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【ライブレポート】2020/11/8 KNOCKOUT FES 2020

下北沢で開催されたサーキットイベント「KNOCKOUT FES」に行ってきました。コロナ禍での実施ということもあり、本部受付にて検温と連絡先記入、さらに一部ライブハウスでは入場時にも検温と消毒。観客もマスク着用で声は出さず、というルールのもとで今できる範囲で音楽を存分に楽しむ。

徐々に有観客ライブも増えてきましたが、まだまだ配信ライブも各所で行われており、今まさにハイブリッド、新しい時代の音楽の届け方や楽しみ方が広がる中でのサーキットイベントです。

前日にどのアーティストを観るか動画や音源をチェックして悩みながら決断。今回、各会場ともに入場者の制限をしっかりと設けていたので、あっという間に入場規制が発生するという悩ましい状態ではありましたがほぼほぼ、当初の目的は達成。実験的新人発掘音楽プロジェクト・IMALABで関りを持てたサヨサイことサヨナラの最終回を中心に、全9アーティストのライブを観て回ったのでそれぞれごく短めに(サヨサイはちょい多めに)感想をまとめておこうと思います。

■藍色アポロ@mona records

動画を観てめちゃくちゃ気になったバンド。mona recordsのトップバッターでしたが、開演時間直後にもうハコはしっかり埋まっていました。

演奏にもまとまりがあるし、ツイッターのプロフィールに「2000年代ロックが好きです」と書いてある通り、あの頃のロックを通ってきた人にとってはツボしかない音楽が奏でられます。アジカンのエッセンスがかなり散りばめられている印象を受けました。メロディやギター、ベースのフレーズ、そしてドラム。随所に2000年代前半邦楽ロックのDNAが顔を出しています。

今回のフェス、意外と王道ギターロックバンドが少ないように感じたので、藍色アポロには頑張ってほしい!


■あるゆえ@下北沢SHELTER

続いては下北沢SHELTERにてあるゆえをチェック。開演直前でしたがもうフロア内の移動が困難なくらいの人・人・人。

東京発の4ピースロックバンドで、特に紫月(Vo.)さんの存在感が際立っています。とにかく歌声が強い。メロディアスに歌い上げるというよりも語りに近い歌い方で芯があって刺さってくる。
そしてありささん(Ba.)のベースも音の粒がしっかりしていてとても気持ちのいいサウンド。

MCでは「私が死なないために音楽をやっている」「音楽があなたを救うとは言わないけど、あなたの一部になってくれたら」という紫月さんのMCが印象的でした。

最後に披露した新曲の《救えよ音楽よ私を生かせ》という歌詞も強かった。声は出せずとも観客にはしっかりと届いていた…そんなライブでした。


■マッシュとアネモネ@下北沢SHELTER

引き続きSHELTERでマッシュとアネモネ。先ほどのあるゆえが動ならマッシュとアネモネは静。それくらい対照的なパフォーマンスでした。

もちこさん(Vo./Gt.)のヒリヒリ感がありながらキュートでもある、ハスキーな声がとてもユニーク。情報豊富な歌声と正反対の「ゼロ」な表情も面白い。

ライブ中の笑顔要素でいうとこんな順番。
ヨネクボくん(Dr.)>間下くん(Gt.)=田尾さん(Ba.)>もちこさん

少し控えめに笑みを浮かべる田尾さんのベースプレイも楽しいです。

MCになるととたんに表情を崩すもちこさん。久しぶりの有観客サーキットなのでかっこいい曲を揃えてみたら、思った以上にねっとりしました、というトークにフロアもなんだかほっこり。

ラスト2曲はねっとりじゃない曲とねっとりした曲を、というコメント通りの曲(ねっとり曲は「シープマン」だったかな?)で〆。いろいろな面で特徴たっぷりの面白いバンドでした。


■サヨナラの最終回@下北沢SHELTER

9月末のIMALAB LIVE以来となるサヨサイのライブ鑑賞。あのときはオンラインライブでしたが、それ以前に一度、下北沢GARDENでのライブも観ていまして。個人的には通算3度目となります。

自らを「エンタテインメントバンド」と呼び、楽しい空気を作ろうとしていたGARDENと、自らの過去と向き合い、シリアスでタイトなライブを繰り広げたオンラインライブ。対照的な2本のライブを経て、今日はどんなステージを見せてくれるのか。

リハーサルでの演奏で早くもフロアの手が上がり、観客は開始前からすでに温まっている様子。

そして本番。プロジェクターを使ったオープニングではステージ後方に「サヨナラの最終回」の文字が映し出され、ピアノロックな登場SEに乗せてメンバーが現れます。

ライブの1曲目は「才或る兎は侮らなゐ」。同曲のMVを自らに投影しながら演奏するという演出はクールでカッコいい路線の始まりを感じさせてくれます。

ハヤシくん(Gt.)とこうくん(Ba.)による軽快なアクションも炸裂し、最前を中心に多くの手が上がっていく。

「みんなで見えないものを見ましょう」
「集団幻覚を一緒に見て、目で楽しんで」
といったシバタくん(Vo./Gt.)のMCに思わず望遠鏡をのぞき込みたくなるのを耐えつつ、2曲目「あなたが読む物語」へ。このタイミングでプロジェクター演出は終了。生身の4人になったことでより肉体的なライブへと切り替わっていきます。両翼のふたりがステージ最前まで出てきてフロアを煽ってみたり、あるいは手拍子を促したりしてボルテージの上昇を狙う。ドラマチックなサビとも相まって、さらに熱量が増した感覚がありました。

2曲目が終わった直後、ちょっとした空白ともいえる時間があったにもかかわらず、ほぼ出入りのないフロアに対して
「マジ?みんな出ていかないの?ありがとう」
「次なにしでかすのかとドキドキしてるんだと受け止めます」
とシバタくん。

冒頭だけ見て移動する観客がちらほらいる、というのはサーキットイベントの常ですからね。2曲終わっても移動する人がいない、というのはバンド側からしたらちょっと新鮮だったかもしれません。でもそれは期待値が高いことの表れ。事実、サヨサイのライブ時には入場規制もかかっていたそうですから。


シバタくんは言葉を使ってさらにサヨサイのライブの世界へと深く引き込んでいく。
「この3か月、みなさんもいろんなことを考えたと思います」
「僕は、音楽で世界を救ってやる…とは考えられなかった」
「僕にできることは何か…」
「みんなをちょっとだけびっくりさせることが、できること」

「今後一切、今日以下のライブはやりません」
「明日なんか要らないという人がいたら、その明日を僕にください」

「約束の曲をやります」

そして「I'm i」へ。ここまで比較的シリアスな表情で歌っていたシバタくんの顔に笑みが浮かぶ。自らのアイデンティティを希望とともに歌うこの曲には笑顔が似合う。温かみを帯びたシバタくんに対し、激しさMAXのパフォーマンスを披露する両翼のエネルギーも強い。

「またデカイ声出せる時まで、僕ら絶対やめないんで!」
そんな最後のMCとともに、ラストは新曲「トーキョースカイメトロ」。9月のGARDENでのライブの時より強く感じたのは、歌を、曲をしっかりと観客に届けようという意思。彼らが生み出す音楽は楽しさだけじゃない。そこには伝えたいことがあるんだという、そんな思いを受け取った気がします。

ライブを観終わっての感想としては、まさに今、サヨサイは進化の途中にある、ということ。今日以下のライブはやらない、という言葉も、今自分たちは一歩一歩成長していることを実感しているからなのかもしれません。次はどんなサヨサイを見せてくれるのか、ドキドキしながら見守りたいと思います。

セットリスト
1.才或る兎は侮らなゐ
2.あなたが読む物語
3.I'm i
4.トーキョースカイメトロ


■oh my!@MOSAiC

スタート直後くらいに会場着いたらすでにパンパンでした。以前はしなまゆという名前で活動していたようですが、今はoh my!と名前を変えた、モリユイさん(Vo.)とタクマくん(Gt.)によるPOP音楽を前面に出したユニットです。

動画を観てめちゃくちゃ楽しそうだなあと思って選んだんですが、正解でした。音楽はもちろん、モリユイさん自身が放つ陽気なパワーがすごい。歌ヂカラもすごい。サウンドもとても洗練されていて個人的に好き。

会場の入り口付近がギュウギュウになってしまったため、スタッフさんがライブを止めて奥に詰めるよう観客に促す場面がありましたが、空白を作らないよう、タクマくんのギターに乗せて即興でモリユイさんが歌、というかラップ?を披露。リハでもやったことないのに!とサポートメンバーが驚いていました。

こういう胆力があるというのはステージに立つ人として素晴らしいと思います。

まだ名前を変えて新しい一歩を踏み出してからあまり時間も経っていないようなので、これからの活躍に期待大です。


■かたこと@下北沢WAVER

湘南発の3ピースロックバンド、かたこと。過去に2度ほどライブを観たことがありますが、個人的にも縁のある事務所に所属しているバンドなので今回も観ておかねば!と思い足を運んでみました。

圧倒的な爽やかさと優等生さを兼ね備えた正統派ギターロックバンド。耳心地抜群のグッドメロディと、ユニゾンの斎藤宏介を彷彿させる長尾くん(Vo./Gt.)のキレのある歌声が強烈な名刺になっています。

まだ若いのに安心して観ていられる頼もしさも持っている。「今日この時間この場所を選んだあなたの選択は間違ってないと思えるよう…」といったMCからもプロ意識を感じます。

クセ、という点では純くん(Ba.)による、左右にステップを踏みながらのベースプレイにいびつさを感じて、これはこれで面白い。

危うさや色気を獲得するか、もしくは今持っているピュアな白色をさらに磨くとますます魅力的になっていきそう。かたこともこれからが楽しみなバンドのひとつです。


■HAO@mona records

「消費されるだけの世の中に残るポップソングを」をテーマに活動している、本田こころ(Vo./Gt.)とヤマナカタカシ(Gt./Cho.)による音楽ユニット。

その言葉を裏付けるよう、とても気持ちのいいポップサウンドを届けてくれました。メロディや歌声はもちろんのこと、各パートの音それぞれがしっかりとポップを意識しているように感じて、トータルで心が弾むような音楽を楽しめた、そんな気がしています。

公式サイトを見てもメンバーに関する情報はなく、その出自や経歴なども不明。歌い手が、弾き手がどうこうではなく、あくまでもHAOが奏でる音楽を感じてほしい、ということなのかもしれません。


■ハシグチカナデリヤ@下北沢ERA

サヨサイのシバタくんに「ヤバイです」とオススメされたので、当初の予定を変更してハシグチカナデリヤへ。4階まで上がるのしんどくて敬遠していましたが意を決しての下北沢ERA。

ループ使っての演奏がすごい、と聞いていましたが、まさしく。プロフにも「ループギターの魔術師」と記載があり、その言葉に偽りなし。でも、その巧みなループ使いを、“ループ”アピールではなくあくまでも豊かな演奏のために活用している感じがしてめちゃくちゃカッコ良かったです。技はすごいけど、結局それだけだった…という現象は音楽に限らずいろんなジャンルで起こることですが、ハシグチカナデリヤは違った。音楽も演奏もステージングも素晴らしく、それらを実現するためにループが必須である、という構図。ひけらかすこともなくナチュラルにループを駆使していく様は圧巻。

そして彼のエンタメ性に心打たれる。キャッチーな上に体も心も躍らせてくる音楽。さらに予定調和をぶち壊すアドリブ感のあるライブ。曲を始めてもすぐに演奏を止めてサポートメンバーに「音聴こえてるか!?」と問いただし、実際聴こえていなかったことが明らかになったり、曲を終えた後に「お前あそこミスっただろ!」と指摘したりする場面も。

字面だけ見るとシビアな空気になりそうですが現場は常に笑い、笑顔に溢れていました。

KNOCKOUT FESのメンツを見ると可愛い女子か若い邦ロックバンドばかりで自分のライブに人集まるのかな、なんて自虐っていましたけど、個人的には今日いちばん、純粋にひとりの観客として何も考えずにただただライブを楽しめた時間でした。

セットリスト
1.ニュートリノシンドローム
2.ビュリホー&ワンダホー
3.超good time
4.Rin! Rin! Hi! Hi!
5.イメイジ


■遠山サンドウィッチ@mona records

KNOCKOUT FESの〆として選んだのは遠山サンドウィッチ。事前に動画や写真を見てみたら法被着てライブをしているようだったので四星球っぽいバンドかな?と勝手に思って観に行ってみました。

結果、もちろん四星球ではなかったのですが

見た目は子供! 頭脳も子供!
わんぱくがむしゃら無垢無邪気!!

というキャッチコピーそのままのライブは確かに記憶に残るものでした。

フロアを置いてきぼりにするかのごとくメンバー同士で暴走していく振り切ったステージはすごかった。ネタ曲から切ないメロが印象的な曲まで幅広い楽曲たち。振り付きで観客と一緒に楽しめる曲もあって、バンドとしての面白さもあります。

本来ならフロアとコミュニケーションを取ることで本領を発揮するのかも!?コロナ禍ということで観客は声を出せないので、リアクションがなくやりづらかったかもしれません。そんな状況でもとにかくやり切ったことは見事。

自分のトークでオチを言ったかどうか忘れてしまったり、コロナで声が出せないことを忘れて観客の声を求めてしまったりと、なかなかの天然感漂うしーばさん(Vo./Gt.)と、しっかりツッコミ入れる池子さん(Ba.)のコンビネーションも良かったです。

セットリスト
1.痴漢ダメ絶対!!
enc.
2.ハッピでハッピー
3.summer vacation
4.ダッ祭


サヨサイとかたこと以外は初めてライブを観るアーティストばかりで、新しい発見ばかりの貴重なサーキット体験となりました。

再び感染者数も増えてきて、まだまだ油断できない状況が続きますが、コロナとうまく付き合いながら、リアルでもオンラインでもたくさんのライブが開催され、多くの人が心から音楽を、ライブを楽しめる日が来ることを願います。

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