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【ライブレポート】2021/4/29 Rhythmic Toy World 「DRAMA Vol.0」

Rhythmic Toy Worldの磯村貴宏(Dr)が「永遠の活動休止」することを受けて企画された、磯村最後となるDRAMAツアー。レーベルメイトが集い対バン形式で行われる渋谷CLUB CRAWLから始まり、ワンマンで東京、名古屋、大阪と回る予定だったが、コロナによる緊急事態宣言発令の影響で大阪と東京の公演が中止となってしまった。

磯村のラストパフォーマンスを観るため馳せ参じる予定だったであろうファンたちだけでなく、行けないけれど自分たちの思いを参戦組に託していた数多くのリズミッカーたちにとって悲しい結果となった。何よりもつらい思いをしたのはRhythmic Toy Worldのメンバーとスタッフだろう。

東京公演については突然の無観客要請に対応すべく、ギリギリまで調整したものの断念との報告もあり、その無念さが痛いほど伝わってきた。

内田直孝(Vo/Gt)の悲痛なツイートに切なさがこみあげてくる。

地方を越えての遠征も厳しい状況で、自分含めて29日と4日のライブに行けないファンにとっては4人のリズミックを見送る術を完全に失ってしまった形になる。それでもこの判断に異を唱える人はいないだろう。せめて気持ちだけでもライブ会場に飛ばそう。そう思っていた矢先に、Rhythmic Toy Worldからのお知らせが飛び込んできた。

29日の夜にインスタライブを配信する、と。

本日のライブは17時開演となっているが、インスタライブは19時前くらいからスタートするとのこと。

内田のツイートがまた泣かせるじゃないか。


当日夜、諸事情あって終盤しかリアタイ鑑賞はできなかったのだが、映像はアーカイブ配信されていたのでそちらをまるまる観ることができた。行けなかったファン、観られなかったファンへの心遣いには感謝しかない。

ということで、渋谷CLUB CRAWLと名古屋CLUB QUATTROのチケットを持っていない人にとって、磯村の勇姿を拝める最後のチャンスとなった今回のライブについて振り返ってみようと思う。なお、インスタライブのためにしっかりと認識できない場面もあり、多少の勘違い等含まれているかもしれないのでご了承いただきたい。

配信はセッティングのタイミングから始まった。メンバーとスタッフが楽器や音を調整し、ステージの上が賑やかな、ライブが始まるちょっと前のこの景色がたまらない。

一度全員がはけたあと、おなじみのSE、BOOM BOOM SATELLITESの“Kick It Out”が流れる中で4人が登場する。

画面に映るフロアには人数制限あるものの、しっかりと観客の姿が確認できる。彼らの拳越しに見るステージがまぶしく感じる。

「渋谷!よく来たね!」
様々な障害や葛藤を乗り越えてやってきたファンに向けて内田は声をかける。今までのように楽しむことができないライブハウスで、それでも「ジャンプだけはいけるらしい」「俺らの曲でジャンプするのは1曲しかない」と伝えて期待感を煽ると「最高の、最高の時間にしようぜ」「Rhythmic Toy Worldへようこそ!」とキメてライブスタート。

1曲目はRhythmic Toy Worldを筆頭にbivouac、アルコサイト、goomieyといったバンドやそのスタッフ、ファンをひっくるめた呼称・チームぶっちぎりを意味する“Team B”だ。

スマホ経由で届けられるインスタライブの粗い映像からでも須藤憲太郎(Ba)の躍動やギターを構える岸明平(Gt)のカッコよさはしっかりとこちらに届いてくる。

《スーパーマンじゃないけれど》の歌詞のタイミングでフロアの皆がポーズを決める姿が、まるで自分もその場にいるような気分にさせてくれた。

ステージまで距離があり、残念ながらこの曲のギターリフで飛びだすメンバーたち変顔は目視できなかったが、心の目にはしっかりと浮かぶ、そんな“Team B”を堪能。オープニングからエンジンはフルスロットルだ。

続く“インスタントラヴァー”では岸の美しいギターリフが鳴り響く。お互い久しぶりでも、ステージとフロアの呼吸もぴったり。四つ打ちによるグルーヴ感が心を躍らせ、体をうずうずさせてくる。インラヴァ×CRAWL名物の天井クルクル照明は、画面からは確認できなかったが現場では光り輝いていただろうか。

「お待ちかね!跳ぼうぜ!」という内田の合図とともに“s.m.p”。冒頭の発言にあったジャンプする曲である。なぜかやたらと磯村のハイハット音が耳に飛び込んでくるが、自分にとって彼が生み出す音は今日が聴き納めになると思うので、ひとつひとつ大事に掴みにいきたい。

磯村の生み出すリズムに合わせて、フロアも須藤も岸も跳ねる跳ねる。楽しそうな皆の姿が嬉しい。インスタライブの小さな画面を突き抜けて、破壊力抜群の内田の声も轟く。青い照明から赤い照明に切り替わる、この曲ではおなじみの名演出も味わえた。曲の〆でチラっと磯村に視線を送るメンバーたち。注目ポイントだらけの“s.m.p”だ。

ここで1回目のMCブロック。今日のイベントに出演したかたこと、bivouac、さらには大阪にいるアルコサイトもこのライブを観てくれていると報告する内田。須藤は、楽しすぎてまだ3曲なのに4弦のチューニングがダダずれだったと笑顔で打ち明ける。すかさず内田が、それはちゃんとしてくれと苦言。

「楽しくて」を言い訳に使えば理不尽なことも成立してしまうことを、以下の具体例とともに伝える内田。

イライラする→岸をボコる→「いや、楽しくて」

「俺そんなことしないもん!」と須藤が返せば「怖い怖い!」となぜかボコる対象にされた岸がおびえる。その際に須藤の表情が気になった岸は「なんであひる口なの?」と問う。ここでトークテーマがガラリと切り替わった。

内田は言う。

「みんなに会わない間、(メンバーとは)嫌でも会うわけよスタジオとかで」
「みんなに届けたくて、映像や写真撮ったり」
「須藤くんのなかであひる口のプライオリティがめちゃめちゃ高くなっちゃってて」
「これは緊急事態よ、宣言出るまでいったね」

このあひる口問題、実はマネージャーのりゅーじを悩ませていた。

“犀日”リリース取材時に素晴らしい写真が撮れており、メンバーも3.7割増しで良く写っていたのだが、須藤があひる口だったという驚愕のエピソードが披露されたのだ…。

まだまだ続きそうなこのトークだったが、後ろからぼそっと声が聞こえてきた。

「すごい久しぶりの有観客のMC…」

声の主は磯村だ。

このツッコミで我に返ったのか、「やるか曲」と内田がひと言。空気一変、ライブ再開だ。

4曲目に披露したのは“さなぎ”。フロアからも手拍子が沸き起こる。リズムを刻む須藤のベース。ギターのような派手さなないかもしれないが、楽曲の血流、いわば「音流」をよくするこういったパートは個人的に大好物だ。1サビが終わったタイミングでメンバーが磯村をチェック、からのワンツー!炸裂。この流れは“さなぎ”のハイライトのひとつ。後半、ためまくったブレイクも含めてドラマチックな展開がたくさんあり、リズミックらしい一曲だ。

“絶対領域”では、曲とばっちりのタイミングで展開する赤と青の照明が美しい。これぞプロのテクニックであり、ステージに立つ者とそれを支える者のチームワークがなせる技。

須藤の激しいヘドバンも炸裂し、髪も乱れるほどだ。内田が中央で堂々と歌い、上手で岸が酔いしれるようにギターを弾き、下手で須藤が暴れまくる、この構図が最高。そして内田後ろに隠れているが、その背中の向こうには磯村がドラムを叩いている。

6曲目はライブ鉄板、必殺の“波紋シンドローム”。冒頭で須藤が咆哮する。

「みんなー!○×■※◎%&$#■※◎!!」

聞き取れない、という点でパーフェクト。内田がネックを手でこするおなじみの仕草もある極上のアッパーチューンにフロアの熱もますます上昇。自身の場所は守りつつノリノリなリズミッカーたちの姿が頼もしい。曲中、突然飛び出した内田の「あーよいシコシコ」という合いの手(?)、その瞬間思わず内田を凝視する須藤の姿が面白い。

終盤の手拍子パート、磯村がスティックを重ねる姿もチラリと映る。なかなかスマホのカメラが彼の姿を捉えるタイミングがないので、貴重な瞬間だ。曲終わりのワンツー!は一種のカタルシスが得られる。

ここで再びのMCブロック。

「こういうのは蒸し返さないほうがいいんだけど」
「さっき聞いた?俺の“あーよいシコシコ”」
「頭おかしくね?」
「何でも許されると思っちゃってるよね」
「久しくみんなと対面でライブやってなかったから」
「みんな許してくれれば大丈夫でしょ、って甘えてたね」

そして自己嫌悪に陥った内田は冗談でこう発言してしまう。
「今日をもってRhythmic Toy World活動休止します!」
横で手を振って「違う違う」とアピールする岸。
「ダメダメダメダメ!」と声を上げる磯村の姿がなんだか微笑ましく感じる。

「それくらいの気持ちでやってます」と内田は付け足すが、シーンとする会場に「なんで?」と戸惑う場面も。

この微妙な空気を切り裂いたのは、須藤による“Let It Be”のアカペラだった。これに乗っかり、ともに歌い始める内田と岸。ビートルズの名曲をデタラメな歌詞で適当に歌う3人に対して「ホントにこれ大丈夫?」と不安な磯村。

スタジオ練ではMCについて説明がないから…と、この展開への戸惑いを見せる磯村に、そういう裏話は知られたくないと困惑する内田だった。

トークは次の展開へと進む。本日行われたbivouacのライブについて、「危なくて」と言及する内田は、ノホリ(Vo)の歌いっぷりをイジりだす。“you're my sunshine”での歌い方をかなりデフォルメする彼に対して磯村が「メロディ変わってる」「原型なくなっちゃってる」「歌詞もめちゃくちゃにしちゃってるし」など、いろいろとツッコミを入れている。磯村が活動休止した後、内田大暴走を止めるツッコミ役のポジションが不在となってしまうのは大きな不安要素に違いない…!

笑いを起こすパートを経て、ここからはまた温度が変わり、内田からの熱いメッセージ。要約含む書き起こしになってしまうが、残しておこうと思う。

「かたこともそうだし、bivouacもそうだし、アルコサイトも悔しがっていた」
「(チーム)ぶっちぎりのLINEグループでアルコサイトは悔しいわ~って(今日ここでライブができないことを)叫んでたよ」

「仲間と一緒にやったことには意味があって」
「ホントは3本ワンマンツアーがあって」
「俺たちのこれまでの音楽人生との区切り、新しいスタートを切ろうとして」
「それだけじゃなくて、バンドマンの楽しいところ」
「俺たちが幸せと感じることをみんなにも見せたかった」

「1つのバンドしかなかったらきっとバンドって楽しくないと思う」
「俺たちは特にそうで、みんなとライブするのが楽しいし」
「切磋琢磨して一緒にライブする仲間とイベントするのが大好き」

「こういうときに、その人がどれだけ愛されていたかが出るんだよ」
「一つ一つの言葉や目や口角で」
「かたこともbivouacもいい顔でライブしてくれてて」
「Rhythmic Toy Worldを大切に思ってくれてありがとうって」

「俺たちの大切なものをそんなにも一生懸命愛してくれてありがとうって」

「それは同時にみんなにも言えることで」
「みんなもバカじゃないから」
「今ライブをやる/やらないをどれだけの人が頭悩ませてやっているか」
「ライブを愛するみんなならわかると思う」

「だからこそ今日ここに足を運んでくれて」
「不安な気持ちをただひとつおっきいもので跳ねのけて」
「ここまでやってきたと思うんだよ」

「俺はステージに立つ人間だけがアーティストだと思ってない」
「楽器を握る人間だけがミュージシャンなんて思ってない」

「それと同様に」
「ライブ会場に足を運ぶだけが」
「そういう人たちだけがファンなんじゃないって思ってる」

「上を見れば空がある」
「下を向けば地面がある」
「鏡を見れば君がいる」
「誰かに見つけてもらえなくても」
「誰かに声をかけられなくても」
「誰と会うことが叶わない世界がやってこようとも」
「君は君自身を君で見つけられる」
「君は君に声をかけてあげられる」

「なにやってんだ」
「今日は頑張ったね、おつかれ」
「髪の毛似合ってるよ」
「今日はいつもより化粧うまくいったね」
「あの人俺のこと好きかもしれない」
「あいつ俺のこと嫌いかもしれない」

「全部自分で自分を見つけてあげられるから」
「だから俺はみんなに会えない日々」
「鏡に向かって毎日声かけて」
「いつか会えるから大丈夫って言い続けて」
「今日まで何とかきたよ」
「みんなもきたね、おつかれ。ありがとう」

「後ほんの少し」
「俺たちの音、受け取って。頼んだ」

長いMC明けからの1曲は“消えて無くなるその前に”。アグレッシブ&下ネタを入れ込んだ“波紋シンドローム”からのギャップが凄すぎた。MC前までの激しいアクトから一転し、派手にパフォーマンスを表現するというよりも歌をしっかり届けるスタイルに聴き入ってしまう。これはいわゆるひとつの賢者タイムというやつか。波紋直後だけに。曲中に訪れる静寂は、ドキドキとヒリヒリが交じり合った独特の緊張感を醸し出していた。

内田は、本心をぶちまける。

「弱音に聞こえたら申し訳ねえけど」
「俺は本気でいつも今が最高だと思って生きていて」
「ライブだって曲だって」
「常に今日が最高なんだって本気で心で思いながら」
「ステージ立ってバンドやってきた11年間、嘘はない。ホントに」
「ただ、こいつが…」

磯村を指す言葉が震え、俯いてしまう磯村。

「いなくて最高を作れるのかって不安でしょうがねえんだ」
「怖くてしかたねえ」
「だけど、約束したから」
「カッコよくあるって」
「負けんなよ、って」
「負けねえからって」
「約束しちゃったからさ」

「俺も人間だし」
「たまんなく弱くなることあるかもしんない」
「すまん。そんときはいっぱい力貸してくれ」
「それくらいみんなを信頼してるし、愛してます」
「ホントに今日は来てくれてどうもありがとう」

そしてひと言、いや、ひと絶叫「あーーーーーっ!」と叫んでから「ライブハウス!」と8曲目のタイトルを宣言。サポートギターとしてbivouacのナオヤがステージで演奏する。内田はハンドマイクを片手に、力の限り歌う。

Aメロパートで磯村の前に立ち、彼と向き合う須藤。この後もことあるごとに磯村のそばへと通う須藤は、グータッチのようなアクションも交わしていたように見えた。ギターを降ろしたことで自由度が増し、フロアを煽りながら楽しそうに内田は歌っている。決して表立った綺麗さはないが、もっと根源的な美しさを感じさせる感情むき出しのコーラスもたまらない。

少し引いて見ると、画面は観客全員が拳を挙げている姿を映し出していた。彼らを通じてメンバーに自分の気持ちが伝わっていることを実感する瞬間でもあった。

内田はいきなりこんなことを言い出す。
「東京も大阪もダメになっちゃったから、シャクじゃん」
「気が早いんだけど」
「今朝、磯くんに11月9日、有給とっとけって言っといた」
「また会えるよ、大丈夫」

突然のサプライズ発表だった。いや、発表というほど正式なものではないかもしれない。しかし彼の口から出た言葉だ。きっと信用できる。

9曲目、“僕の声”。直前に打ち出されたポジティブなメッセージはこの曲にさらなる勢いを与えた。ステージの上で躍動するメンバーが羨ましくなってくるほど、体で思い切り感情を表現したい衝動に駆られてしまう。さよなら磯村公演の最中に飛び出したまた会える磯村情報にいろいろな気持ちが大暴走。

ライブハウスの中だけでなく、インスタを観ているスマホの向こう側にいる人たちの心もひとつになったかのような空気が、そこにはあった。

曲を〆る際の、須藤と岸による足蹴りパフォーマンスもバッチリ。決めるところはキッチリ決めるふたりだ。

10曲目、本編のラストを飾ったのは“VITE”。2020年、コロナ禍において3か月連続でリリースされた新曲のなかの1曲。歌詞を噛みしめながら聴いていると、まるで磯村の活動休止を見据えていたような気さえしてくる。彼がいつその話をメンバーに提示したのかはわからないが、素晴らしい曲というのはいつだってそうなのだろう。現実とリンクするのだ。

《君に出来ないこと》
《僕に出来るかも》
《僕に出来ないことが》
《君に出来るかもしれない》
《それで良いと本気で思えた》
《止まった足元には目もくれるな》
《今日は昨日の未来だ》

10曲の本編を終えあと、声のない手拍子のアンコールに応えてステージに再登場するメンバー。まずは須藤が現れて、「あそぼーや!」コール。

「みんなの心の声、伝わりました!」

お客さんを入れてのライブは2020年2月の名古屋以来ということで、楽しすぎてどうしようと興奮する須藤。続いて現れた岸は「泣いちゃったわ。めっちゃ恥ずかしい、いろいろ思い出しちゃって」と飾らない本音を吐露する。

これに内田は「きっちゃん、びっくりしたよ、だめだよステージでそういうのは」と発言するが、言葉が示す文字とは裏腹に言葉そのものには愛おしさのようなものを感じた。ひとりの大切なメンバーを送り出すライブで感情が動かないほうがおかしいし、それを隠す必要もないのだ。

内田は磯村とのエピソードを語りだす。
「磯くんがいなかったら俺はここまでステージに立ち続けてこれなかった」
「Rhythmic Toy Worldが10年11年続いていたかも怪しい」
「根源は、三重から上京した18歳のとき」
「東京が怖くて」
「人が多くて、一人暮らしも初めてで」
「ひとりで生きる過酷さに気おされていた」

「誰も仲間がいない寂しさに打ちひしがれそうになったとき」
「居酒屋の面接に応募して行った」
「意を決して行ったのに」
「当時そこにいた磯くんは」
「俺の面接の証明写真見て落としましょって言ったんだよ、当時の店長に」

「学校もつまらなくて行き場が欲しかったとき」
「磯くんが旅行に連れて行ってくれたり」
「俺の家に遊びに来てくれたり」
「磯くんちに招待してくれたり」

「いろんなところに連れ出してくれたんだ」

「俺はやっとそれで街を見ることができて」
「外に出ることができて」
「人と接する楽しさを覚えていって」
「友達も仲間も増えていって」
「ライブハウスにも連れて行ってくれて」

「あの日々がなかったら楽しいと思えなかった」
「音楽さえも楽しいと思えなかった」
「磯くんがいて、俺の作った曲を聴いてくれて」
「歌を聴いてくれて」
「いい歌だって、俺うっちーの歌好きだって」
「うっちーのいるバンドに入りたいなって言ってくれて」
「それが叶って」

「背中越しで、面と向かって言うのはあれなんで」
「ホントに感謝してます」

「まだ名古屋あるから終われねえんだけど終わらねえし」
「俺らもこれからまだまだいっぱいライブも決まってるし」
「みんながどこかのタイミングで遊びに来てくれたら一緒に遊べるしね」

「もっともっと楽しい世の中が待ってるはず」
「それまでは良かったら俺たちの歌、音楽、聴いといて」
「なんかの足しになるかわからないけど」
「みんなのこと思って作った曲いっぱい詰め込んでるから」
「よかったら聴いてこれからも日々を生きて」
「また一緒にライブハウスで遊びましょう」

内田からの熱く、丁寧で心のこもったメッセージを受け取ったあとに披露されたラストソングはやはりこれ、“フレフレ”。ファン投票により爆誕したMVによって新たな意味を持った曲だ。

冒頭、アカペラで歌い上げる内田は、そして叫んだ。「おもいっきりその鼓膜に叩きつけてやるよ!!!!」と。

1mmだって悔いを残さずライブをやり切るんだ、楽しむんだという気持ちが伝わってくる。曲中に出現する、磯村による1,2,3,4のカウントにあわせてインスタ上でコメントする人続出。ライブハウスには行けなかったファンたちも一緒になってライブを楽しんでいる、そんな状況がスマホの画面を通じて伝わってきた。

ラストのフレーズ《「今すぐ変わらなければいけない」とか~》でスティックを持つ右手を挙げて立ち上がる磯村の姿が映し出される。同じく右手を挙げる岸、そして両手を挙げる須藤。内田のビブラート&ファルセットも炸裂し、美しくもはかない、磯村にとって活動休止前最後となる東京でのライブは終演を迎えた。

CRAWLで鳴り響く磯村最後のスネア、バスドラ、シンバルの音を噛みしめる。最後、一人ステージに残り長い時間お辞儀をして、両手を合わせる彼の姿を目に焼き付けて。

11月9日、磯村が本当に有給を取れるのかはまだわからないが、そういう話が生まれただけでもただただ嬉しい。自分がもしその日その場所にいられなかったとしても、またこの4人のリズミックで音を鳴らす機会がある、それだけで喜びに値する。

Rhythmic Toy Worldと出会って約8年。『あっ、良いライブここにあります。2013』でのサブステージでのライブが初対面だ。このイベントを主催したグッドモーニングアメリカは活動休止中。この8年間で彼らを含む多くのバンドが解散、活動休止、メンバー脱退といった状況に直面してきた。でもRhythmic Toy Worldにそういった事態は無縁だろうと勝手に思い込んでいたことに気づく。

内田の脱三つ編みで場内を騒然とさせた、BLITZでワンマンした日。
メジャーへ行くと発表したO-EASTの感動的な夜。
インディーズに戻る理由がリズミックらしくて泣けたあの時。

この4人のRhythmic Toy Worldにはたくさんの思い出があるし、メンバーやスタッフ、ファンとともにいろいろな記憶を刻んできた。それはこれからも失われることはない。

いつも優しい笑顔を絶やさず、まるで子供のようにステージで暴れまくる3人を後ろから見守っていた磯村。内田を筆頭にボケまくるメンバーにツッコミを入れる保護者のような存在。

とある取材に同行した際、自由に発言するメンバーの横で控えめに、でもとても丁寧に言葉を紡ぐ磯村の姿が印象的だった。

新しい道が磯村にとって最高の人生になりますように。そしていつかまた、その道がRhythmic Toy Worldと交差することを願っている。

まだ1公演残っているが、言わせてもらいたい。

お疲れ様でした。素敵な笑顔と筋肉とドラムをありがとう。また、会いましょう。


セットリスト
01.Team B
02.インスタントラヴァ―
03.s.m.p
04.さなぎ
05.絶対領域
06.波紋
07.消えて無くなるその前に
08.ライブハウス
09.僕の声
10.VITE
EN.
11.フレフレ


なお、今回のインスタライブはアーカイブが残るとのこと。見逃した方はぜひ実際の映像を味わってほしい。

https://www.instagram.com/tv/COP1klgJ7Vv/?igshid=1hykem40k80n


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