【復刻ライブレポート】2019/10/17 the pillows 30th Anniversary "LOSTMAN GO TO YOKOHAMA ARENA"
※解散の報に触れ、たまらなくなって読み返した2019年開催の30周年記念@横浜アリーナライブのレポート、復刻掲載です。
the pillowsの30周年記念ライブに行ってきました。彼らを最後に観たのは3年半前の音流大演会。その前は2015年のBAYCAMP。ワンマンとなると2012年の「TRIAL TOUR」以来です。前の職場に音楽好きの先輩がいて、社内バンドを組んでスタジオ入ったことがあるんですが、そのときの練習曲がthe pillowsの「Funny Bunny」。このタイミングでちゃんと彼らの音楽に触れることができて一気にハマりました。当時出たアルバム『Wake up! Wake up! Wake up!』に夢中になってライブにも足を運ぶように。
20周年記念となる日本武道館ライブにも行きました。仕事が押して職場から武道館までほぼダッシュで向かったのもいい思い出です。
ここ数年は観る機会も減ってしまっていましたが、映画「王様になれ」も話題となり、久々にpillows欲がむくむくとわいてきて。30周年記念で横浜アリーナにてライブを行うとのことだったので、お祝いも兼ねて久しぶりのワンマンを堪能することにしました。
武道館での20周年記念ライブではチケットが10分でソールドとなり、観られなかった人がたくさんいたということで、観たい人全員が観られるように、と今回横浜アリーナを会場に選んだ彼ら。しかし蓋を開けてみればここもソールド。2F立ち見券までも販売するに至るほどです。(自分はまさにこの2F立ち見チケット購入組)
当日はあいにくの雨模様でしたが、幸いにも開場前の時間帯は雨もやみ、冷たい思いをせず入場することができました。時間とともにどんどん埋まっていく横浜アリーナ。同じ立ち見同士、隣り合った方としばし雑談をして緊張をほぐしつつ、開演を待ちます。
30周年アニバーサリーライブは、メンバー3人の幼少期から今に至るまでの数々の写真と、3人それぞれのお母さまたちによるモノローグからなる映像で始まりました。就職せず音楽で生きていくんだと決意する青年シンイチロウ。ツアー先からの電話を欠かさない、優しい真鍋さん。幼い頃から「歌手になるんだ」と公言していたさわお少年。母親ならではのエピソードも交えながら、異口同音に「ファンのおかげ」とこれまでの活動を総括します。
感傷的な気持ちを引き出す演出を経て、≪聴こえてくるのはキミの声 それ以外はいらなくなってた≫とさわおの力強いアカペラで、ついに演奏が始まりました。
オープニングにふさわしい、みんなの気持ちを震わせる1曲、「この世の果て」。瞬時に心を持っていかれ、気づけばずっとエア合唱していたような気がします。
続く「MY FOOT」はまるで自分のことを歌われているかのような
≪どこに居てもミスキャスト≫
≪独り言が増えたロストマン≫
≪誘われないのに断るセリフを覚えて≫
という歌詞が毎度刺さりまくる。10年前とまったく変わらない感覚でこの歌を受け止めているということに愕然としますけども。
「俺たち30年間ロックバンドを続けてきた」
「今夜はその集大成」
「俺たちの音楽を受け取ってくれよ」
そんな言葉からの、「アナザーモーニング」
≪今日は新しい僕の誕生日なんだ≫
≪記念写真を撮り直すからおいでよ≫
≪素敵な思い出を映す≫
≪ロウソクは消さないで≫
≪生まれ変わる朝が来た≫
ものすごい喪失感に襲われた時期を経て、少しずつ前を向けるようになったタイミングで聴いたこの曲にどれほどチカラを貰ったことか。過去を消すんじゃなく、忘れるでもなく。全部持ったままで新しい自分になる。そんな風に思えた曲でした。
≪夢の向こうまで≫
≪旅を続けるつもりだよ≫
≪キミを連れて≫
と歌う「スケアクロウ」。誰かのことを守りたいと思いながら涙し、守れなかったことにも涙した。自分にとってとても思い入れの強い曲です。30周年というスペシャルな日のセットリストにこの曲が組み込まれていることが嬉しかった。
お気に入り曲をまとめてプレイリストにして流すことがあるんですが、そんなpillowsリストから漏れていた「バビロン 天使の詩」。今日のライブで聴いたらめちゃくちゃカッコよくて、なぜ俺はリストから外していたんだと半ば唖然としながら味わいました。「I know you」もそう。「No Surrender」は、かつて複数回参加した『PIED PIPER』レコ発ツアーのことを思い出しながら聴きました。特にO-EAST公演。その日自分がどの位置でライブを観ていたのかまでハッキリ思い出せるほど。もう11年も前のことなのに。
会場から沸き起こるたくさんの声援に
「今日は30年間でいちばん人気があるな」
「もしかしたら売れるかもしれない」
とジョークを飛ばすさわお。
大好きな曲、思い出深い曲が続々と披露され、夢中になっているうちにライブはあっという間に後半戦へと突入していきます。
新しい作品になればなるほど触れる機会が減ってしまっていたんですが、2018年リリースのアルバム『REBROADCAST』収録の「ニンゲンドモ」。これは歌詞に具体的な地名が入っている歌ということもあるし、
≪新宿のコンビニエンスストア≫
≪カタコトのタイ人が働いている≫
≪愛想はないけどさ 覚悟はあるんだろ≫
という部分にものすごく痺れてしまって強烈に心に刻まれた曲でした。ライブで聴くことができてありがたかったなあ。
「みんなもしかして、無職?」
と、平日にもかかわらず集まったたくさんのバスターズに、嬉しそうに語りかけるさわお。
10年ぶりに演奏するという「雨上がりに見た幻」は、冒頭の映像にてさわおのお母さん(だったような気がする)が好きだと言っていた1曲で、タイトルを告げると会場からも大歓声が。やはり満員の横浜アリーナは迫力が違います。
ライブ終盤には、短めのメンバー挨拶がありました。まずはサポートベースの有江嘉典さん。「3人へのお祝いの気持ちを込めて演奏しています」とコメント。
そしてドラムのシンちゃん。挨拶というか漫談でしたね。母親から電話があって、横浜アリーナのことがわかったと。横浜スタジアムね、という彼女の言葉に戸惑うシンちゃん。桜木町に行くつもりだという母親に「惜しい、ハマスタは関内、一駅違う!」と心でつっこむ。結局、シンちゃんは正解である「新横浜」の名を伝えるわけですが、これに対して「新しくできたのね」と返すお母さん、さすがです。この流れから、「横浜アリーナ30周年おめでとうございます!」とシンちゃん。うわ、pillowsと同級生なのか、知らなかった…。
最後は真鍋さん。「メンバーはもちろん、スタッフや関係者、バスターズのみなさん。30年間付き合ってくれてありがとう!」という言葉に横アリ全員からの大拍手。30年前って言ったら俺まだ中学生だ。改めてそのすごさを実感します。
グッときたその余韻を味わう間もなく次の曲「Swanky Street」が始まる。あれ、なんだかギターとドラムの絡みがズレてるな…と思ったら突然演奏がストップ。苦笑いなpillowsと大爆笑&拍手な観客。
さわおも真鍋さんに向かって「おまえがガラにもなく感動的なこと言うから」なんて笑いつつ、すぐに切り替えて再スタート。出だしでトチったけれど、この曲もやっぱりカッコいい!30年の集大成だけあって、今日選ばれた曲たちはどれもこれも、自分自身に響いてくるものばかりです。
自分の記憶をたどると、もしかしたらpillowsのライブで初めて涙した曲かもしれない「LITTLE BUSTERS」。俺の前で、ずっと腕組みしてじっくり観ていた男性客が、この曲でとうとう拳を上げました。それくらい、バスターズにとっても昂ってしまう1曲なんでしょう。今日はスタンド席での鑑賞ですが、ライブハウスのフロントエリア、この曲でぐっちゃぐちゃになりながら何度も何度も跳ねて楽しんだ夜がフラッシュバック。「LITTLE BUSTERS」にはそういう、人を動かすエネルギーが溢れている。
本編最後となる「Ready Steady Go!」。これまた名曲だし大好きな1曲。確か『TRIAL』のツアーだったでしょうか。pillowsでよくある、アンコール前のBGMでこれを流していたような。記憶違いかもしれませんが。メロディにも歌詞にもスピード感があって気分がどんどん乗ってくる。ライブのオープニングナンバーを任せられる、そんな曲をラストに持ってくるとは。「もっと欲しい!」と思わせてくれるという意味では、アンコール前にこそふさわしいのかも!?
アンコールで再びステージに立ったpillowsは、彼らの代表曲ふたつを演奏してくれました。
Mr.Childrenもカバーした「ストレンジ カメレオン」。そしてBUMP OF CHICKENがカバーした「ハイブリッド レインボウ」。
「ストレンジ カメレオン」は、聴くたびにいろいろな歌詞がグサグサと刺さる1曲ですが、今夜は
≪抱き合わせなんだろう 孤独と自由はいつも≫
という部分がグイっと心の中に飛び込んできました。
「ハイブリッド レインボウ」では
≪ここは途中なんだって信じたい≫
のところでもうダメでした、涙・涙・涙…。これも10年前から変わってないなあ、自分。最高に充実していて今がいちばん楽しい!って思える時間はホントに少なくて。瞬間でそう感じるときはあっても、長くは続かない。仕事でもプライベートでも思い通りにいかない、思い描いていたものと違う、そう感じることばかり。普段はこんなことを意識することはあまりないんですけど、この歌詞を歌うさわおの声に触れた瞬間に諸々決壊。
この気持ちを味わえただけでも、今日この場所に来た甲斐があったと本気で思いました。
2曲を歌い終えたさわおは
「音楽業界は信用してない」
「けど君たちのことは信じたいよ」
と言ってステージを去っていった。
「信じるよ」じゃなく「信じたいよ」という言い回しがとてもさわお的だ…。
誰もいなくなったステージ。会場には「Thank you, my twilight」が鳴り響き、バスターズは皆、口々にこの歌を歌う。初めてこの光景を体験したのは「Wake up! Tour」のO-EASTでした。この時は「YOUNGSTER (Kent Arrow)」が流れたはず。誰一人帰らず歌う姿に感動したし、帰りの電車でこの光景を思い出して涙するほどでした。今もこの流れが生きていることが嬉しかったし、pillowsのワンマンライブに来るのは、ホントに久しぶりなんだなと実感。
曲も終わって準備は整った。大きな手拍子に迎えられ、4人が登場します。酒を片手にステージの下手、そして上手と移動して観客に挨拶。
ビール缶を持ちながら「中身、アクエリアスだから」と言い放つさわお。だいぶリラックスしているのか、話題は「Swanky Street」へ。
「あんなに練習したのにねえ」
「ポンコツだわ」
「こんな感じのとこ(横浜アリーナ)で曲止まるってある?」
「大学生かよ」
とひたすら苦笑い。シンちゃんも「55歳で大学入りました!」と調子合せます。
今日は映像収録も入っているということで、どうするんだという話し合いもありつつ「酔っぱらう前に」と「Ride on shooting star」を演奏。フロントの3人が楽器と一緒に身体を前後、あるいは左右に動かすあのパフォーマンスも健在。
そして誰もが待ち望んだ1曲、「Funny Bunny」へ。もうあちこちで解説や分析、紹介されている歌詞。
≪キミの夢が叶うのは≫
≪誰かのおかげじゃないぜ≫
≪風の強い日を選んで≫
≪走ってきた≫
そしてこれに続く
≪飛べなくても 不安じゃない≫
≪地面は続いているんだ≫
≪好きな場所へ行こう≫
≪キミなら それができる≫
の部分。
今まで何度、この歌詞にチカラをもらったことだろう。10年前も、そして今も。変わらずに背中を押してくれるこの歌は、さらに10年、20年と歌い継がれていくに違いないし、何より自分自身をこれからも奮い立たせてくれると思う。本当に本当に大切な曲です。
ダブルアンコールが終わってもまだ帰りたくないバスターズの気持ちに応えて、3度目のアンコール。曲を演奏する前にさわおは言いました。
「若者だった自分も」
「50代になったバンドも救ってくれる」
「新しいも古いもない世界、それがロックンロールだ!」
a flood of circleのライブレポでも同じようなことを書きましたが、pillowsも「ロックンロール」という言葉がよく似合う。ロックバンドじゃなく、ロックンロールバンド。これからもずっと、ロックンロールバンドを続けていってほしい…!(会場を出るときに気づきましたが、ロビーにはa flood of circleからの花がありました。ロックンロールとアウイエのふたつを引き継ぐバンドですね)
トリプルアンコール曲「Locomotion, more! more!」で横浜アリーナを思いきり揺らして、30th Anniversaryライブは幕を閉じました。
ただ曲がカッコいいから、ライブが楽しいからという理由だけではない。そこに自分の人生を重ねたり、勇気を貰ったりするからpillowsが好きなんだなということを改めて確認できました。最近はちょっと彼らのライブに行く回数が減っていましたが、もっとライブを観たくなったし曲ももっともっと聴きたい。あまりチェックできていなかった最近の曲も含めて、もっとpillowsを浴びようと思います!
01.この世の果てまで
02.MY FOOT
03.Blues Drive Monster
04.アナザーモーニング
05.スケアクロウ
06.バビロン 天使の詩
07.I know you
08.サリバンになりたい
09.LAST DINOSAUR
10.Please Mr. Lostman
11.No Surrender
12.Kim deal
13.ぼくは かけら
14.1989
15.ニンゲンドモ
16.雨上がりに見た幻
17.サード アイ
18.Advice
19.Swanky Street
20.About A Rock'n'Roll Band
21.LITTLE BUSTERS
22.Ready Steady Go!
EN1.
23.ストレンジ カメレオン
24.ハイブリッド レインボウ
EN2.
25.Ride on shooting star
26.Funny Bunny
EN3.
27.Locomotion, more! more!