【ライブレポート】2020/11/28 Fanicon Private Fes. 2020
タレントやインフルエンサー(アイコン)の活動を、コアなファンと一緒に盛り上げていく会員制のファンコミュニティアプリ「Fanicon」を母体としたフェス、その名も「Fanicon Private Fes. 2020」が11/28に開催されました。
場所は都内某所からのオンライン配信かつアーカイブなし、という、まさに一夜限りのフェス。
ラインアップは以下の通りです。
荒井岳史(the band apart)
フルカワユタカ(ex Doping Panda)
菅原卓郎(9mm parabellum bullet)
ホリアエツシ(ストレイテナー)
後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)
大木伸夫(ACIDMAN)
チケット代として3300円、プラス投げ銭あり。配信中の売上の全ては参加アーティストにゆかりのある全国のライブハウスに寄付する、というシステムです。
冒頭、本フェスのキュレーターである大木による案内があったのち、トップバッター・荒井さんにカメラが切り替わってライブスタート。(なぜか荒井さんだけ「さん付け」でこのレポは続きます)
ということでそれぞれ簡単に触れつつ、Fanicon Private Fes. 2020を振り返りたいと思います。
■荒井岳史
「俺という関門を乗り越えないとこの後の凄いミュージシャン観れませんから」と、いきなり荒井さんらしい自虐トークをぶちかまします。しかしそのトークにはいつもの余裕が感じられません。
もちろん話術は素晴らしく、笑わせてくれるのですが、どこか緊張感が伝わってきて常にソワソワしている印象。そのあたりの事情はこの後のトークで明らかになります。
1曲目に披露したのは「Learn to Fly」。majikoさんに提供した曲をセルフカバーでお届け。髭も生やしてちょいワイルドな荒井さんですが、甘い声は健在。太くてどっしりした喋り声とのコントラストも魅力のひとつです。
トークパートではFaniconでの活動について触れ、「喋って歌って、ほぼ喋り、さだまさし的スタイルでやらせてもらっている」と話します。
さらに、Faniconの活動に救われているとも。こういう世界になって心の拠り所がなくなり、ライブをすることが心の支えになっていたんだそう。Faniconを通じて、誰かが聴いてくれている、そういう場があることに救われたんだと。
いつものソロライブのようにトークは続きますが、「押すとヤバい」と慌てる場面も。
「現場がプロっぽい」
「胃がぐるぐるいってます」
「巻いていかないとなので」とちょっと早口でトークを展開していく荒井さん。
「荒井の会」は35億倍ゆるいから。とPRしつつ2曲目は「forget me not pt2」。こちらはバンアパの曲ですね。
トークと歌でキャラが一変する、まさにさだまさしあるいは松山千春スタイル。大きな体で繊細な音と美しい声を放つ、そのパフォーマンスの凄さは配信でもしっかり伝わってきます。
再び荒井さんのトークでは、当たり前がありがたく感じる時代であり、マイナスをプラスに転じていくのが人間だと。そして当たり前の大切さをかみしめている、と話します。
そしてここでひとつの告白が。ずっと言えなかったことだそうです。3年前にACIDMANが20周年を迎えたとき、高松のライブに呼んでもらったんだそう。その日楽屋には大木の本番用帽子が置いてあって、誰も見てない隙に勝手に被って自撮りを敢行。
その写りの感想は「大木にならねえな、○○○○だな」。
※荒井さんの今後に配慮(?)して伏字にしました
このエピソードで得た持論が
人が帽子を選ぶんじゃない
帽子が人が選ぶんだ
けだし名言。
ちなみにホリエのハットもこっそり被ってみたそうですが、イメージとは程遠かった模様。
これが言えただけでも呼んでもらってよかった、と荒井さん。「(大木に)憧れてんだろうね…」なんて言っていました。
トークは変わらず絶好調の中、ここで空気を変える新曲を投入します。コロナ禍に入ってから作った曲で、タイトルもまだない、短い曲とのこと。
出だしのギターを間違えるあたり、緊張&新曲らしさが伝わります。
≪霧が晴れたなら≫
≪君のもとへ≫
≪これが終わったら≫
≪君に会いに行くから≫
≪僕の住む街へ≫
≪いつかおいで≫
≪お酒でも飲みながら≫
≪おしゃべりしよう≫
≪流れ星見つけて夜空に≫
≪きっと朝がまたやってくるから≫
≪どんな時代に生きていようと≫
≪忘れないで≫
≪君はひとりじゃないから≫
こんな歌詞をとてもやさしいギターとともに届けてくれました。いろんなアーティストがこのタイミングだからこそ生まれたであろう曲をいろんな場所で表現していて、ひとつひとつの歌詞がとても心にしみてきます…。
最後のトークパート。
世界は大変でどうなるかわからない今、一番必要なことはなにか考えた結果、すぐ落ち込んだり不安がったりしちゃうけれど、歌うことによって、音楽をやることによって自分自身も音楽に救われているんだ、と。
そして「一組目からエモくて申し訳ないんだけど、と言いつつ、近い人に助けを求めて、精一杯ジタバタして、ひとりで抱え込まないで。助けの借りはいつかは返せるから。そういうことのなかに我々もいられたらいいな」と語る荒井さん。
飾らない言葉でまっすぐな思いを伝えてくれました。
この流れで最後の曲「希望」を披露。
≪この胸の痛みは 未来の笑い話≫
という歌詞はまさにそうあってほしいと願わずにはいられないフレーズです。
トーク量も多く、押してはいけないという焦りも加わって1曲削ったようですが、実は10分近く巻いていたということがライブ後の打ち上げ配信で明らかになった荒井さんでした。
セットリスト
01.Learn to Fly
02.forget me not pt2
03.新曲
04.希望
■フルカワユタカ
2番手はスター。荒井さんとは対照的に、MCなしでいきなり「Yesterday Today Tomorrow」の演奏スタート。一呼吸歌いきってからひとこと「元Doping Pandaのフルカワユタカです」
歌いながらちらっと笑顔が浮かんだのは、何かあったのかそれともただただ楽しかったからなのか。
続く「密林」は、これ普通に考えたら弾き語りでやるようなタイプの曲じゃないですね…。
テンポも速いし独特、かつギターも忙しくて難しい曲。それをチョイスするあたりがいかにもスターらしいし、そういうところ、大好きです。
ここでちょっとだけトークを挟みます。
「ファニフェス、楽しみにしてました」
「久々です、ラインナップに名前が並ぶのは」
「当時セ・リーグと呼んでいた」
「(ロッキンの)グラスステージでライブができる人たちと」
「やれることが嬉しいんじゃなく」
「彼らにフルカワユタカがどんなふうにやってきたのかを」
「聴かせられるのが嬉しい」
こんなMCだったと思います。
そして一言
「こっから曲だけやっていきます」
と付け加えると、再び演奏タイム。
ドーパン時代の名曲「CRAZY」です。バンド時代はフロアを無限大ダンスタイムへと誘っていたキラーチューンですが、弾き語りだとこんなにも胸に響くのかと驚きます。個人的な思い出による効果も大きいのでしょうけれど。配信ライブだし体は動かせないけど、その分心が動きます。そしてあのギターリフはアコギでも健在。さすがテクニシャン。
「ロックスターフルカワユタカです」という挨拶を挟んでから
「busted」
「シューティングゲーム」
「ドナルドとウオーター」
と3曲連続披露。フルカワユタカソロ2曲に加え、バンアパ原さんとコラボした曲も。
言葉なしでシンプルに歌い繋ぐ。演奏はタイトでストイックだけど時折笑顔を浮かべて楽しそうにプレイするスターの姿を観ていると、なんだか幸せな気持ちで満たされますね。
いろいろと頑なで独自のスタイルを貫いていたがゆえ、孤独な活動に見えてしまったドーパン時代よりも純粋に音楽を楽しみ、そして仲間と呼べる人たちとライブをしている。そんなスターを味わえる日がくるとは。
「やっぱりコロナですけど」
「歌もギターも止めようがないんですね」
「音楽を愛してますから」
「これからもファンに厳しい唯一のアイコンですけど」
「ドMの方はどうぞご参加ください」
そう告げると、ラストにふさわしい一曲「farewell」を演奏し、「バイバイ!」の言葉を残してライブは終了しました。
トガっていた時代も今も、音楽へ愛を注ぎ、知識を蓄え、テクニックを磨き続けているフルカワユタカという愛すべきミュージシャンの、ライブを心から楽しんでいるステージを観ることができて本当に幸せでした。
セットリスト
01.Yesterday Today Tomorrow
02.密林
03.CRAZY
04.busted
05.シューティングゲーム
06.ドナルドとウオーター
07.farewell
■菅原卓郎
同世代が集まったラインアップの中で唯一ちょっと年下世代の卓郎くん。
まずは9mmの「ハートに火をつけて」でライブスタートです。ちょっとフォーキーでドがつくほどの歌謡曲テイストなこの楽曲は弾き語りにピッタリ。音数がギターひとつしかないので、歌声を駆使して歌そのものの表情を豊かにしている、そんな印象です。
「今日のファニコンフェスの中では最年少ですが」
「なんと僕らは結成16年になりまして」
年下といってももう若者枠ではなく、長くキャリアを積み重ねている9mmそして卓郎くん。
「去年、9mmが応援ソングを作りまして」
「この曲作っておいて良かったなって」
「音楽で自分たちが救われたなと思うし」
「聴いているみんなを勇気づけられているとも思う」
そんな言葉から2曲目「名もなきヒーロー」へ。
《明るい未来じゃなくなって》
《投げ出すわけにはいかないだろ》
《また明日 生きのびて会いましょう》
荒井さんの新曲とは違ってコロナ禍で作られた曲ではないのに、まさに今の状況にこそふさわしい一曲。弾き語りだとより歌詞に注目しながら聴けるので、初めて聴く曲でもメッセージはストレートに伝わってきますね。
演奏が終わって「ありがとう」と言った瞬間、スタジオから拍手が起こり、思わず笑う卓郎くん。
「配信のライブを今年はやってきましたけど」
「拍手があるかないかで」
「今カメラさんたちが拍手してくれたんですけど」
「全然違いますからねえ」
意識せず観ていたけど、荒井さんやフルカワユタカのときって拍手あったっけ?とふと思いました。もしかしたらなかったかも?
「確かに荒井さんは喋りまくってて」
「ユタカさんはストロングスタイルで」
「俺はきっとこんな感じなんでしょう」
なんて言いつつここで、ストレイテナーが9mmのトリビュートに参加した曲「カモメ」を、テナーバージョンで披露する卓郎くん。元々の原曲も弾き語りとの相性は良さそうなイメージですが、今回のバージョンもとても情緒あふれる「カモメ」で素晴らしかった。
ちなみにこの「カモメ」は本来セトリにはなかったそうですが、トップバッターの荒井さんが巻いてしまったため、時間を調整するために急遽差し込んだんだそうです。先輩のリカバリーをするできた後輩…!
「俺、慌ててますかね?」
「ちょっと慌ててる?フフフ」
と笑いを浮かべ、4曲目「The World」。どこかフラメンコ感、スペインの風が吹くような情熱的なギターが印象的な曲。弾き語りでも音や感情が豊かな曲は原曲と聞き比べてみたくなりますね。
「ちょっと緊張してたけど楽しくなってきました」
「この数年我々はトラブル続きだったので」
「思うようにツアーいけないぞ、と」
「今年こそ3月からツアー行きまくるぞ、と」
「ネバーエンディングツアーと名づけ、終わらないツアーをやろうと」
「9mm今年初のワンマンが3月で、そこは延期になり」
「その数日後に始まるはずだったツアーも延期」
「延期のツアーも延期」
「終わらないツアーが始まらないという体験をしている笑」
「自粛期間中に、ツアーに音源つけてまわろうと思っていた」
「その曲をどうしようかと考えたとき」
「コロナ禍で感じていることをそのまま書こうと」
「4月、5月の東京は天気が良くて」
「こんな天気なのにほんとに悪いことが起こってるのかなあ、と」
「今日は皆さんのそれぞれの場所に」
「音楽を届けられるということになるので」
「9mmの今の気持ちを聴いてください」
ちょっと長めのMCを経て披露されたのは
「白夜の日々」
≪君に会えなくなって≫
≪100年ぐらい経つけど≫
という歌いだしで始まる曲。
≪いつも当たり前じゃない日々ばかりだよって≫
≪答えひとつ持って君に会いに行くよ≫
こんな歌詞が出てくるのはやっぱり2020年だからこそ、でしょう。表現者にとってこういった世の中の変化というのは、生み出すものに直結してくるのかもしれません。たとえ表現内容が直接的ではなくても。
9mmは2011年からアコースティックライブを始めたんだそうです。俺たちの曲、アコースティックでできるわけ?って思っていたという卓郎くんですが「最後は、あ、やっぱ9mmの人なんだなって曲で終わりたいと思います」という言葉で〆て、「The Revolutionary」を披露。
音の厚みが凄い。アコースティックだけど激しいナンバーはさすが9mm。ハープも吹きつつ熱唱する卓郎くんの姿も印象に残ります。淡々とした喋りの中にも言葉の端々に強い意志を感じる、そんなMCも含めて卓郎くんというアーティストの芯の強さを垣間見た気がします。
セットリスト
01.ハートに火をつけて
02.名もなきヒーロー
03.カモメ(ストレイテナー)
04.The World
05.白夜の日々
06.The Revolutionary
■ホリエアツシ
まずはREDIOHEADの「High and Dry」で幕を開けた弾き語り。伸びやかに響く高音がヒーリング効果を持っているのでは?と思わせる綺麗な歌声。あっという間にホリエの世界へと引き込まれていきます。
今回、FaniconのフェスではありますがホリエとゴッチのふたりはFaniconに参加しておらず、大木から勧誘を受けているんだそう。
「ユタカくんはストイックに曲の発表の場を作った」
「大木や卓郎はラジオ、趣味」
「ライさんは週一でライブをやっている」
「みんな楽しいと言っていて気になっている」
ということでFaniconチームとも交流を持ちながら、絶賛検討中ステータス、といったところでしょうか。テナモバとは別にホリエ個人で、という選択肢もあるかもしれないですね。
ちなみに「High and Dry」のカバーはFaniconの社長がREDIOHEAD好きということで話が盛り上がったのでやってみたんだそうです。
ここからは自分たちの曲を、ということでストレイテナーの曲で固めてきます。entの楽曲は今回、披露せず。
「ボーイフレンド」
引き続き優しくて綺麗な歌声、そして寄り添うギターの音が気持ちいい。ビジュアル的には素に近いような雰囲気で、リラックスして演奏しているようにも見えます。普段からステージ衣装は私服と言っていたけど、衣装だけでなく全体的に素に近いような感じ。
「タイムリープ」
高音もしっかり出ていて、ギターは激しくアグレッシブ。当たり前ですが曲によって違う顔を見せる演奏も楽しい。いろんなホリエが楽しめる、そんなアコースティックライブです。
1曲終えるごとに曲タイトルを紹介するスタイルは初心者に優しくて、さすが気遣いできる男・ホリエアツシですね。ジェントルマン。普段から交流の深いメンツが集まっているのでホリエを知らない、という視聴者もそんなに多くはなさそうですが、この丁寧なスタンスはぜひ他のアーティストも取り入れてほしいところ。バンドよりも緩めの構成でプレイできるぶん、曲紹介を挟み込める余裕があるのかもしれません。
一瞬だけ「無限グライダー」のさわりを演奏しつつ「やらないんですけどもー」と演奏を止めておどけるホリエ。いや、やってくれ…!なんというお預けプレイだ。
「今日のメンツ、一緒にやったことがない人がいない」
「一緒に曲をやろうと思えば全員とできるくらい」
という具合にコラボについても匂わせながら、しかし
「一応、ひとりひとりに徹しよう」
ということでソロプレイに専念。
「本人よりうまく歌っちゃダメ、と言われたので」
「本人よりうまくはないんですけど、やらないことにしました」
上記理由?により封印された「無限グライダー」でした。
「REMINDER」
ストレイテナーにおける爆上げキラーチューン。1本のギターでベース音も作りつつの弾き語りは、ひとりなのにバンド感もちょっとあってアガります。流れるような美しいメロディは弾き語りでも色褪せません。
曲を終えるとギターからキーボードに楽器をチェンジ。このライブはスタジオから配信しており、演奏しているこの空間にはホリエ以外の出演者はいないそうで孤独感があるとのこと。気心の知れた仲間のいないスタジオライブということでみんなの緊張も伝わったのでは?とホリエ。次回はMステのように他のメンツがひな壇に待機するかたちで、トークベースでやってみたいとリクエストしていました。
「弾き語りとしては初めてやります」というコメントから「Toneless Twilight」へ。キーボード定番曲をやるかと思っていたのでこれは意外な選曲でした。弾き語りでは初、と言うんだからそりゃそうですけども。ただ、あのイントロを考えたらバラードスタイルへと切り替えても不思議じゃない。SOFTバージョンもありますしね。アーティストの「初」を目撃できるというのもまたひとつの喜びです。
歌い終わって自ら拍手するホリエはチャーミング。
「最後の曲はみんなのささやかな幸せを願って歌いたいと思います」
「僕のささやかな幸せは」
「インスタント系食品のスープとかの袋で」
「切り口がなくて“こちら側のどこからでも切れます”を見たときに」
「ささやかな幸せを感じてます」
こんなMCを挟んで、最後はこの季節にピッタリ、冬の歌「灯り」で〆てくれました。
セットリスト
01.High and Dry(REDIOHEAD)
02.ボーイフレンド
03.タイムリープ
04.REMINDER
05.Toneless Twilight
06.灯り
■後藤正文
特にコメントもなく、いきなり演奏スタート。1曲目は「荒野を歩け」です。バンドではなく弾き語りだと、もともとクセのある歌い方がさらに際立っているように感じます。
このイベントに呼んでもらえたことへの感謝を述べた後
「みんなで持ち寄った小さな思いが」
「ライブハウスに使われるというのに感激している」
「観客が目の前にいないのは異様な感じがするしドキドキもする」
「楽しくできたらいいなと」
ゴッチらしいコメントで今日のこの喜びと興奮を伝えると、2曲目「今を生きて」へ。
歌っていうのは“上手い下手”だけでなく個性や思いの有無で大きく違ってくるんだなということを改めて噛みしめる弾き語り。
ただ上手いだけでは相手の心にまで響かない、印象にも残らない。それはきっとプロとアマチュアの違いのみならず、プロの中でも大きな違いとして表れているような気がします。
メインとなる歌詞だけでなく≪パッパ~≫や≪ウィ~ウ~≫といったスキャットのようなパートもまたこの歌の聴きどころのひとつ。ギター演奏も個性があって、ダイナミックな構成が楽しい一曲です。
ここでまたゴッチらしい自虐MC。
「ソロもやってるんですよ」
「あんまり人気じゃない…」
「みんなに知ってほしいという意味も込めて」
そう告げると「Wonderland / 不思議の国」を披露。ゴッチよ、安心してください。この曲収録のアルバム、持ってますから。
ゴッチの低い声、好きだなあ。そして低音から高音へとグイっとアガっていくパートも“らしさ”があって魅力的。どっしりとして奥行きを感じるアコギの音も格別です。
次の曲にいく前に「無限グライダー」を少しだけ弾いた後で
「無限グライダー、弾き語りではできない、俺は」
「ここからは喜多くんのパートだから俺は知らない」
「ホリエくんのソロで聴いてください」
「あと、最近はアジカンでもやってるんでね」
と、またゴッチ独特なトークが展開し、ファニコンフェスがゴッチの色に染まっていきます。
続いてもソロ曲「A Girl in Love / 恋する乙女」を披露。本人はソロの人気がないと言うけどこのアルバムは持っているので耳に馴染んでいる曲、ということもあり楽しく聴くことができました。
計算違いで時間がなくなってしまった、ということで新曲をワンコーラスだけ披露します、と言って「触れたい 確かめたい」を演奏。弾き語りだから余計そう感じたのかもしれませんが、イントロ部分がちょっとフルカワユタカテイストな味わい。テンポ上げたらドーパン曲にもなりそうな。※あくまでイントロのみ、の話。
最近のアジカンの曲の中でもかなり評判のいい新曲、できればフルで味わいたかったところです。
「こんなに触れたい 確かめたいって気持ちが」
「大事なものなんだって作っているときには気づかなかった」
「いい一日だったね、いい夜だったねって」
「言い合える夜を願いながら、あと1曲だけ」
ちょっとしんみりするようなコメントとともに、最後の曲「ボーイズ&ガールズ」を届けるゴッチ。
サビでの壮大な歌い上げが気持ちいい。最高の弾き語りを味わうとバンドバージョンでも聴きたくなるんですよね、不思議なことに。
エフェクターによるノイズの余韻を引きずりつつ退場するのがアジカンスタイルですが、今夜は退場ではなく画面切り替え。
「画面の前のみんな、またどっかで会いましょう!」
ノイズが響く中でピースサインをしながらおどけるゴッチを、カメラはしっかりと捉えていました。
セットリスト
01.荒野を歩け
02.今を生きて
03.Wonderland / 不思議の国
04.A Girl in Love / 恋する乙女
05.触れたい 確かめたい(ワンコーラスのみ)
06.ボーイズ&ガールズ
■大木伸夫
いよいよ大トリとなる大木による弾き語り。着席スタイルでの演奏は、もしかしたら大木だけ?
「音楽はいいなと思った」
「音楽が鳴りやむことはないと思った」
「僕も心を込めて歌います」
そんなMCから1曲目「FREE STAR」へ。始まりを予感させるワクワクするイントロ。そしてサビ前にためてからの爆発。弾き語りでも、アコースティックでも、ソロでも曲の持つパワーは変わらない。歌声だけでなく演奏からも、気持ちがこもっていることが伝わってきます。
演奏を終えると「ありがとうございます!」とひと言。しかし無音のため畳みかけるように「ありがとうございます!」と繰り返し、スタッフからの拍手を呼び起こす大木です。
弾き語りはよくやっているけれどいつも同じ曲ばかり演奏してしまうんだそう。でも、何度歌っても毎回違うんだとか。楽譜は同じでも、時間や場所、そしてその時々での体調は気持ち次第で歌は表情を変えるのでしょう。
続いてはデビュー当時の曲、ということで「赤橙」を。めちゃくちゃムーディーです。おしゃれなカフェで流れていてもマッチする。もちろんバンド版もカッコいいけど、弾き語りアレンジでは歌はもちろん、ギターサウンド、音の運びが小粋で痺れますね。
歌い終わって「ありがとうございます!」と言うも、無音なのでチラっとスタッフに目線を送る大木。すると慌ててスタッフが拍手するという先ほどと似たような流れ。
いろいろな場所でもやっているというカバー曲をここでも歌いたい、ということで、玉置浩二作曲、北野武作詞の「嘲笑」という曲を紹介します。
これは星の歌なんだそうです。ACIDMANや大木のことをご存知であれば、彼が星や宇宙好きであることは有名ですよね。大木曰く、星が好き、といのは何座がどうこうとかあの星より君がきれいだよ、という類ではなく、この星は、地球は、世界はどう生まれたんだろう、これからどうなっていくんだろう…という視点とのこと。「嘲笑」は、そういう曲を探していた中で出合えた一曲なんだそうです。
シンプルなんだけど言い得ている、そんな曲と大木は言いますが、まさにシンプルな歌詞だけどしみる歌でした。
≪百年前の人 千年前の人≫
≪一万年前の人 百万年前の人≫
≪いろんな人が見た星と≫
≪ぼくらが今見る星と≫
≪ほとんど変わりがない それがうれしい≫
歌い終わってから「ありがとうございます」と言うやいなや、スタジオから拍手が。教育の賜物、でしょうか。
「1年前、こんな状況になるなんて思ってもいなかった」
「ひとつの感染症で世界中が大パニックになるなんて」
「致死率が高くないのはよかったけど」
「たった一瞬で世界が滅びちゃうかもしれない」
「いつか必ず終わっちゃうんだよ」
「この世界ははかなくて切なくて」
「それがこの世界なんだ」
「これからも歌い続けていきたい」
「今を大切にするため」
「この先を怖がるよりも今を楽しむ」
「生まれてきたことに感謝できるような」
「明日世界が終わるかもしれない」
「終わらないかもしれない」
「何が起こるかわからない」
「いがみ合ったり殺し合ったり傷つけ合ったり」
「そういうことはやめて」
「たった一瞬の命なので」
「一分一秒素晴らしい仲間たちとともに」
「人生を送れたらと思います」
視聴者に丁寧に届けるようにひとつひとつの言葉をしっかりと紡ぎ、「世界が終わる夜」へ。
硬軟、剛柔が一体となった一曲をまさに熱唱とともに披露…いや、表現する大木。画面を通してでも伝わってくる大木の気持ち、感情のせいなのか、視線を画面から外せない。それくらい引き込まれる演奏でした。
最後は「敵は己の中に。何の根拠もないけどすべてはうまくいく絶対大丈夫、そんな曲」という紹介から「YourSong」。バンドバージョンはまさしくロックナンバー。激しくて拳をガンガン振り上げてしまう曲ですが、今日の弾き語りバージョンは、特にイントロがバンド版と異なり、跳ねるような、ポップなテイストに。拳を上げるよりも、ゆったりと体を揺らしたくなってきます。
ともすれば重く暗い空気になりがちな状況の中で、ポジティブ…というかしっかりとした意思をもって
≪We go on to go ahead≫
≪I'm standing here≫
と歌う曲で自らのライブ、そして自らがキュレーションしたフェスを〆てくれました。
セットリスト
01.FREE STAR
02.赤橙
03.嘲笑(ビートたけし)
04.世界が終わる夜
05.YourSong
今日全体を通して改めて思いましたが、バンド版と弾き語り版で違う顔を見せる曲を味わえるのは本当に楽しいし幸せなこと。それだけのスキルを持った人たちが集う今日のフェス、とても贅沢な時間を過ごすことができました。
また、フェス終了後には1時間半ほど、打ち上げの模様も配信。そこでの各出演者たちの絡み合いも愛すべき時間でありました。
コロナ禍においていろいろな人が今できること、やるべきことを模索する中、「ファンに向けて」に特化したサービスを提供するFaniconが主催した今回のフェス。チャリティの要素も組み込みながらの、豪華かつコンパクトな内容は見応え、聴き応えがありましたししっかりとした意義も感じました。
ぜひ第2回も開催してほしいと思います。