【ライブレポート】2022/10/15 JUNE ROCK FESTIVAL 2022@CLUB CITTA'
機会をいただき、JUNE ROCK FESTIVALに足を運んでみた。お世話になっている方々が関わっている南無阿部陀仏、そしてナギサワカリンのライブを観ることが大きな目的。さらに言えば、大好きなバンド・NIYOCOとの接点もあるという注目株のサバシスターも気になっていた。
せっかく行くなら最初からいろいろなアーティストを観てみようと思い、オープニングアクトからラスト前の四星球まで、食事休憩など挟みながら全17組中14組のアーティストをチェック。
各アーティスト2~3ツイート分くらいのボリュームで振り返ってみよう。
サバシスター(OP ACT)
オープニングアクトとは思えないほど会場を盛り上げる。可愛らしさと力強さを併せ持つなち(Vo/Gt)を筆頭に、るみなす(Gt)、ごうけ(Dr)、にサポートベースを加えた4人編成のサバシスター。2022年3月結成というルーキーながら、頼もしいまでのライブパフォーマンスであっという間に引き込まれてしまった。
バンドマンや観客からアツい支持を受けるフェスのオープニングアクトというプレッシャーに押しつぶされることなく、笑顔も交えながら楽しそうにプレイする姿が気持ちいい。
ライブハウスに行くと、しょっちゅうジュンさん(JUNE ROCK FES主催者)がいて、イチ観客として一緒にライブを楽しめることが嬉しい、というMCの後で「伝わりますか?」とフロアに確認したり、ライブごとにセトリ等を記載したフリーペーパーを作成していて、今日も配布中だという告知をしたりと、バンドを立ち上げて間もない時期ならではの初々しさもいっぱい。
“幸せな生活の中にも、ちょっとは苦しいことがないと辻褄が合わない”ことを歌ったという「タイムセール逃がしてくれ」、そしてラストとなる「サバシスター's THEME」でオープニングアクトの重責をしっかりと担って、清々しくステージを去っていったサバシスター。
来年はオープニングではなくメインで堂々たるライブをしていてもまったく不思議ではない、そんな雰囲気を纏っていた。
ビレッジマンズストア
本編の開幕アクトを堂々務めたのは、ビレッジマンズストア。メンバー全員赤いスーツでド派手にキメた彼らは、「日本一昼間に会いたくないバンド」と自己紹介。リハの時点で水野ギイが「(メインステージとは別に)CHAOS STAGEってのがあるらしいですね!残念でした、こっちがCHAOS STAGE!」と混沌を予言する煽り通り、豪快なライブをぶちかます。
一斉にヘドバンが発生するなど、ワンマンライブかと思うほどにフロアとの息もピッタリだ。
皆しっかりと感染症対策を守ったうえでのライブなのだが、なんだかコロナ前を思い出すような激しさが伝わってくる。
JUNE ROCK FESへの深い愛が溢れてしまった水野。2021年の同フェスに呼ばれなかったことは一生忘れないと言い、さらに、大好きなフェスだからこそ、カッコ悪いバンドが出るのは許せないとも語る。そして来年も出られるように、一年かけてカッコいいバンドになると力強く宣言する。
そんな思いを全身で表現するかのようなライブ終盤には、まさにカオスの名にふさわしい暴れっぷりを見せるメンバー。ステージ上のトラブルにも即応できるよう、ローディチームがズラリと袖にスタンバイしており、その景色自体が胸を熱くさせてくれた。
プッシュプルポット
CMなどで目にする印象から、勝手に爽やかなギターロックを奏でるバンドだと思い込んでいたが、今日のJUNE ROCK FESに名を連ねるにふさわしい、パワー漲るライブパフォーマンスにビックリ。山口大貴(Vo/Gt)は、金沢発であることを何度もアピール。地元を背負う気概を感じさせてくれた。
MCでの語りだけでなく、曲中にもメッセージを挟み込むなど、溢れる思いを抑えることなく伝え続け、「観てくれて、出会ってくれてありがとうございます」と話す。主催・ジュンさんへの感謝の言葉も忘れず、最後から最後まで泥臭いまでに実直なライブを繰り広げていた。
南無阿部陀仏
銀杏BOYZ「BABY BABY」をSEに登場することからもわかるように、暑苦しいまでのエネルギーを解き放つ、怒涛の勢いで送るライブに興奮。
冒頭から「若者よ、耳を貸せ」をワンコーラス、メンバー全員肩を組んでアカペラで歌ってからのライブスタート。こってりした油ギッシュなパフォーマンスでありながら、どこかポップさも兼ね備えている。
最高のラブソングでもある名曲「5時のチャイム」には、フロアの皆が歌に吸い込まれていくようだった。
「今日が最後だと思って、1秒1秒大事に歌を歌いたいと思います」と語ったまえす(Vo)の、まっすぐ届く歌声が心に染みるステージだった。
セックスマシーン!!
観た者すべてを笑顔にするような、エンターテインメントを体現するセクマシのライブは今日も素晴らしかった。リハからエンジン全開。森田剛史(Vo/Key)は「リハーサルは、俺とお前のギアを合わせるためにやるんだ!」と叫び、メインステージから2階席まで往復ダッシュし、「これがロックバンドのリハーサルだぜ!」と言い放つ。
本編でも言葉でフロアを笑わせ、歌で熱くさせる。この両輪が見事にかみ合ってグルーブを生み出していた。
「腕組みやめろって!」とクールに鑑賞する観客に語りかけたり、JUNE ROCK初登場ながら観客たちの楽しむ姿に感じ入った森田が「来年も出演決定、俺の中で」「(JUNE ROCK2023)第1弾アーティスト!」と宣言したり、縦横無尽のトークを繰り広げる。
ライブ後半には「金払ってんだろ?(CHAOS STAGE含め)全部観たほうがいいって!」と、金言を残した森田は、楽器セッティングのため、ライブ告知で繋いでほしいと日野亮(Ba/Key)に依頼。これを受けて日野が淡々とライブ告知を始めると「そんなんで来るわけないでしょう!!」と森田からダメだし。思わず笑ってしまいながらも、ちょっとハッとさせられる瞬間でもあった。
これに日野がすかさずスイッチを入れて、絶叫しながら告知し直していたのも素晴らしいコンビネーション。
「くれぐれもご無事で」と観客を気遣い、最後までハッピーを振りまいていたセックスマシーン!!だった。
カザマタカフミ
3markets[ ]のボーカル・ギターであるカザマタカフミによる、CHAOS STAGEでのアコースティックライブ。メインステージでの迫力ある音とは違う、優しく反響するナチュラルな音が耳心地いい。
2021年のJUNE ROCKの日に彼女と喧嘩して振られたとか、プロポーズに失敗したといった自虐ネタのトークで笑いを生んだり、まるでギター漫談かと思うくらいの巧みな話術を演奏中でもガンガン放り込んで場を盛り上げたり。
音楽だけでなくトークでも豊かな時間を作るカザマタカフミのライブをコントロールする手腕に脱帽だ。
忘れらんねえよ
「俺よ届け」「Cから始まるABC」「北極星」といった名曲をズラリ並べてのライブ。オメでたい頭でなによりから赤飯を招いてのコラボも披露するなどさすがの盛り上げ上手だ。「フェスならVaundyやマカロニえんぴつ、Saucy dog、ひとつくらいいてもいいでしょ。…爽やかのかけらもないメンツ!ライブハウスを巡って珍獣だけを集めたメンツ!最高!」「持ってるやつが歌っても嫌だ。持ってない奴が一瞬輝くのがロック!」と、らしさ全開MCも爆発。
「打ち合わせ通り」を合言葉に場内を暗転させたり奇跡を起こしたり。また、「アイラブ言う」では、フロアでライブを観ているジュンさんへの感謝を告げつつ、「みんなもジュンさんのほうを向いて」と指示出し。観客も気が利いていて、フロア真ん中に立つジュンさんを残して全員が座り、柴田とジュンさんがステージとフロア、それぞれの立ち位置で向かい合うという名シーンも誕生。
ロックとジュンさん、会場に足を運んだ観客への愛情たっぷりなライブだった。
あの(弾き語り)
TVで活躍する姿は存じているものの、アーティストとしての姿を目の当たりにするのは初めて。画面上で見かける、捉えどころのない不思議なキャラクターはそこに存在せず、しっかりと丁寧に歌を届ける姿があった。
鋭くて繊細な歌声がとても印象的。数日前に右手を骨折してしまい、せっかく練習してきたギターも弾くことはできなかったが、これで出演できなくなってしまうのは悔しいということで、ギターは弾けずとも歌うためだけでも、と出演決行。
トークではどこかふわふわした印象はありながら、それでもアーティスト・あのとしての矜持と意地を感じさせる、迫力のライブだった。
メメタァ
プッシュプルポット同様、こちらも勝手に綺麗なギターロックをイメージしていたが、いい意味で裏切られた。音源では綺麗な印象を持つが、ライブはもっと生々しかったのだ。
西沢成悟による気合いと迫力のボーカルが強い。彼の歌声に強度たっぷりなバンドサウンドが絡み合って、うねりを生む。ストレートに届く歌の合間に西沢による荒々しい言葉の絶叫が挟み込まれ、一曲のパフォーマンスが立体的になって響き渡る。
「どこで見てもいいし、どういう動き方でもいいし。全員が認められる場所。会場が大きくなってもそれは変わらないんだなと思った」という西沢の言葉に、フェスと銘打ってはいるが、ここは俺たちの大好きなライブハウスだ、という思いが伝わってきた。
ナギサワカリン
以前観た配信ライブで、圧倒的迫力の歌声が大きな武器、という印象をもったナギサワカリン。彼女の生のステージを観るのは初めてだったが、こんなに美しい歌声も出せるのか、という驚きがあった。
鼓膜を震わす怒涛のボーカルは、やはり配信よりも迫力がある。加えて、鼓膜を抜けて心を震わす、感情を乗せた美声がまるで自分を包み込んでくれるような温かさも感じさせてくれた。
会場のあちこちに視線を配り(フロアだけでなく上の通路で見ている人たちにも強い視線を送っていた)、一人ひとりの観客と1対1で対峙しているような空気を生み出していく。
カッコよくて美しい歌声がめちゃくちゃ気持ちいい。弾き語りのギターサウンドとの相性も抜群なその宝物のような歌声を、来年はぜひメインとなるJUNE ROCK STAGEで轟かせてほしいと思う。
バックドロップシンデレラ
諸事情でラスト2曲しか聴くことはできなかったのだが、むしろ2曲だけでも楽しめて良かったと思えるようなライブ。観客それぞれが、その場から移動することはなくとも自由に楽しんでいる姿が、バクシンのライブの楽しさを明確に表しているように思う。
ラストナンバーは「さらば青春のパンク」。バクシン特有のリズムを浴びていると、勝手に体が踊りだしてしまう。これぞライブハウス!という感覚を味わえる最高の時間だ。
後藤まりこアコースティックviolence POP
彼女のライブを観るのは初めて。柔らかかったり鋭利だったり、あるいは時にコミカルだったりパワフルだったりと、コロコロとその表情を変える歌声がユニークで引き込まれる。
その変幻自在ぶりが後藤まりこの魅力のひとつかもしれない。
MCではTinderアプリでの自身の最新出会い事情を語って笑いを誘いながら、歌のパフォーマンスでしっかりと聴かせる。そんな振り幅の豊かなライブとなっていた。
アシュラシンドローム
本日が初鑑賞。バックドロップシンデレラからの流れがピタッとハマっていて気持ちいいなと思っていたら、今日のサポートドラムはバクシンの鬼ヶ島一徳ということで納得。
ここまで、情熱と勢いが荒々しく襲い掛かってくるようなバンドが続いていたが、アシュラシンドロームは荒々しさの中にキレ味があってどこか洗練されたサウンドを感じる。あとで青木亞一人(Vo)のプロフを見るとルーツとしてTM NETWORKの名前があり、再び納得。美メロでダンサブルなラウドロックに体がうずく。
1年ぶり(?)という久々のライブで歌詞を忘れたり早々にスタミナ切れを起こしたりするも、楽しそうにパフォーマンスするメンバーの姿が最高。そんな彼らのアクトに大興奮しながら、手で「山」を作って踊ったりヘドバンしたりする観客も最高だ。
詳細はネットで、と前置きしながら、2023年4月21日の渋谷O-WESTで本格再始動することを発表。再び歩み始める彼らにとって、今日のライブは手ごたえを感じるような時間だったのではないだろうか。
四星球
リハで照明にリクエストを投げると照明さん不在(トイレ離席中)。こんなおいしい状況をスルーするはずもなく、照明イジリをしてひと笑いを生むなど、ライブ前から会場を温めていく。
終わり方のリハーサルも実施。モリス(Dr)がステージをはけると代わりに虎柄の段ボールが出てきて「モリスの川崎が大きくなっチッタ」と北島康雄(Vo)がキメ台詞を吐くという段取りを確認し、いざ本番へ。
オープニングでまさやん(Gt)が見覚えのあるビジュアルで登場。イベント主催者・ジュンさんにかけて「ペ・ヨンジュン」のコスチュームだ。「ジュンさんがギター弾きますよ!」などとイジリ倒す。そんなコントを経て「今からここ(JUNE ROCK STAGE)をCHAOS STAGEにさせてもらいます!」という北島の号令で「クラーク博士と僕」がスタート。
フロア最前でライブ映像を撮影しているチームをステージに上げて「なんかやれ!」と煽り、果敢に挑戦するカメラマン。スタッフでも突然演者側にジョブチェンジさせられるという、一瞬の油断も禁物な四星球のライブだ。
今日の出演者たちが、チッタは自分たち史上最大キャパだと言っていたことに触れる北島。かつて自分たちもそうだったと過去を思い出しながらも、「広い会場だけど、ジュンさんの大好きな小さいライブハウスにさしてもらいます!」と、臨時CHAOS STAGEの名にふさわしい盛り上がりを演出する。
「生まれたての馬が立ち上がる瞬間に立ち会う」というフレーズがパンチ力をもつ楽曲では、子馬に扮した北島がよろめきながら立とうともがく。横たわる北島が見られるようにと、観客たちは自然としゃがんで視界を広げるファインプレイ。
いつか『Love music』で森高さんの前で歌いたい、という「君はオバさんにならない」をはじめ、「薬草」「妖怪泣き笑い」「HEY!HEY!HEY!に出たかった」といった名曲たちを立て続けに演奏し、人生の喜怒哀楽がしみ込んだ、日本一のコミックバンドたるライブアクトを見せつける四星球。
イベント主催のジュンさんについて、「仕事が終わったらライブハウス行って、また翌日仕事に行っている…みなさんと同じ」と話す北島は、さらに今日の出演者がジュンさんに感謝の言葉を連呼していたが、あれは観客にありがとうと言っているようなものだ、と告げて出演者の思いを代弁し、観客を包み込んでいった。
トークが長引いたため、当初のセトリを急きょ変更して最後の曲を削ってのライブとなったが、リハで確認した〆の流れもきっちり再現…と思いきや、ステージからはけたモリスに代わって登場したのは、法被を着たバクシン・でんでけあゆみというサプライズなオチを用意。
最後まで、人を楽しませるために労力を惜しまない、そんな四星球の愛情が伝わってくるライブだった。
オープニングアクトのサバシスターから盛り上がり、本編トップバッターのビレッジマンズストアの時点でワンマンライブ並の熱が生まれたJUNE ROCK FESTIVAL 2022。主催者への感謝に溢れていたアーティストたちはもちろん、どう行動したらこの場面でベストな演出になるのかしっかり考えていたり、出演するすべてのアーティストに対してリスペクトを感じさせてくれたりと、観客たちの振る舞いも素晴らしい。
そして、愛情たっぷりな会場内の装飾と、それらを嬉しそうに撮影する観客たちの姿。これらすべてが、JUNE ROCK FESTIVALがどれだけ愛されているかを物語っているように思った。
ライブハウスで踏ん張って、日々歌い、演奏するアーティストたちにとってのひとつの目標のようなフェス。勝ち負けや売れる、売れないとはまた違う視点で、純粋に音楽を楽しめる場所。
また訪れたいと思わせてくれる、濃密なフェスだった!