【ライブレポート】2021/3/16 Anniversary 17th × 大好きなおんがく
2月と3月に行われたIMALAB×新宿LOFTの無料オンラインライブ。この企画に出演したTHE 革命キラ獣とHAOによるライブが下北沢モナレコードにて開催された。
今回のイベントは『下北沢モナレコード17周年×大好きなおんがく』という企画だ。当初出演予定だった雨降りゆいちゃんは諸事情によりキャンセルと急きょツーマンとなったステージを簡単に振り返ってみたい。
■THE 革命キラ獣
開演時間になると、壮大な登場SEとともに観客の間をぬってフロアからステージに登場するTHE 革命キラ獣のメンバーたち。それぞれに最終セッティングを行うが、SEがなかなか鳴りやまない。どうも様子がおかしいとステージをよく見てみると、ヒロマサノリ(Dr.)がスネアのセッティングでトラブっているようだ。
他のメンバーが念を送ってセッティング完了を願うも、なかなかうまくいかない。これ以上は間が持たないと判断したのか、ナギノエナ(Vo.)がマイクを握り、場を繋ぐマイクパフォーマンスを繰り広げる。
人前でパフォーマンスをする者として、その資質や経験値を試される場面で見事にその役目を果たしたナギノエナにより、無事にドラムのセッティングも完了。ここからが本番だ。
黒と赤のコントラストが映えるセーラー衣装でステージに立つナギノエナを、楽器隊の4人が支える。ギターをはじめとした小気味良いサウンドに彼女のキュートな歌声が乗る1曲目“RC ~臓~”で観客を引き込むと、ポストロック感漂う“genocyber≒NEO”では楽器隊が存分にそのテクニックを発揮する。
3曲目となる“モネブリー、渋谷にて”ではミドルテンポでメロウなナンバーながらもタイトなアクションを披露。緩急をつけながら5人全員で歌の感情を表現しているように感じた。
紅一点であるナギノエナは確かにバンドの華だが、彼女ひとりがバンドを背負うわけではなく、演奏面でバンドの土台をしっかりと築き、ナギノエナを引き立てながらも時には主役を奪うほどの輝きを放っている。
各メンバーともにスキルが高いのだが、特にジニー早﨑(Gt.)の演奏テクニックは必聴&必見だ。4曲目“貴様らの血は何色だ”でも繰り出されていた彼の鮮やかな運指。思わず見とれてしまうほどに美しかった。
ナギノエナはラップや一瞬の力強いシャウトなど多彩な歌唱表現に加え、体全体を使って歌そのものを観客や視聴者に届けようとしている。また、表情も上手に駆使することでより感情豊かなパフォーマンスとなっていた。
MCではモナレコードの可愛らしい内装に触れたり、あるいはライブ前にメンバー全員で食べた寿司の話をするなど、なかなかに掴みどころのない部分があり、演奏中とのギャップが面白い。
ちなみにその寿司は蓋(?)をされた状態で出されたそうだ。蓋部分が曇っていたため、「寿司、生きてんの?」と戸惑ったというナギノエナにゆめひと(Gt./Cho.)が「寿司の息遣いだね」とキレイな切り返し。残念ながら彼女の心にこの言葉は響かなかったようで、ゆめひとも「なかったことに…」と会話の継続を諦めていた。
ラストは“ノンインフィニティ”を披露。素晴らしい演奏や歌声の緩急によるメリハリなど、聴きどころたっぷりな一曲でライブは終幕となった。
セットリスト
1.RC ~臓~
2.genocyber≒NEO
3.モネブルー、渋谷にて
4.貴様らの血は何色だ
5.(タイトル不明)
6.ノンインフィニティ
■HAO
続いては本田こころ(Gt./Vo.)とヤマナカタカシ(Gt.)によるポップバンド、HAOの登場だ。ベースとギターにサポートメンバーを加えた4人編成でのライブとなる。
「HAOです、よろしくー!」
本田が第一声を元気よく発し、HAOのステージが幕を開ける。1曲目は“LIFE”。
軽快なリズムと爽やかな音が耳に触れる。オープニングにふさわしい清々しい曲…などと思いつつも、歌詞に耳をすませば
《さめざめとしている愛想笑いの最後は》
《君が残したサヨナラの話でした》
と歌っている。
重めの歌詞やネガティブな言葉をポップな音で届けるというのは彼女たちの代表曲のひとつ“花束”と同様の構造だ。そのギャップによってより強く歌を印象づけることもできるし、相反するがゆえ、切なさや悲しさといった感情が際立つのかもしれない。
2曲目“Bitters”は本田のかき鳴らすギターが始まりの合図。爽やかから力強さへと変わる歌声も魅力的だ。続く“インスタントミュージック”は渋谷駅へと到着する車内アナウンス(おそらくはJRか)のSEから始まる歌。サビまでの流れで、手数を抑えて鳴らされるギターの音が存在感を発揮しており、引き算で組み立てられた音の面白さを感じた。
終盤に組み込まれた《やり場のないインスタントミュージック》という歌詞での本田とヤマナカによるコーラスも味わい深いものがあった。
4曲目は“羊雲”。本田の清らかな声がどこまでの伸びていくようにモナレコードに響く。その後ろでサポートドラムが楽しそうに歌を口ずさみながらドラミングする姿からは、HAOが生み出すどこかピースフルな空気を表しているようだった。
MCでヤマナカは、今日のイベントを組んだブッカーへの感謝を述べる。さらに対バンのキラ獣メンバーの中には彼の友達もいるとのことで、アットホームな感じがすると語った。
また本田は『大好きなおんがく』というイベントについて、「大好きな音楽、大好きなバンドに出会えるはずです」と話し、「HAOはみなさんの大好きな音楽の一部になれたらいいなと思ってます」と告げ、後半ブロックへと突入する。
5曲目となる“街風”では観客が手拍子でライブに参加。思わず手を挙げて楽しむ人もいて、フロアも大いに盛り上がった。汗をかきながらギターソロを繰り出すヤマナカの姿もまたフロアの温度を上昇させるのに一役買っていたに違いない。
“街風”に続いて披露された“サイダー”でも再び手拍子が生まれ、曲を盛り立てていく。どちらもHAOとしてはロックテイストが強い曲だ。勢いよく飛び出してギターを鳴らすヤマナカもロックのスイッチ全開でプレイ。
最後の曲となったのは“花束”。本田がギターをハンドマイクに持ち替えて、HAOが示す最高のポップネス、最高のグッドメロディを届けてくれた。彼女の充実した笑顔がとても印象的だ。
本編はここで終了し、アンコールへ。
本日のサポートメンバーである
ひのでしゅんたろう(Dr.)
ゆーき(Ba.)
のふたりを紹介すると、ヤマナカは自分の想いを語った。
音楽がなかったら知り合ってない人たちがフロアに、画面の前にあふれてる。
僕らにできるのは曲を作りライブをやって恩返しすること。
2021年は制作やライブでみなさんを驚かせることをしたい。
見逃さずについてきてほしい。
今年のHAOの活動が楽しみになるメッセージを届けたところで、アンコールの曲へ。メンバー間での話し合いの結果、曲は本日2曲目に披露した“Bitters”に決定。上着を脱ぎ、白いTシャツ姿で気合を入れるヤマナカ。彼がコロナのときの心境を書いたこの曲を演奏し、ライブは幕を閉じた。
曲の冒頭で、本田がアンプオフ状態でエレキギターをかき鳴らしてしまうというハプニングがあり、ビシっと決めたかったラストナンバーを苦笑いしつつ仕切りなおす一幕も。
そんな人間味あふれるライブもまたHAOの魅力なのかもしれない。
セットリスト
1.LIFE
2.Bitters
3.インスタントミュージック
4.羊雲
5.街風
6.サイダー
7.花束
EN.Bitters
『大好きなおんがく』という企画名のとおり、ステージとフロアで立つ場所は異なっていても、音楽が好きな者同士が集まって音楽を楽しんでいた。小さなライブハウスで生まれる「音楽好きの息遣い」が、かつてのようにライブハウスのあちこちを曇らすような日々が戻ってくることを願ってやまない。
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