【ライブレポート】2021/4/18 NEWWW vol.20
「シーンを形作る新世代のミュージシャンをピックアップ」というコンセプトで開催された今回のライブ。有観客にもかかわらずチケット代は1000円。敷居を低くして若く才能あるアーティストをたくさんの人に観てほしいという気概を感じるイベントだ。
出演した3アーティスト(illiomote / カメレオン・ライム・ウーピーパイ / a子)それぞれに魅力的だった今回のライブ。当日から一週間経ってしまったが、簡単に振り返ってみたいと思う。
■illiomote
「池袋発のハッピーポップユニット」を自称するYOCO(Vo/Gt)とMAIYA(Gt/Sampl)の二人組だ。
NHKをはじめ、メディアでの露出も増え始めている彼女たち。「シブヤノオト」で共演したSexy Zoneとの絡みもあり、かなり知名度を高めている状況のため、この規模で観られるのも貴重な体験になるかもしれない。
音源だけ聴くとサイケな要素も入ったデジタルなサウンドという認識が強いのだが、目の前でパフォーマンスするふたりからはむしろアナログの香りが漂ってくる。特にMAIYAが奏でるギターから匂う色気が凄い。太くてたくましい音が印象的で、“It's gonna be you”でのカッティングもライブでより映えていてカッコいい。
YOCOの歌声にも迫力があり、高音もきれいに表現されている。こちらも音源とは違った魅力にあふれていた。“夕霞団地”ではYOCOがアコギを演奏しながら歌うなど、アーティストとしての幅広さが伝わってくる場面も。
ステージ後方に映像を投影してのライブであったが、カオスなものからセンチメンタルなものまで、曲の世界観にあわせた演出も見事。
あまりにも堂々としたステージングに圧倒されてしまったが、「意外と来てくれて嬉しい!」「自己紹介の仕方マジわかんない…!」といったふたりのトークに等身大感を垣間見ることができて少しホッとした自分がいる。
また、こんなご時世だからというのもあるが「助け合っていきましょう!」「DMください」と呼びかけていたのが印象的だった。
音楽は先端を走り、デジタルとアナログの両輪でハイパフォーマンスを披露する、人間味あふれるilliomote。音源をきっかけに好きになったユニットだが、ライブを観てさらに好き度が増す、素晴らしくカッコいいステージだった。
セットリスト
1.Sundayyyy
2.In your 徒然
3.??
4.きみにうたう
5.プラナ#15
6.夕霞団地
7.Melancholy
8.What is??
9.Everybody Nice Guys
10.It's gonna be you
■カメレオン・ライム・ウーピーパイ
続いての登場はカメレオン・ライム・ウーピーパイ。鮮やかなおかっぱオレンジのヘアスタイルが特徴的のChi-(Vo.)、さらにベース担当およびドラム&DJ&サンプラー(?)担当のふたりからなるWhoopies1号、2号で構成された謎ユニットだ。
LED眼鏡をかけて歌う姿からは不思議オーラが放たれており、仰向けに寝転びながらMCをするなど、次に何をやってくるのか予想がつかないライブ。カメレオン・ライム・ウーピーパイの独特な世界を徹底的に見せつけてくるのかと思いきや、ハンズクラップやジャンプを促してフロアと一緒に楽しもうというスタイルだったのも予想外。ライブハウスでジャンプしたのは、コロナ禍の世界になってから初めてかもしれない…。
突拍子もない自由な展開もあるので飛び道具的な手法で楽しませるユニットか、と思うタイミングはあるものの、Chi-の力強い歌声に説得力があるので、その自由な展開も調味料のひとつとして味わえる。本質となるのはその音楽や歌声であり、ギミックは本質をより際立たせるための存在として成立している。
Whoopiesのふたりによる演奏も素晴らしく、またパフォーマーとしての顔もあるようで、ライブ中何度もユニークなアクションでステージを盛り上げていた。
映像とのコンビネーションも抜群で、3人が楽しそうにライブをする姿は純粋に観ている者を笑顔にする。ライブというものの魅力がたっぷり詰まった時間だった。
■a子
トリを飾ったのはa子。ギター2名、ベース1名、ドラム1名、キーボード&同期1名という編成で臨むライブだったが、1曲目の冒頭が流れ始めたとたんに機材トラブルが発生してしまい、音が止まってライブ中断。出鼻をくじかれる形となり、なおかつ復旧まで時間もかかり彼女たちにとっては不本意な幕開けになってしまった。
通常、こういうケースではMCで場を繋ぐパターンが多いが、a子チームは一度OFFになった転換BGMを流すことで対応。まだちゃんとライブも始まってはいない状態ゆえ、アーティストの世界を音楽で表現する前に喋りでかき混ぜるのは良くない、との判断かもしれない。これは結果的に正しかったのではないかと思う。
5~6分程度の作業を経て、改めてライブスタート。a子のどこかミステリアスな雰囲気が先ほどまでの不安かつ不穏な空気を飲み込んでいく。彼女のしなやかな歌声を支える楽器隊のレベルも高い。特にベースのグルーヴが素晴らしく、聴き入ってしまう場面もあった。また上手ギターはエフェクター操作がキレッキレで下手ギターはムードたっぷり。個性豊かなチームを従えたa子のライブは見どころも聴きどころもたくさんある。
デヴィッドボウイに影響を受け、“Life On Mars”へのオマージュで作ったという新曲“As I landed on Mars”を披露する際に、「みんなデヴィッドボウイって知ってる?」とフロアに問う。さすがに認知はされていたものの、客層と自分の世代の違いを突きつけられた気がした。
こんな人数を前にライブをするのは初めてだというa子。とても洗練されたサウンドと細やかで繊細な歌声の組み合わせでたくさんの観客を酔わせ、その心を躍らせていたように思う。
新進気鋭のスリーマン。それぞれに特色があり、自分たちの武器を発揮した楽しいステージだった。人数制限などなく、もっとたくさんの観客が自由に楽しめる環境でライブをする彼女たちの姿を観てみたいし、そんな日が早く訪れることを願う。
6月21日にはMusic Club JANUSでilliomoteとカメレオン・ライム・ウーピーパイが相まみえる。現地に足を運べる方はぜひその目で目撃してほしい。