【ライブレポート】2021/4/2 AFTER SQUALL 「PINKY DINKY TOUR "東京編"」
AFTER SQUALLのアルバム『THE PINKY』レコ発ツアー「PINKY DINKY TOUR」、その"東京編"となるライブが高田馬場CLUB PHASEで開催された。
当初のスリーマンから直前に1バンド追加され、トータル4バンドによるレコ発イベントとなった夜を振り返る。
■ココペリドット
トップバッターはココペリドット。2014年に結成し、2016年に現バンド名にて活動を開始した3ピースのロックバンドだ。本来は4ピースであったがライブ当日、twitterにてギターのまっちー。が前日の4/1に脱退したことを発表。事後報告になったということは本人たちも想定外だった部分があったと思うが、そんな状況を感じさせないパフォーマンスを披露した。
メンバーは表情豊かにドラミングをする大瀧凱(Dr.)、木目ベースを駆使して小気味いいリズムを生む刻むセキガハラセキヤ(Ba.)、そして気持ちのこもった日本語ロックを歌う五十嵐健宏(Gt/Vo.)の3人。
コーラスもなく、ステージ上での派手なアクションもないシンプルな構成となっていたがその分、詞の世界をしっかり伝えようという意思も感じる。曲と曲をシームレスに繋ぐ演出もハマっており、また五十嵐の声も良く出ていて聴きごたえのあるライブとなっていた。
MCで五十嵐は、今までたくさんのものを失ってきたと語る。果たせなかった約束や叶わなかった願いもあるが、それを忘れることはできない、と。それを持っていたときの自分が誇らしいと、胸を張っていた。
4人から3人になったココペリドットだが、4人のときの記憶も財産にしてこれから堂々と進んでいく、そんな宣言のようにも感じるメッセージだった。
■MACVES
続いては名古屋発の4ピースロックバンド・MACVESの登場だ。高野裕貴(Vo.)がポケットに手をつっこんで、ふてぶてしさを感じさせながらステージに現れる。そしてフロアにいる観客をゆっくり見渡し、「We are MACVES!!」と叫んでライブスタート。
棚瀬洵(Dr.)の短パン姿に一瞬目を奪われるも、すぐさま彼らの音楽に心を支配されてしまった。レゲエやSKA PUNKの要素たっぷりで陽のオーラがとてつもない。ゆっくり大人見するつもりが、気づけば裏打ちのリズムに乗せられて踊ってしまっている自分がいる。
高野のボーカルには華があり、かつてのNiw! Recordsを彷彿とさせる軽やかさも備わっている。サウンドを引き締める棚瀬の迫力あるドラミングも見事。高野と野田隆星(Gt.)による掛け合いでもライブを盛り上げ、とにかく楽しい空間を作り出していた。
もともとのベースである神谷は4月から正社員(昨年ご結婚&今年一児の父に)ということでバンド卒業が決定。今日のベースはオオハシタクヤがサポートとして参加していたが、高野とは同じ中学の先輩後輩という間柄とのこと。
神谷の出演が難しく今日のライブに出演できないかもしれない、という状況になったものの、オオハシから「俺がやるからお前ら出ろよ!」とLINEが来たというエピソードを披露。「株上がっちゃう」とオオハシが照れると「株上げまーす♪」と高野が返す。ライブパフォーマンスだけでなくトークでも陽オーラ爆発。このやり取りでも関係性がにじみ出ているが、立場としてはサポートでもステージでの弾けっぷりは4人目のメンバーと言っても差し支えないほど。
SKA PUNKという個人的に好みのジャンルであることも大きかったが、高野の歌声やステージングはもちろん、MACVESとしてのグルーヴが素晴らしくて最初の一音から最後まで終始笑顔で楽しい時間を過ごさせてもらった。
こういう突発的な出会いがあるからライブハウスはたまらない。
■See You Smile
3番手は2016年に結成された東京発のPOP PUNKバンド・See You Smileだ。笑顔が似合うRui(Vo.)を筆頭に大量の髭も印象的なEnomoto(Ba.)、MACVESに続いての短パン姿のドラマー、Girioda(Dr.)など個性豊かなメンバーが揃っている。
サウンドもキッチリと仕上がっているように感じ、貫禄を漂わせていた。スケール感のある楽曲たちが披露され、しっかりとまとまりのある音楽が小さなライブハウスを突き抜けて大きなフェス会場に鳴り響く、そんなイメージが湧くパフォーマンス。
弦楽器隊が3人いるステージは見た目も豪華。高田馬場は初めてだと言うが、「お客様感」など微塵も見せず、どっしりと構えて次々と曲を演奏していく。そんな彼らにフロアも乗せられて大いに盛り上がる。先ほどライブを終えたMACVESのメンバーが手を挙げて楽しんでいる姿も。
コロナ禍でステージとフロア、ともにいろいろと制限されている中でのアクトということで、「自分のできる範囲で気持ちよくなって帰ってください!」と告げるRui。
かつてのライブハウスであればシンガロングが響き渡っていたであろう、観客を巻き込むポテンシャルを持っている。まだしばらくは観客が声を出して楽しむことが難しい状況だが、ある種の逆境の中でもライブバンドとしての底力を見せつけたSee You Smileのこれからが楽しみだ。
■AFTER SQUALL
最後は本日の主役となるAFTER SQUALLの出番だ。メロコアやパンクサウンドを中心に、ロックバンドとしての音楽を爽やかにかき鳴らす。その音楽性を正面から表現したライブアクトは、とても粗削りながら彼女たちの躍動を感じさせるものだった。
たいようみゆ(Vo./Gt.)によるハイトーンかつキレのある歌声は破壊力抜群。アルバム『THE PINKY』収録曲が次々と投下されていくなかで会場の熱もどんどん上がっていく。
“roolling”のようにアグレッシブな曲の演奏時には、その場で激しく踊るキッズの姿が視界に飛び込んでくる。彼がサークルモッシュを始めないかとドキドキしてしまうくらいにリミッタースレスレの盛り上がりを見せるフロア。
と思えばイントロからムードたっぷり、ジャズ味もある“Monster”を披露するなど、メロコアやパンクというくくりの中にも多様な楽曲を並べ、観客を楽しませてくれる。
「ただただ大好きなバンドを呼んで」
「ただただ大好きなこの高田馬場フェイズでライブをすることができました」
MCで今日の喜びを語るたいようは、貰ったエネルギーを倍にして東京に持ってくるのでまた遊んでほしいとも告げる。レコ発ツアーができること自体、もはや当たり前でもなんでもない世の中になってしまった、そんな状況でのこのツアーにきっと大きな充実感を得ているに違いない。
そんな彼女の思いがオーバーロードしてしまったのか、ライブ終盤に演奏された“Goes on”の序盤で歌詞が飛んでしまうハプニングも生まれてしまう。ちゃんと歌うこともままならないボーカルをよそに演奏を止めないスパルタな楽器隊の思いを汲み取り、すぐさま気を取り直し、再び歌い出したたいよう。少しハラハラしたものの、バンドの結束や強さを垣間見た瞬間でもあった。
興奮する刹那、ドキドキする場面、気持ちのいい瞬間と様々な時間を提供してくれたライブもついに終幕。厳しい制限のある今の状況で、アンコールにて1曲だけ披露しステージを後にしたAFTER SQUALL。キャッチーなメロディと軽快なサウンド、そして耳が喜ぶ魅力的な歌声を持つ彼女たちのライブにはまだまだ伸びしろを感じさせるものがある。また別の機会にも観てみたいと思わせてくれる、楽しいパフォーマンスだった。