでいる、みたいな感覚が少なからずあったのだが、この言葉以降は、何も気にせず、より純粋にライブを楽しめたような気がする。
Parking Outのアンコールでひとつのサプライズが。今回の企画を行うにあたり、かつてのメンバーたちも日本各地に散らばっていてなかなか直接会って音を合わせることができなかったという。そんな中で、共に音を鳴らしてリハのサポートをしてくれた、ドラムの山中綾華をステージに呼び込み、1曲演奏。
観客だけでなく、綾華に対してもサプライズということで本人もびっくりしたと思うが、見事なアンサンブルでフロアを魅了。音の違いなどたいして分からない私のような素人でも、「あ、なんかすげえカッコいいぞ」と思わせてしまうほどのインパクトだった。そして、そんな綾華を労い、可愛がるたくさんの先輩バンドマンたちという構図が最高。
SNSでは「これで最後」という言葉を発していたSHO-TA。しかしライブの最後には「またやるわ!」と“最後”発言を撤回。それほどまでに楽しく、充実感のあるステージだったのだろう。ライブ中ずっと笑顔だったことが、それを証明している。
25年続けていたわけじゃないから25周年というのもおこがましい、と話していたが、フロアの空気は完全に現役バンドのそれだった。ステージから発せられる音や感情をまっすぐ受けとめて熱く激しくリアクションする。そんな観客に呼応してさらに気持ちのこもったライブをするバンドマン。これこそがライブだ。
ライブハウスの外はすでに冬の装い、冷たい風が吹いていたが、いいライブを観た後特有の興奮が寒さを蹴飛ばしてくれて、駅までの道のりはあっという間だった。
Parking Out、25周年おめでとう。25年でたった1本しかライブを観ていないことになるが、私にとってはとても大事な時間になったと思う。なんたって、初めてバンドマン・SHO-TAを観ることができたのだから。