【ライブレポート】2021/6/30 「CONNECTION」
コロナ禍におけるまん延防止等重点措置の影響で開演時間が早まり、断念していたライブ。しかし仕事のほうでスケジュール変更が生じたため、急きょ行けることになった。
昨年から推しているilliomote。前回初めてライブを観てさらに好きになってしまったので、ぜひとも2回目を味わいたく、喜び勇んで渋谷へと足を運ぶ。
今日の目的は、4アーティストが出演する「CONNECTION」というイベントだ。
ラインアップは以下の通り。
出演:illiomote / NIKO NIKO TAN TAN / 碧海祐人 / peanut butters
illiomote以外の3アーティストはまったくの初見。peanut buttersだけ以前からサブスクのプレイリストに入れて少し聴いていたくらい。いったいどんなライブになるのか、そもそも各アーティストがどういう構成なのかもあまりわからないまま、開演を迎える。
■peanut butters
ステージに登場したのは、ボーカルの女子1名とギターの男子2名。いきものがかり編成だ。
peanut buttersとはコンポーザーであるニシハラによるソロプロジェクトだそうで、曲の世界観にあわせてボーカルを変えていく形をとっているとのこと。今回そのボーカルに起用されたのが「あみのず」というバンドのボーカルもしている紺野メイ。
ステージドリンクにコーラを用意するという、嘘とカメレオンの渡辺壮亮(Gt.)方式をとる紺野。歌い方も少し特徴的で、常に両腕を後ろに回すスタイルを取りながら、まっすぐ正面を見つめて歌っていく。
先に述べたようにツインギターを擁しており、リズム隊はオケでカバーする構成でライブは進む。3人ともに大きな動きはなく、それぞれが演奏と歌に集中するパフォーマンスが印象的だ。
ライブ中の大きな変化といえば、1曲だけ紺野がギターで参加するトリプルギターな曲があり、そのタイミングが唯一、物理的に動きのある瞬間だった。
曲はポップなものから哀愁を帯びたものまで幅広く、約25分のセットリストの中で流れを作っていた。彼らのライブは視覚ではなく聴覚による動きを楽しむものなのかもしれない。
ホッとさせる安心感の中に少しだけ潜む心細さのような、小さな不安感を帯びた紺野の声は各楽曲との相性も良く、曲をより豊かにしている。
プロジェクト的にはいずれ別のゲストボーカルと替わることになるのかもしれないが、もっと多くの曲を紺野の声で聴いてみたいと思わせる、そんなライブだった。
セットリスト
1.びーちQ
2.ツナマヨ
3.メロンD
4.夕焼けハローワーク
5.スーパーハイパー忍者手裏剣
6.グッドモーニングおにぎり
7.夕方5時
■碧海祐人
愛知県出身のシンガーソングライター。peanut buttersとは真逆で、こちらはベースとドラムのリズム隊を従えたバンド編成だ。ギターやシンセといった曲をリードする楽器はオケによるもの。ちなみに普段は弾き語り中心とのこと。
碧海の歌声はヒーリング効果があるのだろうか、と思うほどに優しい。まるで子守唄のように寄り添いながら、凝り固まった胸の奥を解きほぐしてくれる。
落ち着いた低音も良いが、個人的には甘め要素の入った高音域が特に素晴らしく感じた。
HIPHOPも組み込みつつ、おそらくは様々な音楽を浴びてきたのだろうと思わせる、洗練された偏差値高めの楽曲群に引き込まれる。
踏み切り音(?)や交通音を導入に使うパターンもあり、曲に景色がついてくる感覚を味わった。
MCでは、サポートメンバーふたりともバケットハットを被っていたことから「バケットハッツ」と命名するなど、探り探りながらも徐々に口が滑らかになっていく。しかし、あんまり喋るとボロが出るから、とMCも短めに切り上げる碧海。愛知の自宅で作っていた曲を、今日は広いところでやらせていただく、との曲紹介から“ものぐさ”を披露する。
ラストに“夕凪、慕情”を歌い、ライブは終了。未音源化の新曲も含めて碧海の魅力が詰まったセットリストだったように思う。少なくとも、今日初めて彼のライブや曲に触れた自分にとっては、中身の濃い25分だった。
■illiomote
YOCO(Vo/Gt)とMAIYA(Gt/Sampl)のふたりによる、池袋発のハッピーポップユニット。過度に飾ることなく、自分たちらしさを貫きながら自然体でパフォーマンスする彼女たちの姿が最高にカッコいい。
サンプラーを駆使しつつ痺れるようなギタープレイで会場を魅了するMAIYA。美しく、琴線に触れるエモーショナルな歌声で圧倒するYOCO。ふたりがステージに立つと、「最強」の2文字が頭をよぎってしまう。それくらい無敵の輝きを放っているのだ。
技術と強さに加えて、彼女たちが持つ大きな武器は、「自分たち自身が何よりライブを楽しんでいる」というスタイルだと思う。ステージでのハッピーオーラは着実にフロアへと伝播していく。
illiomoteのふたりに備わった個性と創造性豊かな楽曲がタッグを組んだステージは、観る者の心をとことんワクワクさせてくれる。
「新しいグッズ」という文字とともに新作アイテム紹介映像がスクリーンに投影されると
「ヤバくね?」
「めっちゃ恥ずかしいな、大画面に自分の顔が映るの」
とラフなトークを繰り広げるふたり。
さらにMAIYAが「CONNECTIONだっけ?」と今回のイベント名を口にすると
「めずらしいよ覚えてるの!えら(い)っ!」とYOCOのテンションが上がる。
「繋がっていこうねってこと?」と続けるMAIYAに
「浅っ!…大事なことだよ笑」とツッコミ&フォローを入れるYOCO。
めちゃくちゃカッコイイギターを弾くのに、実はちょっと抜けてるところがありそうなMAIYA…という、キャラクターが垣間見られるトークも楽しい。
自分のステップでいいから一緒に踊ろう、と声をかけ、楽しそうに踊る観客に向かって「ノリ方わかってるね!」とコミュニケーションを取るYOCO。コロナ禍でいろいろと制限がある中でも、フロアとの距離を縮め、観客に楽しんでもらいたいという気持ちが伝わってくるパフォーマンスだ。
広いステージに小さな女子ふたりという構図なのに、縦横を行き来しながら歌うYOCOと存在感あふれるMAIYAはとても大きく、そして頼もしく見えた。
もっともっと巨大なステージでライブをしても、決してひるむことなく自由に楽しみ、観客を笑顔にする。illiomoteの可能性はどんどん広がっていく。
セットリスト
1.Sundayyyy
2.In your徒然
3.ブラナ#15
4.きみにうたう
5.Melancholy
6.What is ??
7.Everybody Nice Guys
8.It' gonna be you
■NIKO NIKO TAN TAN
Ochan(Vo, Key, Gt, Samplar, Composition, Lyrics)、Anabebe(Dr. Cho.)のパフォーマーふたりと、映像やグラフィック、楽曲制作サイドで活躍するSamson Lee、Drug Store Cowboyという4人からなるユニット、と言っていいだろうか。
Anabebeの野性味と都会的なセンスが融合したかのような、強烈なドラミングに撃ち抜かれる。彼が生み出すリズムの上を、Ochanの浮遊感、ユニバース感たっぷりなボーカルがたゆたっていく。
この化学反応に五感が刺激されっぱなしの30分だった。ほぼ予習せずに観たので詳しい曲名等はほとんどわからないものの、バリエーション豊富な音色や展開、構成に唸るばかり。
浮遊エレクトロなテイストはavengers in sci-fi好きにも刺さるかもしれない…などと考えるアベンズ好きな自分がいた。
ライブ後半、“東京ミッドナイト”という曲でゲストボーカルとしてSakieが登場。女性の声が入ることでまた違った印象を与えてくれるNIKO NIKO TAN TAN。そして細川純平がギターで参加し、生音にさらなる迫力が加わる。既定の枠組みを破壊する、というよりも、そもそも枠組みなど意識せず、自分たちのやりたい音楽を発信する、そんな姿勢を感じるようなステージだ。
断片的ともいえる記憶を辿ると“パラサイト”という曲も披露してくれたと思うが、個人的には“キューバ、気づき”が最も痺れる一曲だった。(どちらもかすかに脳内に残るメロディを頼りにyoutubeで照らし合わせたので間違っている可能性あり)
今日の出演者に、オーソドックスなバンドスタイルのアーティストは1組もいなかった。
リズム隊ナシ、リズム隊のみ、ボーカル&ギター、ボーカル兼キーボード&ドラム…。音楽を鳴らす形態が変われば自然と鳴る音楽そのものも変化していく。多種多様な編成でステージに立つ4組のライブには、たくさんの刺激があふれていた。
各アーティストたちの今後がとても楽しみだ。