【ライブレポート】2023/1/24 東放学園音響専門学校 主催『Live Forever'23』@新宿MARZ
音楽の専門学校が主催するイベントに行ってきた。会場は新宿MARZ。受付のスタッフもおそらくは学生さんたちで、ハツラツとしていて初々しさも感じる。
10年ぶりという極寒の夜に、歌舞伎町の奥で繰り広げられた洋楽の血が感じられるライブを手短に振り返る。
THEティバ
David Wingo「James' Life」を登場SEに、THEティバの明智マヤ(Vo/Gt)とサチ(Dr)がステージに。
ロックバンドにも様々な形態があるが、やはりギターボーカルとドラムのふたりという組み合わせにはドキドキさせられる。日本のロック育ちな自分にとっては、初期ストレイテナーや後期チャットモンチーが連想される、この形態。
女性ふたり組、という点ではilliomoteやHwylなども思い浮かぶ。
「THEティバで~す。よろしくお願いしま~す」とやや気だるい明智の挨拶から、「ideals」でライブスタート。4ピースより3ピース、3ピースより2ピース。ひとりのミュージシャンが背負う責任も大きく、またそれぞれが鳴らす音も、ステージ上の人数が少ないほどよりハッキリ伝わる。
ギターとドラム、そして明智のメインボーカルにサチのコーラス。最大4タイプの音がMARZを包み込んでいく。ライブハウスだというのに、まるで霧がかかった森の中にいるかのような独特の空気でTHEティバの世界へと引き込む、ふたりのステージ。
代表曲のひとつと言っていいだろうか。「I want nothing to do anymore」も披露し、熱量を上げていく。
サチはスティックを変えるなどして、ドラムの音をより豊かに表現する。また、素人な自分の耳にはいつもスネアとバスドラが主張してくるのだが、サチのドラムはタムの音も魅力的に響いてきた。個々のパーツがその役割を果たし、楽曲に迫力とスケール感をもたらしている。
MCはなく、発する言葉といえば、曲が終わる際に明智マヤが言う「Thank you」くらいだ。ストイックに音を鳴らし続けるふたり。
「Dear My Dependence」では、サチがスレイベル(?)のような鈴が束になった楽器を取りだし、クリスマスソングのあの味わいを演出。同時にバスドラとハイハット、3つの音で曲の序盤を作り出していた。
前回、彼女たちを見たのは2年ほど前の新代田FEVERでのライブ。あの頃と正確に比べることもできないが、印象としてはドラムがよりパワフルかつタイトになっているような気がした。明智は、当時もそうだったが堂々とした立ち居振る舞いに磨きがかかっているように思う。
言葉は交わさずとも、音を聴け、歌を味わえ、ふたりのグルーヴを感じろ、とばかりのストロングスタイルなライブは、「Go back our home」で幕を閉じる。
ライブハウスはもちろん、フジロックやサマソニの舞台も似合う、そんなTHEティバのステージだった。
Jam Fuzz Kid
続いて登場するのは、我らがJam Fuzz Kidだ。個人的には今年初のJam Fuzz Kidということで俄然、テンションが上がる。
Oasisの「The Shock Of The Lightning(The Jagz Kooner Remix)」で颯爽と現れるメンバー。ひとり遅れてRiki Imamura(Vo)が合流し、「Sunshine Highway」でライブが始まった。
Jam Fuzz Kidには、ロックバンドとしてのカッコよさが詰まっているように思う。派手なアクションを繰り出しながら歌う、華のあるボーカル・Riki。どちらもリードギターやソロで聴かせる&魅せるふたりのギタリスト、アサイリュウとヤマザキタイキ。
一歩下がって控えめなようでいて、その音はグルーヴ感たっぷりで時にはギターよりも耳が吸い込まれてしまう、ベースのJohn S.Kobatake。
ひと癖もふた癖もあるメンバーの音を支えつつ、おかずも放り込んでドラムの楽しさも表現するオオコシタクミ。
最強の5人が繰り出すロックミュージックについつい心躍ってしまうのだ。彼らが作るほぼ全曲に、キラーフレーズともいえるギターリフが組み込まれており、このリフを聴くだけでワクワクする。
Rikiは明智と好対照で、ライブ中とにかく言葉を駆使して思いを伝えるタイプだ。学生主催イベントということもあり、「イベント開催おめでとうございます! めっちゃ天気悪い中、来てくれてありがとうございます!」と主催から観客まで、全方位に言葉を届ける。
「601」を演奏する際には「自由に体揺らしていこうぜ!」とRikiが声をかける。THEティバとは真逆のようなスタイルにまだ遠慮がちなフロアを煽れば、ひとりふたりとどんどん拳が上がっていく。
MCでは、今日のイベントについて触れるRiki。「今日は海外のサウンドの影響を受けたバンドをみんなに伝えたいというイベントらしいんですけど、ホントにいいイベントだと思っていて」と語り、小さい頃にビートルズを聴いて「カッコいい」と思った、そんな海外アーティストとの接点が生まれるきっかけになるようなイベントが、もっと日本で起きたらいいと話す。
さらに「2023年は、シーンというよりはムーブメントとして(この流れを)起こしていきたいと思ってるんで」と力強いメッセージを放った。
後半戦は「Consequences」「KABUKI」とライブ鉄板曲でますます盛り上がるフロア。ライブ撮影するカメラマンも、カメラを構えていない瞬間は頭を上下に動かしリズムを楽しんでしまうほど。
「音楽最高じゃないっすか!?」とのRikiの言葉に続いて「Tyler」へ。サビの爆発力につられて自然と拳を突き上げてしまう。
次の曲のイントロ、ガッガッガッガッとゆっくり刻まれるギターの音に、目の前にいたスーツの観客が全身で喜びを表現している姿が飛び込んできたが、自分もまったく同じ気持ちだった。
少なくともふたりの観客のテンションを上げたそのイントロは「Pluto」のもの。スケール感たっぷりなこの曲は“ライブ鉄板”というよりも、この先も長くJam Fuzz Kidのアンセムとなりうる曲ではないかと思えるほどに、気持ちがよく、開放感にも溢れている。
同曲からラストの「Shimmer」へと続く構成も、クライマックスに到達してエンディングを迎えるという最高の流れを作っていた。
一歩ずつ歩みを進めて、爆発の時を虎視眈々と狙うJam Fuzz Kidの2023年に、めちゃくちゃ期待したい。
セットリスト
01.Sunshine Highway
02.Tumbleweed
03.anomie
04.601
05.Consequences
06.KABUKI
07.Tyler
08.Pluto
09.Shimmer