【ライブレポート】2021/3/12 THE PLANET TIVA part.2 release party
新人アーティスト発掘プロジェクト・IMALABのプレイリストをきっかけに知ったTHEティバ。“Monday”という曲が素晴らしすぎて他の曲もチェックしはじめたのだが、このタイミングでライブ開催のニュースが飛び込んできた。対バンの音源も聴いてみて、これは行かねば!とすぐに決断。新代田FEVERにメールを送り、無事にチケットゲット。
緊急事態宣言延長のため、平日にもかかわらず16時45分開演というタイムテーブルとなったが、多少無理をしてでもトップバッターから観る価値のあるライブだったというのが率直な感想だ。さっそく各バンドのパフォーマンスについて、手短に振り返ってみたいと思う。
出演
THEティバ
Tomato Ketchup Boys
Mother
■Mother
Motherは山内彰馬(Vo./ex. Shout it Out)、鈴木陸生(Gt./ex. 赤色のグリッター)、谷川将太朗(Ba./ex. Rocket of the Bulldogs)、畝狹怜汰(Dr./ex. SUNNY CAR WASH)の4人によるロックバンド。
THEティバ以外のバンドプロフィールなどは調べていなかったので、新人バンドでありながらもかなり豪華といえるメンバー構成に驚いた。
ドラム然としたガタイのいい畝狹にシュッとしていてスマートな鈴木、金髪&白服が映える谷川、そして一見素朴な青年に見える山内。
ビジュアル的には
ベース(谷川)→ギター
ギター(鈴木)→ボーカル
ボーカル(山内)→ベース
のようにも感じる構成だったが、いざライブが始まれば当然ながら4人が適材適所であることがわかる。畝狹の叩くドラムはとんでもなくパワフルだ。文字通りドラムセットが揺れるほどの激しさ。うねるスネアの音が鼓膜に突き刺さる。谷川の、その見た目以上にド派手なパフォーマンスはバンドの華にもなっていて、ネックが他のメンバーやアンプに当たるのではないかとヒヤヒヤするほど。
鈴木のギターはバンドを引っ張るというよりも支えている印象。メロディをなぞったりわかりやすいラインで聴かせたりするのではなく、サウンド全体に色を付けているギターだ。
山内の歌声は強くて伸びがある。小細工なしにミットめがけて投げ込む直球ストレートのようで気持ちがいい。
彼らの曲は速いテンポでノリ良く盛り上がるタイプではない。ゆっくりと小節を進みながら、個々の指や腕、足による強いアクションとその熱量が生み出すどっしりとした圧でリスナーに襲いかかってくる。音楽の攻撃性やアグレッシブさというのはBPMでは測れないのだということを思い知らされるパフォーマンスだった。
ライブ途中で山内のギターの弦が切れてしまうハプニングが起こるも、曲が終わるとさっと切れた弦を外し、何事もなかったかのようにライブ続行。バンドとしては新人でもバンドマンとしての風格を感じるシーンだ。
2019年12月の結成直後にコロナになってライブもなかなかできないまま時間が過ぎていったと語る山内。だからこそ今日のような機会は彼らにとっても嬉しかったに違いない。
「早い時間から来てくれてありがとう!」
「むちゃくちゃ楽しむしかない!」
そう話す山内自身が、心からライブを楽しんでいるように見えた。
いつかライブハウスを埋め尽くす観客の耳に、Motherの4人が叩き出す音がしっかりと届く日が来ることを願う。
■Tomato Ketchup Boys
静岡県浜松市出身、2017年に同郷の鈴木(Vo/G)、石川(B/Cho)、武知(D/Cho)の3名で結成。ガレージ、パンク、オルタナを経由したラウドなサウンドにエモーショナルなヴォーカルとメロディでジャンルやスタイルに捉われないボーダレスなロックを聴かせる3ピースバンド。
http://p-vine.jp/artists/tomatoketchupboys 「P-VINE」より引用
プロフィールとしては上記のように多ジャンルにわたる音楽を鳴らすバンドとのことだが、今回のライブを観た限りではいくつかあるジャンルの中でも、特にオルタナ色が強く出ているように思う。下北沢 Meets UKロックという印象もあり、個人的な好みとの相性もあって全体としてはとても聴きやすかった。
トップバッターのMotherがゴリゴリに尖った音を出す一方で、Tomato Ketchup Boysは丸みのある音を奏でている。曲の展開がユニークで、1つの曲の中に複数の曲があるのかと思うほど緩急入り混じった構成に、置いていかれてなるものかと食らいつくように聴く場面もあった。
曲と曲の繋ぎにも工夫があり、間を作らず流れるように次の曲へと引き継いでいく。持ち時間内で1つでも曲をやりたいということなのか、シームレスに繋ぐことで観客を引き込もうという意図なのか。
MCで鈴木は、ライブができることが嬉しいと語る。コロナ禍になってからはライブそのものが貴重になり、ライブをすること自体がバンドの友達と会う機会にもなると。ライブの現場で、それぞれの体調や身の上話をする、いわばバンド仲間同士の「今」を確認する作業みたいな時間でもあると語る。
大好きな仲間たちと再会した今日は嬉しくてずっと笑顔なんだと、笑みを浮かべながら話す鈴木は、とても幸せそうだった。
Motherもそうだが、決してわかりやすく陽気な音楽を鳴らしているわけではないのに、バンド全体からは喜びが伝わってくる。彼らのパフォーマンスはまさにエモーショナルで、そこにはTomato Ketchup Boysの音楽性だけでなく、観客の前で、ステージの上で爆音を鳴らすことの楽しさや、バンド仲間たちとの交流によってもたらされる感情も詰まっていたに違いない。
■THEティバ
本日のメインアクトとなるTHEティバは2018年結成の2ピース・ガールズ・ロック・バンドだ。メンバーは明智マヤ(Vo./Gt.)とサチ(Dr.)のふたり。ステージでも上手に配置し、やや中央を向くスタイルでスタンバイするサチとセンターにてワンピース&裸足でギターを構えるマヤ、という構図。ちなみに今日の二人の衣装は“Monday”MVのものと同じだ。
ライブ開始を告げるマヤのギター、その最初の一音でフロアは一気にTHEティバの世界へと吸い込まれていく。そして何より素晴らしいのが、彼女特有の雰囲気ある歌声だ。どこかノイズをはらんでいるような、それでいて耳心地の良い声はインパクト大。
また、マヤ自身、曲に合わせてぴょんぴょん飛び跳ねたり、時には右足を左足に絡ませながら片足立ちをしたりと、不思議オーラを纏っている魅力的なキャラクターだ。
一方のサチは、細身ながらもダイナミックに体を動かして、しなやかで表現力の豊かなドラミングを披露。マヤと視線や言葉でもコミュニケーションを取りながら、ふたりならではのグルーヴを生んでライブをドライブさせていく。
4ピースのMother、3ピースのTomato Ketchup Boysときて最後に2ピースのTHEティバだったわけだが、ギターとドラムという2つの音でも対バンに決して負けない力強いバンドサウンドを生み出していた。
他の2バンドにも通じるが、彼女たちの音楽にもどちらかといえばオルタナロックの香りが漂っている。中毒性も備わったマヤの魔法の歌声と英語詞を武器に、世界へと飛躍する未来が見えるようだ。
セットリストは『THE PLANET TIVA part.2』のリリースパーティーということで当然本作の曲が中心。EPの最後に収録された“Sunny side”でオープニングを飾るという構成は面白い。“Kids1”から“Kids2”への、音源同様ひとつの曲かと勘違いしそうになるほどに切れ目ない繋ぎは見事だった。
また、本編ラスト2曲“I want nothing to do any more”“Monday”ではサポートとしてHOLLOW SUNSからAyumu Sugiyama(Gt.)とbearwearからkou ishimaru(Ba.)を招へい。4ピース編成での披露となった。寡黙なkouに対して、ライブの流れなどをさりげなく誘導する笑顔なAyumuという好対照なサポート組の存在も光るステージだ。
素晴らしい演奏の余韻を残して去っていったTHEティバに向けて、お約束でも慣習でもなく、素直な気持ちからアンコールの拍手が沸き起こる。再び登場した彼女たちは、ラストを飾る一曲“Summer Ends”を真剣に、そして楽しげにプレイして、リリースパーティーは幕を閉じた。
セットリスト
1.Sunny side
2.Youth
3.Kids1
4.Kids2
5.Leave Me Alone
6.YOLO
7.I want nothing to do any more
8.Monday
EN.
9.Summer Ends
どのバンドもオルタナやシューゲイザー、ガレージ等々ひとつのジャンルには絞れない多様性を持った音楽を鳴らしている。構成人数も表現する音もステージでの立ち居振る舞いも異なる3バンドだが、ライブをする喜び、曲を演奏する楽しさがフロアにもしっかりと伝わってきた。
楽しさをちゃんと音に乗せることができるバンドは強い。これからのますますの活躍が楽しみだ。