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【ライブレポート】2025/1/18 LACCO TOWER 冬ノ三部作 公開記念公演『独想演奏会 ~深雪~』@日本橋三井ホール
LACCO TOWERが、冬ノ三部作「君」「悪魔」「深雪」をデジタルリリース。これに伴うワンマンツアーとして開催した冬ノ三部作 公開記念公演『独想演奏会』のツアーファイナルに行ってきた。
すでに「君」を冠したライブを11月9日に高崎芸術劇場スタジオシアター、「悪魔」がタイトルに入ったライブを12月1日に心斎橋Music Club JANUSで開催しており、今回のファイナルは三部作の残り1曲「深雪」の名のもとに行われた。
会場となるのは、ケイスケいわく「江戸のど真ん中」にある日本橋三井ホールだ。都内でのホール公演は、コロナ禍に予定していたヒューリックホール公演が中止となってしまったこともあり、かなり久しぶりということになる。(2018年9月に昭和女子大学人見記念講堂で開催のホールツアー『五人囃子の新時代』以来?)
日本橋三井ホールはKOREDO室町1内にあり、エスカレーターでショッピングフロアやレストランフロアを横目に見ながら到着。空間としての広がりを感じつつもステージとの距離は遠く感じない、ちょうどよい規模感だ。
ホール公演では珍しいドリンク交換もあり、各自好きなソフトドリンクやアルコール飲料を選んでいる。また物販では好きなグッズを購入したりガチャを回したりと、それぞれが準備を整えながら、開演までの時間を過ごしていた。
やがて当初の予定を少し過ぎたところで場内が暗転し、いよいよライブが始まる。お馴染みの登場SE「狂想序曲」に乗せて、重田雅俊(Dr)や細川大介(Gt)、真一ジェット(Ke)、塩﨑啓示(Ba)、そして最後に松川ケイスケ(Vo)が登場。
オープニングを飾ったのは「線香花火」だ。始まりにふさわしい疾走感のあるナンバーで、さらに終盤には転調も入れて曲、そしてこのライブそのものの勢いを加速させる。
曲を終えるとまずはケイスケからの挨拶。三部作ツアーが無事完走することへの感謝と併せて、今日のライブを大成功させるべく、観客とコミュニケーションを取る。
「『深雪』、深い雪と書きます。どうせならみんなで深い深いところで楽しみたいなと思っておるわけですが、楽しむ準備はできてらっしゃいますか?」
「みんなが楽しむのは当たり前、みんなを楽しませるのは当たり前、でもどうせなら俺らも楽しませてくれ!」
「LACCO TOWER参ります!どうぞよろしく!」
曲と言葉でしっかりと会場を温めたところで、2曲目に「檸檬」を投入。歌謡テイストの楽曲にキーボードのキラキラした音色が華やかさを加え、これぞLACCO TOWERな世界が広がっていく。早くも真一は椅子の上に立ち上がって観客を煽れば、手を上げたり手拍子をしたりと、フロアもしっかりと応えて、今日のライブは無事、助走を終えて離陸した…そんな感覚。
3曲目は、ピンスポットを浴びた真一のパフォーマンスから始まる「無有病」。LACCO TOWERのライブの見どころはたくさんあるのだが、演者以外の部分で特に素晴らしいと感じるのは、鮮やかな照明演出だ。色とりどりの光を自在に駆使して、ステージさらには会場を彩る。時に優しく、時に激しく、曲のイメージを投影した光のパフォーマンスに圧倒される。
決して大掛かりなセットがあるわけではない。骨太なロックバンドらしく、ステージには演奏のための機材があるだけ。それでもこの照明によって、(すでにメンバーに備わっている)華やかさが、さらに増していくのだ。
曲が終わると、今度は重田のドラムソロが披露される。逞しい身体から放たれるズシリと重く、それでいて軽やかでもあるドラミング。そのまま4曲目「罪」のリズムでドラムを叩きながら、本編へと突入する。
《一廻り二廻り まだまだ分からない》と歌うパートのメロディが個人的にたまらなく好きな一曲だ。
続く「葡萄」では、冒頭でブルース感たっぷりの重厚な大介のギターが唸りを上げ、これに重なるようにケイスケが絶唱。ふたりが牽引するかたちで曲が始まり、これに他のメンバーたちが続いて、一気に駆け抜けていく。気付けば、ケイスケはジャケットを脱いで黒シャツ姿になっていた。
目まぐるしい運指で細かい音を刻む大介のギターソロも炸裂。まだまだライブの熱は頂点にあらず、ここからさらにパワーアップ。
繊細なシンセの音が鳴り、悲し気なコーラスと共に始まった「悪魔」。ひとつの曲の中でいくつものリズムが織り込まれ、構成力豊かな楽曲となっており、聴きごたえが半端ない。そんな中で、真一のサウンドがひとつの軸のような存在として響き続けているのもまた印象的だった。
また、アウトロでは照明が楽器隊一人ひとり順番に光を当てていくという粋な演出も。
7曲目「若者」は、ポツン、ポツンとゆっくり、そして寂し気に奏でられるキーボードの余韻を残しながら、その音色がカラフルさを帯びたものに変わり、壮大なギターサウンドへと引き継がれるドラマチックなオープニングに惹きつけられた。だが、竜頭蛇尾では終わらないのがLACCO TOWER。スケール感溢れるケイスケの歌唱も、冒頭の劇的展開に負けず素晴らしいパフォーマンスであり、結局「誰が」ではなく、バンドそのものに魅了されてしまう。
「悪魔」「若者」に続いて「歩調」もまた、感情が滲む真一の巧みな演奏がその幕開けを担う。いわば、今日のライブにおける「真一オープニング三連作」。ホールという空間に映える、広がりを持つ楽曲であり、またそのポテンシャルをいかんなく発揮するのが、LACCO TOWERの優れた演奏家たち。
ラスト、ケイスケのロングトーンも圧巻だった。
つかの間の沈黙を経て、重田がバスドラとハイハットでリズムを生みながら「今日は今日しか!」と叫べば、フロアからは「ねえからな!」とお約束のコール&レスポンス。さらにケイスケが「楽しんでますか」とメンバーや観客に問いかけ、「楽しいところに行きたいと言いつつバラードを3つやってしまった私ですが笑」と“真一オープニング三連作”を自らイジる。そして次の曲への準備として、《何重にも 何枚も》のコール&レスポンスを観客と一緒に練習。
大きく分けて縦3列になっている全席指定の会場、その一列ずつでコール&レスポンスの練習を行い、最後はあらためて全員でトライ。こうしてバラード3連発でしっとりした空気をがらりと変えて、9曲目「鼓動」へ。
綺麗なイントロの中で、一気にギアチェンジしてリズムに勢いを生む啓示のベースがたまらない。LACCO TOWERではお馴染みでもある、啓示と大介が立ち位置を交代しての演奏もあり、ライブをより立体的に見せるステージングだ。
曲終盤、ベースに機材トラブルが発生したのか、スタッフも駆けつけてなにやら不穏な空気も。啓示離脱中、当初の予定から少しアウトロを引き延ばし(たようにも思える瞬間もあり)、啓示の復帰に合わせて次曲「雨後晴」がスタート。こちらの見間違い、勘違いかもしれないが、もし本当に機材トラブルからのアドリブだったとしたら、ピンチを即興アクトでリカバリーしてバンドの底力を見せつける、まさに曲タイトルが示すような展開だ。
雨上がり、すっかり晴れわたった三井ホール、今度はリズム隊のふたりによる晴れ舞台が登場する。他のメンバーはステージから去り、啓示がひとり照明を浴びながらステージ中央に腰かけてベースソロを披露。その後ろ、暗闇の中で重田がスタンバイし、やがて啓示と合流。ベースとドラムだけのパフォーマンスに、会場からは拍手喝さいが送られた。ドラムが加わり俄然盛り上がる啓示は、ステージをダッシュし大きくジャンプ。無事にやり終えたふたりのグータッチに胸が熱くなり、他のメンバーも再登場して、11曲目「純情狂騒曲」へ。
バラード連発からのアップテンポなロックナンバー、という直前ブロックでのセットリスト構成にも似た、ABメロでのポップで遊び心のあるメロディ&アレンジからの、サビで怒涛のロックサウンドという、予定調和など微塵も感じさせない楽曲。音源でもじゅうぶん楽しいが、やはりライブで浴びるとこの構成の妙がより伝わってくる感じがする。
「日本橋、中盤戦よろしくね!」というケイスケの言葉から、現時点でサブスク未配信の曲「摩擦」へ。赤と青の照明を浴びながら演奏する大介のギターがとにかく強烈だ。ブルースロックや、彼らが所属するTRIADの偉大な先輩・THEE MICHELLE GUN ELEPHANTを彷彿とさせつつ、しっかり大介味も表現されたギターサウンドが会場を支配する。冒頭、そして間奏でのソロプレイをはじめ、どの瞬間も圧倒的だった。
攻撃的な曲が続いたが、ここでまた空気が一変。本ライブのタイトルにもなっている冬ノ三部作の一曲「深雪」が披露される。真一による切ない音色のキーボードプレイ。その途中で、会場に吊るされたミラーボールから白い光が反射して、会場に舞う。1曲通して全部ではなく、1サビや間奏、そしてラスサビからアウトロまでと、ここぞというタイミングで回るミラーボールとその光に、目を奪われた。
美しい日本語と歌声、演奏、そして演出。私自身、初めて生で触れた「深雪」は、きっとこの先、この光の演出と合わせて、美しい記憶として残っていくだろう。
真一のキーボードを中心に長く、ドラマチックに展開するプロローグを経て、ケイスケが「後半戦もどうぞよろしく」と言葉を添えると14曲目「柘榴」を投下。直前曲との落差、ギャップ、緩急、出し入れ。いろいろ表現はあるが、とにかくジェットコースターのように目まぐるしく進む今日のライブに、もう残り数曲だというのにまだワクワクが止まらない。
ライブもいよいよクライマックスへ。「楽しい時間はあっという間に過ぎるもんで」「本日ナンバーワン、いや今年ナンバーワンの大きい声で“oioioi”いただいてよろしいですか!」というケイスケの煽りから「火花」へとなだれ込む。各楽器隊も鬼気迫る演奏で、まさに火花散るようなステージだ。
大介はセンターお立ち台に立ち、タッピングでレフティギターを操る。そう、ここまで触れてはこなかったが、大介は本編ずっとレフティギターで演奏していた。多くのファンがご存知の通り、彼はジストニアのため、ギターを手にしたその日からずっとやってきた右利きでの演奏から、左利き用の演奏に切り替えたのだ。そのニュースは、発表当時大きな驚きと称賛でもって迎えられたが、有言実行でとうとうこのレベルまで到達。しかしまだレフティ転向からは数年。伸びしろたっぷり、末恐ろしいギタリストになるに違いない…!
そして本編ラストを控え、ケイスケは語った。東京のホール公演はLACCO TOWERにとって「呪われた公演」だと言う。それは、かつてケイスケ、そして大介の名を冠したヒューリックホール公演を予定していたものの、諸事情で2本とも開催できていないから。そんな経緯があるため、「久しぶりの東京ホール公演、光栄です」とケイスケ。
さらに、今日集まった観客に対して、皆それぞれ事情を抱えているはず、と話す。それはたとえば、このライブの後に仕事がある、明日会いたくない人に会わなくてはいけない、あるいは育児や家事、仕事の準備が待っている…など。
いろんな事情をもつ皆が今日ここを選んでくれたことに対して「すごいことだ」と言い、だからこそ「思いきり笑って帰ってもらいたい。そう思って死ぬほど歌いました」と続ける。
そのうえで、「ひとつだけ気がかりがある。言いたいこともひとつ」と話すと、「今日は楽しかったですか?」と観客に問いかけた。会場からは「楽しかった!」の声が響き渡る。
「君が笑っている瞬間。いろんなことがあるだろうけど、できればLACCO TOWERはそばで見ておきたいと、そう思ってます」
最後にケイスケはそう告げると、ラストナンバーであり、冬ノ三部作最後のピース「君」を披露した。
《たとえば君が幸せであっても》
《その隣には誰がいるかが全てで》
そんな歌詞が、ケイスケのMCと重なって、まるでLACCO TOWERから「君=ファン」へ向けたラブソングのようにも聞こえてきた。
「今日はどうもありがとう、最高でした」の言葉を残し、ケイスケはアウトロが演奏される中、両手を上げてステージを去っていく。
まさに大余韻を生む締めくくり。
少しの間、この空気に酔う観客たちだったが、すぐに「ラッコ!ラッコ!ラッコ!ラッコ!(ラッコ!)」というLACCO TOWERオリジナルなアンコールが沸き起こり、メンバー再登場。
本編でのフォーマルな衣装からラフなTシャツ姿に変わり、ステージの空気もナチュラルなものに切り替わる。まずは、アンコール(ラッココール)を言ってくれたファンへ感謝の言葉と拍手を送ると、次の曲に備えて、声出しの練習を行った。
会場が一体となり「ランララランラララ~♪」というシンガロングを繰り返したのち、「綾」をパフォーマンス。柔らかい曲調とも相まって、どこか優しい演奏が鳴り響く。先ほどのシンガロングもしっかりとコーラスに組み込まれ、全員がライブに参加している、そんな空気を作り出していた。
最後の曲を演奏する前に、ケイスケいわく「僕の愉快な仲間たち」なメンバー紹介を兼ねて、ひとりずつコメントタイム。以下、ざっとまとめ。
■啓示
今年で23年目ですが、年をまたぐツアーはあまりやっていなくて。去年11月からやって、新しい年にファイナルを迎えるということは、また始まるんだなという気持ち。
やっぱりLACCO TOWER信じてきてよかったなと、あらためて思えた一日でした。
■重田
今日は今日しか!(観客:ねえからな!)
進化していくLACCO TOWERを今年も見せます。ついて来いよ!
サンキューロックユー!
■大介
何かを言うのは蛇足なくらい楽しい一日。今日でツアーはおしまいですけど、終わる頃には今より笑顔になって帰ってくれる、そんな思いを最後の曲に込めて〆の挨拶とさせていただきます。
(ケイスケ:誰か結婚すんの?)
ホントに皆さん、おめでとう!
また一年よろしくお願いします!
そして、ケイスケが「以上のメンバーで…」とメンバーコメントを切り上げようとすると「おーーーーーーーーーーーい!」と真一がツッコミを入れる定番の流れ。ちなみに今回、ここからの真一の喋りを跳ねのけるかのように、しばらくケイスケも挨拶を続行。ふたりの喋りが重なるカオスが生まれていた。
■真一
(テキストにするのが難しい、ひとり漫談?のようなトークが続くが、ようやくケイスケも挨拶を止めて真一の喋りを受け入れる…)
3、2、真一!サンキュージェッツ!
ふくらは~ぎ~ふくらは~ぎ~ふくらは~ぎ~真一ジェッツ!
(ケイスケ:しばくぞ)(重田:ふざけすぎだな)
今日ツアーファイナルですけど、新年1月のホールってことで、終わりの感じがしないですね。今年もよろしくお願いいたします。
サンキュージェッツ!
■ケイスケ
全員が笑って帰れる場所にしたい。
いろいろ大変だと思うけど、この2時間だけ、それを忘れて楽しんでくれたのかなと思うと、LACCO TOWERでいれて最高だなと、あらためてみんなに思わせてもらいました。
真一コメントで会場を爆笑させながら、直後のケイスケのメッセージで空気を王道に戻す、その切り替えがすごい…!
そんなメンバーコメントを経て、最後の一曲は「薄紅」。観客に向けて、一緒に歌ってほしいと告げると、
《二人を塞ぐ花びらの雨》
《ひらり鳴り響く音(メロディー)》
《せめてあなたが隠れるくらい》
《薄紅染まれ染まれ》
の歌詞をメンバーたちによるユニゾン、さらに観客も一緒になって歌い、「薄紅」の演奏がスタート。曲中でも《染まれ染まれ》を観客が歌うなど、今日ステージとフロアで共にライブを作り上げてきた、その集大成のような時間でもあった。
また、MCで何度も触れてきた「皆に楽しんでほしい」「笑顔になってほしい」という思いを込めたかのように、本来の
《せめて二人が消えちゃうくらい》
という歌詞パートを
《せめてみんなが笑えるくらい》
と変えて歌うケイスケ。
さらに本編全曲、レフティとしてギターを弾いてきた大介は、「薄紅」で右利きのギタープレイを披露。右がダメなら左で、という柔軟さに加えて、まだ右もやれる、という強さをも表現する熱いパフォーマンスだった。
最後に重田は「サンキューロックユー!」と絶叫し、スティック放り投げると手でドラムを叩いて曲を終わらせる。そして「愛してるぜ!!」というケイスケの叫びと共に、冬ノ三部作 公開記念公演『独想演奏会 ~深雪~』は幕を閉じた。
終演後に出現したスクリーンに、北は北海道から南は九州までを回るという全国ツアー『再逢旅行』、そしてインディーズ最後のリリースとなったアルバム『狂想演奏家』を引っ提げてのリバイバルツアー『再燃~再燃に踊る狂想演奏家』の開催、さらには4年ぶりとなるフルアルバムリリースの発表という、なんとも嬉しい情報過多な解禁に会場は大興奮。
まさにツアーファイナルでありながらも新しい始まりとなった今日、1月18日の日本橋三井ホール。ライブの余韻と、ツアーやアルバムへの期待で胸いっぱいになったであろうファンたちが浮かべる笑顔は、まぎれもなくLACCO TOWERが生み出したものだ。
リリース、ツアー2本、そしてもちろんI ROCKSとイベント目白押しな2025年のLACCO TOWERを、今年もたくさん楽しみたいと思う。
セットリスト
1.線香花火
2.檸檬
3.無有病
4.罪
5.葡萄
6.悪魔
7.若者
8.歩調
9.鼓動
10.雨後晴
11.純情狂騒曲
12.摩擦
13.深雪
14.柘榴
15.火花
16.君
EN.
17.綾
18.薄紅