【ライブレポート】2023/05/26 Hwyl ASAGU Release Event @下北沢MOSAiC
Hwylの1st EP『ASAGU』レコ発イベントに行ってきた。2022年6月開催の『IMALAB NEWCOMER PLAYLIST LIVE #02』で初めて彼女たちのライブを観て以来、何度も足を運んできたが、Hwyl第1章の集大成のような感覚。
ここからまた何かが始まる予感…!という自分の感覚が間違っていなかったことを、イベント終盤で知ることになるのだがそれはまたあとで。
ソールドアウトとなった盛況なライブを簡単に振り返ってみる。
35.7
初見。高校軽音部出身の4ピースロックバンド。The 1975「Sincerity Is Scary」をSEに登場するメンバーたち。タカハシ(Vo/Gt)、かみのはら(Gt)という女性ふたりのギタボ&ギタリスト編成はHwylと共通だ。音楽性もHwylと相性良さそうなギターロック。
メンバーそれぞれに笑顔を浮かべながらのプレイが気持ちよく、こな(Dr)とさくや(Ba)によるリズム隊もしっかりと楽曲の屋台骨を支えている。
タカハシの歌声は、小さい粒子の集合のような細やかさがあり、「しあわせ」の冒頭から引き込まれてしまった。それでいてサビではグンと強度を増したたくましいボーカルを聴かせてくれる。
「祝日天国」では、タカハシの「歌えますか?」の煽りを受けてフロアから《僕の好きな君を》のシンガロングが飛び出す場面も。主催はHwylながら、35.7のライブも前のめりで楽しむ観客たちが、トッパーからガツンとレコ発イベントを盛り上げていく。
MCでは、「さっき、上(1Fロビー)で男の子が『37.5』って言ってました。…言ってくれたな!!」とタカハシの怒気をはらんだ声が響き、場内からは笑い声も。
また、さくやが、下北沢MOSAiCではドリンクにオリジナルネームが付けられることに触れ、35.7のオリジナルカクテルとして「さくじる」と名付けたことを告げるも、どうやら注文した人はゼロ人。
メンバーも苦笑する展開となったが、この暗雲を吹き飛ばすかのように、疾走感溢れるイントロの「ハイウェイ」で後半戦へ。「さくじる」トークが、ピンクレモネードやアルコールといったドリンクを連想させるワードが散りばめられた「ハイウェイ」の前フリMCとしても機能していたとは驚きだ。
タカハシの強く細やかな歌声、そしてかみのはらの爽やかな笑顔が添えられたギタープレイが印象的だった35.7。歓声や拳も上がるなど、ステージもフロアも、共に盛り上がる素晴らしいライブだった。
peanut butters
コンポーザー・ニシハラとサポートボーカル・穂ノ佳を中心に、各楽器パートにもサポートを迎えての編成となったpeanut butters。2022年に渋谷WWW(当時のサポートボーカルは紺野メイ)、そして2023年2月の新代田と過去2回、ライブを観賞。
独特なポップチューンが癖になる個性たっぷりのプロジェクトだ。ニシハラと穂ノ佳のふたりがメインの編成という意味では、こちらもまたHwylとの共通性あり。
前回、新代田で下ろした(?)新曲「悪魔くん」からライブスタート。特徴的な言葉のチョイスや使い方、そして一度聴いたら忘れないキャッチーなメロディとで頭から観客の耳とハートをがっちりキャッチ。
勢いを望まれるトッパー、そして主催であるトリに挟まれて実はいちばん難しいのでは、と思うスリーマンの2番手出演ながら、あっという間にじぶんたちの空気にしてしまう。
その後もスピード感のある「ツナマヨネーズ(band ver.)」やタイトルからは想像できない深い歌詞に惹かれる「スーパーハイパー忍者手裏剣」でさらにpeanut buttersの超絶ポップワールドが広がる。
ニシハラの「お呼びいただきありがとうございます。(Hwylの)リリースもおめでとうございます」という短い挨拶を挟むと、新曲「Girl Is Hard Rocker」を投入。4月末にEPをリリースしたばかりだというのに、早くも未音源化の新曲をもってくるとは。
ハードロックなギターと穂ノ佳のキュートなボーカルが絶妙な化学反応を起こし、これもまた癖があって何度も聴きたくなる一曲だ。
また、サポートドラムによる力強いドラミングが、可愛らしい楽曲たちにライブ映えするような説得力をもたらしていたように思う。
peanut buttersはポップを軸にしつつ、曲にバリエーションがあり、様々な表情を見せてくれる。曲によって手を上げたり手拍子したりと、ファンも流れを把握したり、あるいは読んだりしてフロア全体で一体感を生み出し、Hwylのレコ発イベントに立派な華を添えてくれた。
Hwyl
本日のトリを務めるのは、もちろんHwyl。あきたりさ(Vo/Gt)とクマダノドカ(Gt)の二人組バンドだ。今日は1st EP『ASAGU』リリースを記念してのイベントとなる。
いつものようにRYKEY「baby」が流れるなか、ステージに登場。
「こんばんは! Hwylと申しまぁす! よろしくお願いしまぁす!」
りさのいつにも増して気合いたっぷりな挨拶を合図にライブスタート。
オープニングに「i don't know」をもってくることが多い印象のHwylだが、今日の1曲目は「SIREN」だ。挨拶にさらに輪をかけて気合いの入ったりさの歌唱、そしてノドカの唸るギターが満員のフロアに轟く。
「オマエアレルギー」では、りさとノドカが向かい合い、静かなギターの調べで始まる。冒頭からの熱量は落ち着くどころか1曲ごとに上昇気流。聞き間違いでなければ、曲中でりさが「踊れぇ!!」と叫ぶ場面も。声が割れるほどのボリュームで歌い続ける彼女からは鬼気迫る、そんな形容がふさわしいムードが漂っている。
前半のゆったり静かな味わいと後半の激しい展開とのギャップが楽しい「Flower Moon」では、曲調に合わせて前半は頭を可愛らしく左右に振り、後半ではピョンピョン飛び跳ねながらプレイするノドカのパフォーマンスに目を奪われる。
りさの「最近ライブでやっていなかった曲をやろうかなと思います」という言葉から披露されたのは「ガムシロップ」。もしかしたら個人的に初めて聴いた曲かもしれない。《少年ジャンプの代わりに雑誌の占い立ち読み》という固有名詞を織り交ぜたフレーズがより共感性を帯びる、そんな歌詞がたまらない。
りさの「ギター、ノディ!」をきっかけにノドカのスケール感たっぷりなギターソロも炸裂。ギタリストとしての色気を感じさせるその音と立ち居振る舞いが最高だ。
「ひとり暮らしをしている人、学校や仕事を頑張ってる人、あっと今に30代になっちゃった人、なりそうな人…。それぞれの生活にこの曲が味方になるように歌います」
りさのこの言葉で始まったのは、彼女たちの代表曲「暮らし」。冒頭に入る咳払いも曲の一部だ。やはり通常より3割増とも思える、感情が溢れ出るりさの歌声が突き刺さる。また、決して激しさだけではない、ノドカのギターサウンドもこの曲を彩る重要な要素。イントロのフレーズや曲中でのカッティングなど聴きどころ盛りだくさん。
続いては、以前のライブMCで「初めてのラブソング」と紹介していた「わからないよな」。サビの《きみにはわからないよな》というクライマックスに向けて逆算されたような流れが巨大な爆発力を生む名曲だ。
MCでは、リリースした1st EP『ASAGU』のタイトルについて語るりさ。「あさぐ」はりさの地元・津軽弁で「歩く」という意味があるとのこと。
「このアルバムと共にHwylも歩いていきたい、聴いてくれるみんなと歩いていきたいという意味を込めて付けました。みんなも、無理せずマイペースで歩いていこう、って気持ちを込めて歌います」
そう告げてから演奏したのは、本日8曲目となる「現在地」。ギターを置いたりさの呼吸に合わせるように入る、ノドカのギターが優しい。タケマトモヤ(Ba)とノドカのふたりがりさを真ん中に、まるで見守るようにプレイする姿はとても美しかった。《腫れがちな扁桃腺》《溜まりに溜まった録画予約》など、生活を切り取ったりさらしい歌詞も秀逸だ。
ここでMCタイムへ。ノドカは、「Hwylを知ってる人?」の問いに多数の手が上がるフロアに「嬉しい~~!」と素直な感想を漏らす。そしてソールドアウトの喜びと併せて今日の出演アーティストや観客、下北沢MOSAiCそれぞれに感謝の言葉を送っていた。
りさは、地元の友人から、自分らにとって馴染みの公園でHwylの曲が流れていたという連絡があったと話し、少しずつだけどちゃんと届いていることを実感すると語る。そして、離れて暮らす父母や友人たちに届くように歌います、と〆て次曲「戯れ言」へ。
フロア後方まで手拍子で埋め尽くされるほどの盛り上がりに、一観客としてなんとも言えない感慨深い気持ちになってしまう。
ラストの曲へと入る前にりさが突然「大事な発表をします!」と言い、続けて「今日、ベースのタケマがHwylに加入します!」というサプライズ発表が飛び出す。フロアからは大拍手! そのままの勢いで「Treasure」へ突入。かけがえのない人について歌う曲に「Treasure」と名付ける、そんな一曲を新メンバー加入発表とセットで届けるHwylの心意気に胸が熱くなってしまった。
アンコールでは、Hwyl加入が歓迎されるか不安で心臓バクバクだったという話すタケマに、フロアから「おめでとう!」の声がかかる。そんな彼の不安が、あのどさくさ感のある発表になったのだろうか。
レコ発企画にサプライズ発表など、いつもと違うスペシャルなライブは、普段1曲目を飾ることが多い「i don't know」をアンコールで披露し、幕を閉じた。
1st EPをリリースし、二人組から3ピースへと変化するHwylの、まさに新章突入となった記念すべき夜。この大切な時間を共有できた喜びを噛みしめる、そんなライブだった。
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