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【ライブレポート】2021/11/5 SHELTER 30th Anniversary POOL SIDE

10月ひと月まるまる使って開催された『SHELTER 30th Anniversary ” Look Back on THE 1991-2021 “』とはまた異なる、シェルター30周年企画『SHELTER 30th Anniversary POOL SIDE』。

出演はKONCOS、Keishi Tanaka、FRONTIER BACKYARDの3組。この並びにピンとくる方はきっとNiw!Recordsファン。

10年以上前、Niw!Recordsで活躍していたRiddim SaunterのメンバーだったKONCOSのTA-1、佐藤寛、そしてKeishi Tanakaの3人に加え、FRONTIER BACKYARDのふたりが集い、さながらNiw!Records祭りの様相を呈していた今夜のライブを振り返る。


KONCOS

トップバッターはKONCOSだ。すでにライブ前のセッティングも整っており、開場から開演までの間、ステージにメンバーやスタッフが出てくることはない。やがてフロアにはRiddim Saunterの曲「Ain't A Pose」が流れ始め、TA-1と佐藤寛、そして紺野清志がステージに現れる。

登場SE(?)に反応したTA-1が思わず「懐かしい曲だね。昔僕がやってたバンドの曲です笑」と話しフロアに笑顔が生まれる場面も。

「これがClassic Niw!Records Style!」と叫んでライブスタート。

ドラムの紺野が加入してからは初めてライブを観たが、とにかくパワフルだった。結成初期、『ピアノフォルテ』をリリースした当時は「ムスカリンリン」を筆頭にキラキラピアノなお洒落サウンドを前面に打ち出していた印象のKONCOS。その後数年経ってから観たライブでは、キラキラから距離を置いた、パンキッシュに暴れまくるTA-1の姿があった。

そして今日。TA-1と寛のツインボーカルを柱に、ベースとキーボードを駆使するTA-1、ギターの寛、ドラムの紺野によるトライアングルはキラキラもパンクも両方を兼ね備えた、唯一無二の音楽をぶちかましてフロアを熱くさせていた。

開始早々にアグレッシブな動きでフロアの視線を釘付けにしたTA-1は、あっという間に頭から文字通りの尋常ではない滝汗をダラダラと流しまくっている。しかし、大量の滝汗にも納得できるほど、彼は動きまくっていた。ステージとフロアを仕切る柵の上に飛び乗るのは当たり前。ベースを弾きながらステージの下手から上手、また下手と狭いルートをものともせず突き進む。後ろを突っ走る際にサッと背中の位置をずらした寛とのコンビネーションも見事。
マイクのコードが首に絡まりながら、あらぬ方向に向いてしまったスタンドマイクの位置を直すことなく、自らの首をおかしな向きにもってきて歌うTA-1。

天然の野生児かのごとく、自由に、そして生き生きとパフォーマンするする彼を見ていたら、コロナ禍での活動というのは本当に耐えがたいものだったのだろうなあと想像してしまう。

MCブロックでは、「最悪から抜け出してきた!ふざけんなよな。つまんねえよ」とまさにコロナ禍でのいろいろがつらかったことを思わせる本音の言葉がTA-1の口から漏れる。

「テキーラ飲んで忘れましょ。解禁でしょ?僕らはそういう遊び方をしてきたんで」といかにもライブハウス育ちな一面を見せつつ、そんな最悪な世の中を歌にしたと告げ、「曲は最高です」との寛の絶妙なフォローも入り、新曲「センス・オブ・ワンダー」を披露する。ソフトなボーカルとリズミカルなキーボードが印象的な、最悪だった世の中にこそ必要とも思える優しい一曲だ。

曲が終わり、そのままの流れでフロアから手拍子が鳴る。表拍子だったものをTA-1の「2,4にしてみようか」の合図で裏拍へと切り替わって「さかさまの街」へ。

大きな声は出せない観客と対峙する際に様々なかたちでコミュニケーションを工夫していたコロナ禍でのバンドマンたち。だが、今日のTA-1のこのやり取りは、確かにまだ声を出しづらい中ではあるものの、そういう制限の外でステージとフロアがナチュラルにコミュニケーションを取れる世界がもうすぐやってくる、そんな予感を抱かせてくれるように感じた。

最後に彼らのライブを観たのは2015年4月、場所は今日と同じ下北沢シェルター。あれから6年も経ってしまったが、最新のKONCOSを観ることができてたくさんの発見があった。何より感じたのは、今のKONCOSはめちゃくちゃカッコいい、ということ。

「生きている」ことを全身で表現するTA-1は素晴らしかった。

セットリスト
01.Palette
02.All Things Love
03.magic
04.Citrus
05.Parallel World
06.センス・オブ・ワンダー
07.さかさまの街
08.月待つ島まで
09.I like it

Keishi Tanaka

ステージで諸々セッティングを行いながら、そのまま本番へと突入するKeishiならではの自由なスタイル。

再び「Ain't A Pose」が流れると「さっき(TA-1が)僕が昔やってたバンドです、って言ってたけど、俺も寛もいたけど」とぼやきながら弾き語りでの「One Love」でライブが始まる。

Keishi Tanakaと言ったらなんといってもその魅力は美しすぎる歌声だ。倍音を感じる豊かな声には、いつ聴いても酔いしれてしまう。

KONCOSとFBYがバンド編成ということもあり、「弾き語りですけど休憩のつもりはさらさらない」と強気な発言。Keishiらしい名場面だ。

その言葉の勢いのまま「Just A Side Of Love」へと突入する。彼がソロになってからの曲にはファンクやソウルなテイストを感じるものが多いが、それゆえか裏拍で手拍子したくなる曲が盛りだくさん。「Just A Side Of Love」はまさに、「2、4」で手を叩いて気持ちいい一曲。

リリースされているバージョンでは沙羅マリーをゲストに迎え、ふたりで歌っている曲。ライブでは“荒タケー”こと荒井岳史(the band apart)を招いて歌うこともあるが「今日のゲスト…俺!」ということで本日はKeishi単独によるパフォーマンスとなった。

コロナ禍で、気持ち的に弾き語りモードだったというKeishi。正解はそれぞれのバンドで異なるものであるという大前提のもとで、彼自身はバンドで大きな音を出す気持ちになれなかったそう。しかし今は弾き語りからバンドモードに変わりつつあるとも話し、その流れからゲストミュージシャンとしてFBYの福田“TDC”忠章をステージに招へいする。

服を引っ張って登場を妨害するTGMXの姿も見えつつ、拍手で迎えられたTDC。「ちょっとお借りします」と先輩に断りを入れながら、ここからはギター&ドラムユニットでのライブだ。5年ぶりくらいに一緒にスタジオに入って練習したという、コンビネーションを見せるふたり。

「Baby, Stay Home」のさわりだけ演奏して「これが1年半前の気分、ここからが今の気分」とコメントすると「Floatin’ Groove」でガラリと空気を変え、しっとりムードから一気にアッパーモードへ。

曲後半の転調がさらにライブを加速させていき、「偶然を待っているだなんて」、さらには「Like Her」でその盛り上がりはMAXに達する。KONCOSとは異なるアプローチながら、フロアを熱気に包むステージはさすがだ。

ラストは新曲「I'm With You」を披露してkeishiのステージは幕を閉じた。

ライブで観客が声を出すことについて、もう少し我慢しつつ楽しむ方法があるはずと話し、大声出さなくてもやれることはあるんだと彼自身の考えを語っていた。実際、いろいろ解禁にはなってきているものの、まだ油断はできない状況。ライブハウスでも大声を出しての観賞を禁止しているところばかりだ。

とても優しい語り口で、やんわりとだが注意喚起する姿には、ステージに立つ者としての責任感をにじませており、頼もしく感じた。

コロナ禍での活動ではワンマンライブが多かったが、今日のような対バンは刺激がもらえていいと話すKeishi。このメンツでやれることが嬉しいとも話し、バンドメンバーもそうだが、やはり(このメンツは)ファミリーであって、Niw!Recordsに対して今もそういう気持ちがあるんだと語る。

今はNiw!を離れてヒップランドミュージック所属ではあるが、Niw!への愛を感じるトークに少しグッとくるものがあった。Niw!は個人的に、遅れてきた青春そのものなのだ。

セットリスト
01.One Love
02.Just A Side Of Love
03.Breath

~with 福田“TDC”忠章(FRONTIER BACKYARD)~
04.Baby, Stay Home(さわりだけ)
05.Floatin’ Groove
06.偶然を待っているだなんて
07.Like Her

08.I'm With You

FRONTIER BACKYARD

トリを飾るのはFRONTIER BACKYARDのふたりだ。しなやかで柔らかく、ときに目をつぶりながら(?)の鮮やかなドラミングが素晴らしい福田“TDC”忠章。そしていまだ衰えぬ透明感たっぷりな歌声を持ち、市川芸人としてのポジションも確立しつつNiw!界隈の先輩として頼りになる存在、TGMX。

ライブは「small talk」から始まり、最新曲「I WONDER」を含む、昨年から今年にかけてリリースされた新しい曲を中心に、前半ブロックはここ4年の曲たちで構成されていた。

ベテランと呼ばれるキャリアを持ちながらも、最新の自分たちで勝負するFBY。先輩がそういう背中を見せるから後輩もカッコいいライブをするんだな、としみじみしながらふたりの雄姿を見つめていた。

TGMXの美声にマッチしたサウンドメイクにも痺れる。その洗練された音楽はまさにNiw!Recordsを体現しているかのようだ。何度も体制が変わり、形を変えながら今もこうして新曲をリリースするなど精力的に活動している。

20人のボーカリストを迎えての「h/e/a/r/t/b/r/e/a/k」リリースや、無観客ライブ配信を行い、終了後そのままライブ盤CDとして販売する「direct package」など、実験的な企画にも積極的だ。

TGMX本人は「余生を楽しんで過ごしている」と話していたが、いやいやどうして、バリバリ最前線で試行錯誤しているのがFRONTIER BACKYARDというバンドなのだ。

「マスク取れないと思うけど、ブラを取ってほしい!」などと早速下ネタジョークを飛ばしながら、2曲目の「saute」でスペシャルゲストに松田chabe岳二(CUBISMO GRAFICO FIVE)を呼び込む。CHABEはコンガでライブに参加し、これまたNiw!色の濃い3人によるパフォーマンスが繰り広げられた。

MCブロックでは、下北沢シェルター30周年に絡めて、トイレで何度もゲロを吐いた思い出や、歴代店長の違いと言えばテキーラを何本出してくれたか、くらいだという発言も。

また、以前のFBYとはだいぶ違うと思われているんじゃないかと思っている、と話したTGMXは、高校の同級生であるTDCと「ヤバくね?」なんていう感覚に従って好きなことをやり続けてきての今なんだとも語った。

そんなTDCにシェルターについて話を振ると、話題はかつて昼の部のオーディションに出たものの、結局声はかからなかったというエピソードに。「そのあと売れました!」と付け加えるTGMXのトークがフロアの笑いを誘う。

洗練と下品と毒舌が絡み合うFBYのライブも、いよいよ最後のブロックへ。

ここで本人への事前告知もなく、2年間は一緒にやってないというCHABEを再び呼び込んで「City lights」でキーボードを弾かせるというドSっぷりを発揮するTGMX。

少し焦りながらも、見事にブランクをはねのけて弾き切ったCHABEはさすがで、TGMXも「できた!」と大喜び。そのパフォーマンスに当然フロアもヒートアップし、そのまま勢いを加速させて「Putting on BG」へ。途中でTA-1が飛び入りしてコンガをプレイするというサプライズもあり、今日イチの盛り上がりを見せるシェルター。

ラストには「POP OF D」と、後半3曲は歴代の名曲を揃えるというFBYの歴史までも感じさせるセットリストで『SHELTER 30th Anniversary POOL SIDE』は幕を閉じた。

セットリスト
1.small talk
2.saute
3.I WONDER
4.Here again
5.FUN SUMMER ENDS
6.City lights
7.Putting on BG
8.POP OF D


TA-1、寛、そしてKeishiがRiddim Saunterだったことに触れるのは決してタブーではない。解散から10年経った今年の9月にはカメラマン山川哲矢による、メモリアルともいえる写真展が開催され、これにあわせてメンバーたちもSNS上で反応する出来事があった。

あの当時、確かにキラキラ輝いていた彼らだが、Keishiが言うように、だからあの頃に戻りたいとかあの時が最高だったというわけじゃない。それぞれの活動へと歩みを進め、最高を更新し続けている彼らがいる。

Riddim Saunterのライブを観たくないと言ったら嘘になるが、今の彼らの音楽を含むいろいろな活動が充実していることも、そのアウトプットから十分に感じられることが嬉しいというのも本音だ。

Niw!Recordsに在籍する者も、卒業した者もNiw!を愛し、集い、共に楽しそうに音楽を鳴らす。そんな瞬間を味わえたことが何よりの幸せ。

どうかこれからも、素晴らしい音楽を鳴らし続けてほしい。


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