【ライブレポート】2024/8/31 『STROKE NIGHT 2024』@渋谷CLUB CRAWL
台風の影響で開催が危ぶまれた、一年に一度、8月末日に開催されるSTROKE RECORDSの夏祭り『STROKE NIGHT』(旧名ヤンキーナイト)が、無事にスタート。
太っ腹にも今回、無料イベントとなっており、またおそらくRhythmic Toy Worldが翌日の大阪『RUSH BALL』に出演予定だったこともあり、15時開演で18時半過ぎには終わるという変則的なタイテとなった今回の『STROKE NIGHT』。
チケットはソールドアウトとなったものの、交通機関の乱れその他の理由で来られない観客もいて、さらには『RUSH BALL』も開催中止となり、予期せぬ形となった今回の夏祭りだが、中身自体はやはり例年、いやそれ以上に濃いものとなった。
当初はただ観て楽しんで終わりにしようと思っていたが、来られなかった人が少しでも当日の雰囲気を感じられたら、と思い、ざっくりと短いコメントで恐縮だが、記録を残しておこうと思う。
かたこと
Owl City「To The Sky」をSEに登場したfrom湘南、かたこと。
「この日を待ってた!」と威勢よく声を上げて「アイデンティティを愛して」でライブスタート。
この渋谷に湘南の心地よい風を吹かすかのような、清々しいまでの爽やかなポップサウンドが駆け抜ける。また、ロックバンド・かたことが繰り出す疾走感と勢いのあるビートも会場の空気をグッと盛り上げて、トップバッターとして見事な役割を果たしていた。
フロアとの呼吸も合っていて、時には手拍子などをリクエストしながら、観客と共にステージを作っていく感じが伝わってくる。
一年ぶりのレーベルナイトということで、久々に一堂に会する諸先輩たちとの楽屋でのやり取りも楽しんでいる風なのだが、そんな中で「今日はひと味違う。ノホリさんいますから」「親戚の人だ、ノホリさん」とbivouac・ノホリ(Vo/Gt)についてメンバーがひとしきりイジる場面も。大先輩ノホリを親戚のおじさん扱いするなど、相変わらず仲の良さを感じさせるMCも良かった。
また、先ほど記載したかたことを表すフレーズを本人たちも意識しているのか「STROKE RECORDSの、爽やか? 優等生担当? 笑わせんじゃねえよ! いい子ちゃんじゃつまんねーだろ!」というらしからぬ激しい口調でフロアを煽って「もういいや」へと突入する流れは、カッコいいというよりも微笑ましいシーンとして印象に残った。
兄たちに可愛がられるだけの弟じゃない。自分たちだってロックバンドとしての意地があるという、そんな気概が彼らをまた成長させていくのではないだろうか。
セットリスト
アイデンティティを愛して
恋をして
夏めく全て
Letter Song
もういいや
Fancy Girl
夏風、恋する君と私
goomiey
「私が一番、STROKE RECORDSが大好きだと思ってます」と宣言する平山舞桜(Vo/Gt)。その溢れ出るレーベル愛がそのままライブパフォーマンスへと反映されるような熱のこもったステージを展開していた。
また、鎌田あかり(Ba)、おり(Dr)のふたりからこぼれるスマイルがより一層ライブをピースフルなものにしていたし、決して大きなアクションはないものの、3人が奏でる音のまとまりがとても美しく、聴き心地抜群のバンドサウンドが最高。
オープニングの「ハナコトバ」や、「全員で全力で楽しみましょう!」と声をかけての「マガジン」も良かったが、特に、そのタイトルからはイメージしづらいしっとりした曲調で届けられた「ロックンロール」では、曲前に「あなたの信じる大好きなバンド、大好きな曲、大好きなロックンロールを絶対に裏切りません」と告げていたり、《すぐ結論ばっかり求めちゃう君の悪い所だよ》という歌詞も含めて、先日ひと騒動あったアルコサイトが頭に浮かぶようなメッセージソングのようにも思えてきて、グッときてしまった。
レーベルを担うりゅーじやCRAWL、さらに社長、そして観客への感謝を述べながら、同じレーベルのバンドたちに対する言葉を添える平山。喧嘩しちゃうほどのライバルや、歌で救ってくれる先輩に交じって「「ダメなことを“ダメだよ”って実体験で教えてくれるロックンロールな先輩がいて」と、これもまたアルコサイトを指した言葉なんだと思うが、そういう部分にもgoomiey、そして平本のSTROKE RECORDS愛が滲んでいたように感じた。
そんなドラマチックな流れから、「23歳の私が今の気持ちを書いた曲を」と告げてラストナンバーを披露しようとするも、「カポ間違えちゃった」と仕切り直し。カッコよく決まらない部分も含めての愛らしさだ。
「カッコ悪いけど、自分がカッコいいと思うことをずっと続けていきたい」
平本はそう言葉を足して、最後にキッチリと「レイジーブルー」を披露してライブを締めくくった。
アルコサイト
JET「Are You Gonna Be My Girl」を背に、堂々登場のアルコサイト。
触れずにいてもいいのだが、触れないわけにもいかない、というところで、アルコサイトは先日、ライブに出演した3バンドのメンバーで訪れた飲食店での出来事がSNSで大炎上。
私がそのSNSを見たときはまだボヤ程度だったのだが、わずかな期間に、STROKE RECORDSに関心ある人ならおそらく知らない人はいないくらい、それこそ「アルコサイトって誰?」という層にまで知れ渡ってしまうほど拡散され、その3バンドは様々な非難の言葉を浴びた。
私自身単なる外野であり、その場にいたわけでもなく、映像があるわけでもないというところで、ただ静かに事の行く末を見守るしかないな…というのが正直なところだった。(実際トラブルが生じたなら、飲食店含めた当事者同士での解決が望ましい)
とまあ、そんな炎上を経てこの『STROKE NIGHT』にやってきたアルコサイトは、私の知っている、パワフルでやんちゃで激しいことこの上ない、エネルギッシュな彼らそのままの姿で、弾けるようなライブを見せつけてくれた。
彼ら自身、反省すべき点もあるだろうし、ネットに流れ出たことすべてを事実とされてしまう事への悔しさもあっただろう。ちょっと冗談ぽく「全部やってそうな俺らが悪いんやけど」という言葉を使うことで、ともすれば冷え込みかねない空気を温めながら、北林(Vo/Gt)は彼らしい言葉遣いで、この騒動を経て感じたことをしっかりと目の前の観客たちに伝えてくれた。
そして、自分たちを(盲信的なことではなく)信じてくれる人たちに向けて精一杯の気持ちを込めて、一曲一曲をぶちかましていく。
30分のライブのために大阪から10時間かけてやってきたアルコサイト。生半可な気持ちでやってるわけじゃないことは、この端的な数字からでも伝わってくる。
レーベルトップであるりゅーじに向けて「今回めちゃめちゃ迷惑かけてるから俺ら!」と話して「好きじゃない」を演奏。ライブ中に何度も「好きにやろうぜ!」と、ライブを自由に楽しんでほしいというメッセージを伝えていたのも印象的だ。
今日のチケットがソールドアウトしたことに触れた北林は、無料だからじゃなく、それぞれのバンドが一年頑張ったからだと思いたいとも語っていた。
「ラブソング」を演奏する前には、「目の前にいるお前に歌う」「来たくても来れんかった、そいつにも届くように歌う」と語っていたが、
《嫌いな奴はどうでもいい》
《でも好きな奴には目を見て伝えたい》
こんな歌詞に触れると、やはり炎上騒動を思わずにはいられない。本人の話を聞くまでは判断保留。芸能ゴシップから子育てまで通じる、とても大事なことなのかもしれない。
「Aメロなんやったっけ?」と歌詞をすっ飛ばしながら「愛してあげるよ」を熱唱する北林を見て、なんだか安心した。
とにかく、会場に来られなかった人に伝えたいのは、アルコサイトは元気だということ。むしろパワーアップしているかもしれない。9月30日には下北でワンマンも控えているということで、彼らの最新の姿を目撃してみてはいかがだろうか。
セットリスト
1.髪を切って
2.最後の恋
3.好きじゃない
4.メンヘラになっちゃうよ
5.ラブソング
6.愛してあげるよ
7.TEENAGE KICKS
bivouac
そもそも他のSTROKE RECORDS所属バンドと比べ、ライブ自体が貴重な上に、この『STROKE NIGHT』を欠席しがち(本人曰く3本中2本飛ばしている)なノホリ(Vo/Gt)率いるbivouac、本日は無事参上となった。
他のバンドがサウンドチェック後、一度ステージから去ってSEと共にあらためてステージに登場する演出をする中で、唯一bivouacだけが、サウンドチェックからそのままの流れでライブへ。
「かたことが紹介してくれました、親戚のおじさんです!」
ノホリがそう叫ぶと「Mr.Answer」でライブスタート。そのまま間髪入れず「you're my sunshine」と冒頭からメロコア色強めのアグレッシブなナンバーでフロアを盛り上げていく。
オープニングブロックが終わると、ササキヒロシ(Dr)がCLUB CRWAL19周年のお祝い含めた感謝の言葉を、途中滑舌がふわふわする、彼らしい喋りで届けてくれた。
まさに緊張と緩和、この空気の振れ幅がbivouacの楽しさの一つ。
一方で、ノホリは冗談ぽく笑いを交えながらも、アルコサイトに向けて「目に見えて大事なものがわかっと思う。今回はそれでよし!」とエールを送りながら、「四捨五入すると50歳になる」「炎上したって、歳取ったって、どっからでも始められる」と語って「はじまりのうた」を披露。
あと数年で50歳を迎えようかという、コンスタントとは言えないかもしれないがそれでもステージに立ち続けてきた男が歌う言葉には、やはり重みがある。伝わるものがある。逆に言えば、ノホリが、そしてbivouacがステージから届けてきたものに説得力があるんだと、彼らを見続けてきた観客にはわかっているんだと思う。
その後も「アステロイド」「home」を立て続けにパフォーマンス。
そして、かたことやリズミックでのギターまわりで忙しいというサトウナオヤ(Gt)のため、早めに切り上げて転換時間をゆっくり作ってあげようとジョークを飛ばしながら「でっかい音で『大丈夫』って言って終わろうと思います!」と語ると、最後の曲「僕に告ぐ」を演奏。
この曲でお馴染み、ノホリの絶叫「嘘じゃない!」も飛び出し、ザ・bivouacをたっぷり堪能した30分。かたことではないが、個々のライブをなかなか追いかけられていない自分にとって、年に一度、夏休みに観るbivouacは親戚のおじさん(甥っ子)に近い存在かもしれない。今年も元気にステージに立つ4人を観ることができた、それだけでも大満足なのだ。
Rhythmic Toy World
トリを務めるのはもちろん、STROKE RECORDSの長男であるリズミックだ。先述した通り、出演予定だった『RUSH BALL』が台風の影響で開催中止になってしまった。その悔しさをポジティブに切り替えるべく、今日のセットリストは『RUSH BALL』のために用意していたものだそうだ。内田(Vo/Gt)いわく「これで今日と明日、2本分やったことになる」とのこと。
そんな『RUSH BALL』IN CLUB CRAWLは《飛び立てGO》の歌詞で始まる「BOARD」からライブスタート。いくつか頭をよぎるオープニングナンバーの候補から完全に抜け落ちていた意外過ぎる選曲に、俄然興奮度アップ。
ライブで聴くのも久しぶりな気がするが、やはり身体は覚えているもので、自然と反応してしまう。
2曲目には先日のGIFTMENライブでも披露していた「インスタントラヴァー」。そして3曲目は「ゴーストタウン」と続く。
同曲での
《何か虚実か 何が事実か てめえの目見開いて探してみな》
《正義のために致し方ない 悪とみなせばリンチも止む無し》
という辛辣な歌詞は、やはりアルコサイトら3バンドのネット炎上を連想せずにはいられない。
途中のMCでは、レーベルメイトについてひと言ふた言、コメントを寄せる内田。
かたこと:長尾拓海(Vo/Gt)は(荒ぶった言葉を使ったけど)育ちの良さが出ちゃっていて、(乱暴な言葉を発する)口と魂一致していなかったね。
goomiey:うちのラインナップ見て。あいつら(goomiey)のおかげでちょっと綺麗な感じ。
アルコサイト:カッコいいことは知っている。ステージで語るタイプで、俺の信じたカッコいいアルコサイトのままでいてくれた。
bivouac:最高を更新してくれてありがたい。四捨五入で50歳…ちょっと食らった。
本編最後、「青と踊れ」の前には内田らしいMCも。
「一年を通して皆で集まれるこの日が俺たちにとってすごい大切。その日にいてくれてありがとう。人を、誰かを、信じるってことは大変なこと。積み上げてきたものがあるから信じられる。世界が俺たちの弟妹を傷つけるようなことがあったら、俺はずっと抱きしめてやる」
レーベルの先輩として、ずっと見守ってきた後輩たちを信じ、受け止めてやるんだという言葉は、今日このタイミングで開催されたSTROKE RECORDSのレーベルイベントという場で、これ以上ないほどにふさわしい、力強いメッセージだったのではないだろうか。
身内だから信じるんじゃない。身内の距離感で、その言動、音楽、ライブを見続けてきたからこそ信じられるし、信じるに値するやつらなんだという意味合いだと受け取ったが、いつ何時、100%とはいえない「事実のようなもの」に振り回されるかわからない私たち自身にとっても大事にしたい、そんな言葉だった。
アンコールでは、CRAWL19周年をお祝いすべく、「ライブハウス」を披露。その際、「みんな走り回ってもらっていいですか?」とフロアへサークルモッシュを促すと、間奏時に大勢が左回りでダッシュ。こんな景色も、(私が観た)Rhythmic Toy Worldのライブでは久しぶりだ。
そして今日の出演者全員をステージに呼び込んで、「我々のテーマソング」と内田が語る「Team B」を『STROKE NIGHT 2024』最後の曲としてパフォーマンス。曲名の元となる「チームぶっちぎり」というフレーズを耳にする機会も少なくなった気がするが、各バンドのボーカルがマイクを取って歌うパートもあり、またステージ上にいる皆が笑顔で過ごしている様が実に幸せそうで。
STROKE RECORDSらしい、最高にはちゃめちゃでHAPPYなイベントはこうして幕を下ろした。
セットリスト
1.BOARD
2.インスタントラヴァー
3.ゴーストタウン
4.とおりゃんせ
5.僕の声
6.青と踊れ
EN.
7.ライブハウス
8.Team B
今回のレーベルナイトは、例年とは少し趣が異なる部分もあったと思う。それはひとつのトラブルが起因するものではあったが、そこから学びを得たこともまた事実だろう。
それぞれのバンドは、自身のワンマンや企画、あるいはイベントで素晴らしいライブを繰り広げているだろうが、『STROKE NIGHT』でしか観られない顔があるのも、このイベントの醍醐味のひとつだ。
また2025年、この賑やかな夏祭りが無事開催されることを祈りながら、それぞれ1年、しっかり生き延びて、20周年を迎える渋谷CLUB CRAWLで再会できたらと思う。
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