【ライブレポート】2025/1/9 『FLYING ABOUT』@TOKIO TOKYO(Hwyl / Cloudy / ハク。)
2025年、私にとって一発目のライブに行ってきた。Hwyl、ハク。peanut buttersのスリーマンという豪華メンツ…だったのだが、peanut buttersが体調不良のため出演キャンセル。その代打で登場することになったが、Cloudyだ。
以前から気にはなっていて、どこかで観られたらと思っていた矢先、peanut buttersのキャンセルは残念だが、Cloudyの出演にはワクワクした。
会場となるTOKIO TOKYOは、渋谷PARCO向かいにある、コロナ禍に誕生した新進気鋭のライブハウスだ。海外音楽好きも訪れるハコで、受付でも英語が飛び交う。
開演前の物販にはCloudyのメンバーがいて、来場者にwifiのパスワードを尋ねられ、壁に貼られたアイパス情報を教えると「今日出る子?」「Cloudyです!」「雲?」「そうです笑」なんて会話を交わしており、どこかアットホームな雰囲気にこちらの気持ちも温まってくる。
場内はまずまず混雑しており、「前に詰めてください」とアナウンスも。また、Cloudy以外の2バンドは撮影禁止の告知もされていた。海外からの観客もちらほら見かけたので、英語でも告知したほうがいいのでは?と思っていると、スタッフも同じことを思っていたようで、何やら相談したのち、英語でもアナウンス。
今やライブハウススタッフも英語必須な状況になりつつあるのかもしれない…などと考えているうちに、ライブはスタートした。
ハク。
大阪初4ピースバンド。過去に何度かライブを観ており、その都度書いていた気がするが、とにかくカノ(Ba)のベースプレイに毎回惹かれてしまう。
1曲目はギターとベースによるシンプルかつグルーブ感のあるイントロから始まる「なつ」。あい(Vo/Gt)の等身大とも言えるストレートな歌声が観客たちに届けられる。
続く2曲目は、大人と子供の狭間で揺れる若者の心の内を描いた「頭の中の宇宙」。楽しそうにライブをする彼女たち。会場はすでにハク。色に染まっていた。
あいとカノによる新EP『Catch』のリリースおよび東名阪ツアー告知を挟んで、『Catch』収録の「奥二重で見る」を披露。歌詞の中で《オリオン座》を使いながら《点と点が波打って跳ねる 流れ星みたいな会話》と星座を思わせる描写を入れてみたり《キラキラ》《シクシク》《ドキドキ》《マダマダ》などのオノマトペを駆使したりと、遊び心たっぷり。
さらにテレビ東京系で放送中の子ども番組『シナぷしゅ』のために書き下ろされた楽曲「あいっ!」では、冒頭の《WA WAO WAO》と歌うパートがとても印象的。これまでのハク。にはないテイストで、ドキドキさせられる。
2曲目「頭の中の宇宙」から、5曲目「dedede」まで4曲連続で新EP収録曲を演奏し、さながらレコ発ライブともいえるセットリストに。
ラストは、コーラスワークが気持ちのいい「回転してから考える」をパフォーマンスし、全6曲でライブ終了。
4人の息の合った呼吸、そして個人的にやはり気になってしまう、カノのグルーヴィーなアクションとサウンドに満たされた時間となった。
1.なつ
2.頭の中の宇宙
3.奥二重で見る
4.あいっ!
5.dedede
6.回転してから考える
Cloudy
2番手に登場したのは、本日のピンチヒッター・Cloudyだ。イヤーマフした小さな子供が周囲の配慮もあってフロア最前に入れてもらっており、こんな子供まで夢中なのか、と驚いたが、まさに彼らの勢いを感じさせるような、熱いライブとなった。
ワイルドでありながら情緒も感じる、不思議な魅力を放つ小柴タケト(Vo/Gt)の歌声。彼が弾く青のレスポールもまた、強い存在感と共にステージに映えていた。
楽曲はどれも激しく、メロディは耳馴染みの良いキャッチーさがある。そして時折しゃがれるその声から放たれる歌詞は意外と聞き取りやすく、そのためか初見でも楽曲がスッと自分の中に入ってくる感じがした。
TOKIO TOKYOという洗練された会場を、たっぷりの熱量と泥臭さのある激しい演奏で自分たちの世界へと変えていく様に惚れ惚れしてしまった。
美しいバラード曲「おぼろげ」は、平成に留まらず昭和すら感じさせるどこか懐かしい味わいがたまらない。
短い挨拶のみでMCらしいものはなく、ただひたすらに楽曲演奏でCloudyを表現する骨太バンドだ。ライブハウス界隈からの熱い支持も納得のステージ。
一本調子のただ激しいロックではなく、しっかりとした表現力も兼ね備えたライブは見事で、実に濃密な30分だった。
セットリスト
1.優しさを失くした
2.セプテンバーナイン
3.今から
4.高鳴り
5.おぼろげ
6.よどんだ生活の中で
7.バンドマンと金髪女
8.さめない夢
Hwyl
本日のトリを飾るのは、Hwyl。彼女たちにとって2025年最初のライブだそうで、オープニングから気合い十分。転換中のサウンドチェック時から拍手が起こるほど、ウェルカムな雰囲気にも乗って抜群のスタートを切った。
幕開けはサポート・岩本斗尉によるドラムカウントから「近年、平和な日々が続いたせいで」。観客からはさっそく手拍子が沸き起こり、「始めるぞ!!」というあきたりさ(Vo/Gt)の絶叫に大歓声で応えるなど、ステージとフロアの呼吸もバッチリだ。
たて続けに「あらすじ」「普通の顔」を披露する4人。りさちの声量や感情の乗り方が、ライブを経るごとにどんどん凄まじくなっている気がする。ボーカリストとして、今グングン成長しているのではないだろうか。
そんなフロントマンに負けじと、タケマトモヤ(Ba)やクマダノドカ(Gt)のパフォーマンスもまた、注目を集めるにじゅうぶんなクオリティで観る者、聴く者を魅了する。
正月に実家へ帰省し、黙っていても朝ごはんが出てくる生活を経て体重が○kg増えてしまったと苦笑するあきた。そんなMCからさらりと曲名を告げて「暮らし」を演奏。庶民代表を謳う彼女たちの名刺代わりの曲でもあるが、それゆえ曲前に雰囲気づくりをして準備を整えてからプレイすることも多かった。ところが今回は帰省エピソードからの流れでナチュラルに入っていく。
「暮らし」という曲が特別な曲ではありつつも、特別扱いしなくてもいいほどにHwylが成長していることを感じさせるシーンだった。
MCでは、Cloudyがタケマの1個下の後輩であること、ハク。とは以前ツアーで共演経験があることなどに触れ、縁のあるバンドとの対バンに喜ぶメンバーたち。
そして今日のハイライトのひとつ、Hwyl最新曲にして本日初披露となる「眼」をパフォーマンス。あきたの作る歌詞には頻繁に韻を踏む箇所もあり、またHIP HOPの香りが漂う曲もあったが、今作は直球ともいえるラップを駆使した、Hwyl新境地の新曲だ。「誰が無能で誰が本物か、自分で考えて」というあきたの語りと共に演奏が始まる。Hwyl特有の攻撃性を備える強い楽曲であり、ただでさえ強力なセットリストの中でも、癖があっていいアクセントにもなる、スタメン候補のパンチがある一曲。新年早々、とんでもない歌を届けてくれたせいで、フロアも大興奮だ。
6曲目には、こちらもラップ要素を持つ「結局他人」、そして7曲目に「バンドが大事にしている曲、みんなで育てていけたら」という曲紹介を経てライブ時点での最新リリース曲「How time flies」を披露。本編ラストには「さすらい」をパフォーマンス。個人的に奥田民生との日本2大「さすらい」だと思っているくらいの名曲だ。《共に十年後も缶ビール片手にGO!語り明かそう》という、ビール好きのクマダに充ててあきたが書いたのかと思わせる歌詞も最高。私は缶ビールが得意ではないので、代わりにハイボールで語り明かしたい。
本編が終わってからのアンコールでは、Cloudy小柴がこの曲を好きだということで「現在地」で〆。この「現在地」や「暮らし」もそうだが、それぞれの曲に物語や世界観がしっかりと詰まっているからこそ、曲が自分の中に自然と入ってくるし、あきたの気持ちのこもった歌声がさらなる説得力をもたらす。
そしてサビのような美しいメロディだけでなく、何気ないリフにすら色気を漂わせるクマダのギターもまた、Hwylの大きな武器であることを再確認。
そんなふたりをしっかり活かすことができる、心地よいリズムを生み出すタケマのベースとサポートドラムの岩本。
4人の力強い演奏を浴びたことで、また今年一年、素晴らしいライブをたくさん楽しむぞ!と、正月明けのだらけた自分に気合いが入った気がする。
あいにくキャンセルとなってしまったpeanut butters含めて、2025年も彼女・彼らの音楽を追いかけていこうと思う。
というわけで、新年1発目のライブレポ。以前と比べてレポートのペースは落ちているので、数は多くないと思うが、今年もどうぞよろしく!
セットリスト
1.近年、平和な日々が続いたせいで
2.あらすじ
3.普通の顔
4.暮らし
5.眼
6.結局他人
7.How time flies
8.さすらい
EN.
9.現在地