評価の仕組みと社内政治の攻略法
はじめに
この記事の概要
主にこれから就職する人や若手社員向けに、大手企業2社で人事として働いてきた私が、社内政治を勝ち抜いて生き残っていくためのコツなどを紹介する記事です。
この記事では、特に明記しない場合、社内政治の目的を「同僚よりもできるだけ早く、できるだけ高い役職や給料を目指すこと」に限ります。すなわち、社内ニートになって楽をしたいとか、人気はないけど個人的に行きたい部署に異動したいとかを目的とする社内政治については原則として言及しません。
快適な会社員人生を送るためには、社内政治以前に、業務で一定以上の成果を残すことが必要です。しかし、愚直に頑張って成果を出しているだけで周りが認めてくれるというわけではないので、この記事ではそういう正攻法以外の部分を中心に記載していきます。決して、社内政治だけで出世できるという話ではありません。また、社内政治に負けても幸せに生きる方法はいくらでもあります。
あくまでも社内政治に特化した記事なので、漂うサイコパス感やモラルのなさは笑って受け流してください。
前提条件
この記事の内容はあくまでサンプルであり、特定の企業の人事制度の暴露ではありません。
社長→役員→本部長→部長→課長→平社員という構成になっている企業を前提とします。企業により組織体制は様々ですが、大手企業だとだいたいこんな感じになっているところがほとんどです。
その他にも企業により制度の名称等に些細な違いはありますが、概ね似たような感じだと考えて問題ないです。
外資企業の場合は社内制度がやや日系企業と異なる場合もありますが、社内政治の必要性については変わりません。また、外資と言っても日本オフィスだと日本人の社員が大半を占めることがほとんどなので、社内政治のやり方についてもほとんど変わりません。
給与や評価の制度
概要
社内で評価されて給料をたくさんもらうには、社内制度に詳しくなる必要がある。ルールを知らなければ勝てないのは当たり前である。
人事制度は複雑になっていることが多い。これは、社員からのクレームを防ぐためである。
すなわち、あえて社内制度を複雑にしておくことで、社員が理解することを諦めたり、損をしても自分の理解不足だと勝手に思い込んで黙ってくれることを会社は期待している。
社外の人事コンサルも制度を複雑にするよう勧めてくる。これは、真面目にコンサルしてますよ感を出すためでもある。
ただでさえ複雑な制度が、5年から10年に1度くらいの頻度で大幅に変更される。しかし、名称や表現方法が変わるだけで、実質的にはあまり変わらないことが多いので、一度習得すると2回目以降は楽である。
下記では、複雑な制度のうち私が特に重要と考えている部分のみを抜粋して、できるだけわかりやすく記載する。
グレード制
多くの会社で、グレード制という制度が導入されている。
社員は大きく分けて、5段階くらいのグレードに分けられる。上から順に、本部長以上級、部長級、課長級、平社員A級、平社員B級という感じである。
グレードは、それぞれの中でさらに15段階くらいに細分化される。例えば、平社員B級は、平社員B-1から平社員B-15まであるということである。
平社員B-1の次が平社員A-15である。
新入社員は概ね一番下のグレードから始まる。この例で言うと、平社員B-15ということである。
修士卒の場合は、平社員B-13くらいから始まる。
このことから、1年で1グレードずつくらいは上がることが一般的であるとわかる。
各グレードごとに給与が決まっている。例えば、平社員B-15は月給23万円、B-14は月給23万7千円という感じである。
グレードの大分類が上がると、大幅な昇給が見込める。小分類が上がっても、最初は数千円程度の昇給であることが多い。
役職が上がるほど、小分類1あたりの昇給幅が大きい。例えば、平社員15から平社員14にあがっても7千円しか昇給しないとしても、部長10から部長9に上がると3万円くらい昇給するという感じである。
結局のところ、グレードを上げることが給料を上げることと概ね同義である。
グレードは飛び級もある。逆に、しばらく上がらない場合や下がる場合もある。グレードの上がり方によって、実力主義か年功序列かが決まる。
必ずしも各大分類の一番上までいかなければ昇格できないというわけではない。すなわち、平社員A-8の人が、一気に課長15になるということもある。
役職は目安であり、絶対ではない。すなわち、課長8のグレードであっても、実態は平社員という場合もある。この場合、給料は課長並みにもらえ、役職は無しということになる。いわゆる窓際族はこれに当たる。
逆もある。例えば、部長になったのにいまだに課長3というグレードということもある。この場合、部長の仕事をさせられるのに、給料は課長並みということである。上司が退職したことに伴う臨時昇格時によく発生する現象である。
二大評価制度
グレードは人事評価によって上下する。
人事評価は半年に1回または1年に1回の企業が多い。稀に3か月に1回という企業もある。
評価制度は大きく2種類あり、目標を達成したかで評価が決まる成果評価と、周囲からの評判で評価が決まる多面評価がある。
成果評価と多面評価の合算でグレードが決まる企業や、成果評価はその期の賞与額にのみ影響し多面評価でグレードが決まる企業など、評価とグレードの結びつきはいくつかのパターンがある。
制度の名前は会社によって違い、成果評価は実績評価や業績評価などと呼ばれることもある。
多面評価は、360度評価、バリュー評価、行動評価などと呼ばれることもある。
成果評価がない会社は原則として存在しない。多面評価は企業によっては導入していない場合もある。
いずれの評価についても、絶対評価の場合と、相対評価の場合がある。
しかし、すべての会社で人件費の総額があらかじめ決まっている以上、絶対評価というのは100パーセント建前もしくは詭弁である。
評価はSからDまでの5段階程度に分けられる。企業によっては、A+とかB-とかに細分化される。
上位からSは5パーセント、Aは15パーセント、Bは60パーセント、Cは15パーセント、Dは5パーセントくらいになるのが一般的である。
自称絶対評価の場合、極端な話、全員がS評価もあり得る。
しかしその場合、S評価の中でも昇給する人としない人がいたり、S評価の昇給幅が極端に小さくなるというだけの話である。何度も言うが、まともな財務ガバナンスが効いている企業であれば、人件費の総額が個々人の評価よりも先に決まる。
私はパチスロに詳しいわけではないが、設定6でも全然メダルが出ない機種に似てる仕組みらしい。
休職者にも評価がつくことが多い。休職者はDなので、実際に勤務していてDを取る人はほぼいない。
休職中にDをとっても降給しないので安心してよい。
評価が良くてもグレードが上がらないことはあるが、評価が悪くてグレードが上がることはない。最低限B評価は必要である。
できればA評価以上が欲しい。つまり、社内政治とはA評価以上を連続して取っていく方法と言い換えることができる。
基本的に、昇給と昇格は連動する。給料多い平社員というのはほぼいない。いるとしたら会社の平均年収が高いという意味なので、少なくともその企業内では底辺クラスであることが多い。
成果評価
成果評価は、期初に目標を立て、その目標を達成したかで結果が決まる。
目安として、100パーセント達成でB評価である。S評価やA評価を取るためには、目標以上の成果を残す必要がある。
目標とは、いわゆるノルマである。営業職以外でも目標はある。
例えば、「〇月までに〇〇のシステムをリリースする」「〇〇という商品のお客様満足度を〇パーセントあげる」「〇〇にかかる時間を〇割削減する」などである。
ゴールとアクションプランを明記させられる場合が多い。
3個から4個程度の目標を立てることが多い。最終的なSからDの評価は全て合わせた総合判断である。
目標の中には、部全体の利益目標など、個人ではどうしようもない目標を組み込まれることがある。なお、役職が上がるほどこれの占めるウェイトが重くなる。
目標は、期初に自分が原案を作り、それを上司に見せて推敲したうえで、決定する。
最終的には本部長承認で目標が確定することが多い。平社員から見ると、上司の上司の上司ということである。
しかし、部長や本部長は平社員と関わることが少なく評価しづらいので、実際は直属の上司との相談結果がそのまま承認されることが多い。
ここで、将来達成できそうな低い目標を立て、かつ、それがあたかもすごい目標であるかのように見せることが極めて重要である。
そのためには、日本語力が重要である。エントリーシートで鍛えた詭弁、建前、美辞麗句スキルはここで活きる。
具体的には、現状を実体以上に悪く言うことで普通レベルにするだけですごい感を出す方法、数値の測定方法や比較対象の調整によって数字を大幅に水増しする方法、子会社や非正規社員に丸投げすることで楽して達成できそうな目標にする方法、ゴールを抽象的に記載する方法などがある。
目標に難易度が考慮されるという制度になっていることもあるが、実態としてはほとんど機能しない。難易度を正確に判断できる管理職がほぼいないからである。
期中で上司等から目標修正しませんかと提案されることがある。ここでうっかり目標を上げてしまうとせっかくの苦労が水の泡になる。逆に、下げられる場合でも、下げると評価の最大値がBくらいになるパターンがある。できれば目標は期初に決めたものを変えない方がよい。
期の前半は種を仕込み、後半で一気に収穫できるような仕事の進め方をすると上記トラブルからは無縁である。
期中での達成状況を聞かれた場合、少し遅れ気味だと報告して、期末評価時に挽回したとアピールすると、やる気が伝わってよい。
逆に、目標を早期達成しすぎると、簡単だったのではないかと疑われることがある。期末ギリギリのところで一気に数字を積み増して120パーセント以上の達成を目指すのが最もよい。
目標が抽象的であればあるほど、評価を達成したかの判断は言葉遊びに近づく。したがって、結局は上司に好かれているかどうかで決まることが多い。
とにかく期初の段階で将来達成する姿を思い描き、それに合わせた目標を立てることが重要である。成果評価は目標設定時にほぼ決まると言っても過言ではない。
多面評価
多面評価は、周囲の人からの評判で決まる。
具体的には、平社員の場合、上司1名と同じ課に所属するメンバー全員からの評価で決まることが多い。すなわち、だいたい5人~10人程度に評価されることになる。
稀に、別の課でかかわりが多い人が評価者となることもある。
自分も、同僚の評価をするということである。
上司は、部下からも評価される。つまり、部下は上司を評価する必要がある。
評価項目は日頃の行動に関することが多い。例えば、「周囲の人が困っている時に積極的に助けているか」「新しいことに挑戦しているか」「最後まで諦めずにやりぬいているか」などである。
全部で10項目程度あり、それの合計点で最終的なSからDまでの評価が決まる。
評価する人は、それぞれに対して5段階または10段階くらいで評価する。
評価の比重は上司が重いことが多い。例えば、自分を評価する人間が上司1名同僚5名の場合、上司1名だけで評価の50パーセントが決まり、同僚は1人あたり10パーセントしか寄与しないという感じである。
つまり、結局のところ上司に気に入られているかどうかが極めて重要である。
評価者によって全体的に甘い人や厳しい人がいるが、それは人事側で機械的に調整される。すなわち、自分以外の人を全員最低評価にしたところで得することはないし、最高評価にしたところで損をすることもない。
誰がどの評価を付けたかは、本人にも上司にもわからない。わかるのは原則として人事だけであり、企業によっては上司の上司以上の人達もわかる。
評価は期末に入力期間がある。評価時期の1か月くらい前から、自分を評価する人に対して優しく接すると良い。
逆に、前期のフィードバックを受けた直後である期初にばかりハリキリ、途中でスタミナ切れして終盤が雑になる人は最も損である。
期の終盤は成果評価に影響する目標に追われがちでもあるので、雑な言動を取らないように特に気を付ける。
普段あまり他人に評価されてない人ほど、優しくされると簡単に落ちやすい。
普段かかわりが少ない人も、少し優しくするだけで良い印象を持ち続けてくれるのでコスパが良い。
人は結構単純で、他人の評価なんて適当に付ける生き物である。目に見える形で新規プランの提案などをすると、内容がしょぼくてもやっている感を出せばよい評価を得られることが多い。
相互高評価の密約を交わすことも当然できる。もっというと、それを守ったかどうかが相手にバレることは絶対にない。「俺は良い評価つけたんだけどなぁ」でごまかせるということである。
ただし、密約の存在自体が上司や人事にバレると面倒なことになる。
相互フィードバック
多面評価と同時に、フィードバックコメントの入力を求められることがある。
求められるコメントは、相手の良いところ、悪いところ、改善へ向けたアドバイスなどである。
コメントの内容は自分の評価にも、相手の評価にも影響しない。
あまりにも短すぎる場合、誹謗中傷になっている場合、複数の人に対して同じコメントを残した場合などは、人事から注意を受けることがある。
コメントの内容は社内ルールに反していたり倫理的にあまりにもひどいものを除き、一言一句そのまま本人に開示される。
評価者のうち誰が書いたコメントなのかは開示されない。
しかし、句読点や熟語の使い方、大文字小文字の使い方、特定の人しか知らない事実が書いてあるなどの事情で、誰が書いたのかだいたいわかる。
自分が文体を変えたとしても、他の評価者がそうしなかった場合、消去法で特定されることがある。
したがって、基本的には相手を褒めておくのが無難である。
悪かったところについても、就活の短所質問や挫折質問などを思い出し、うまい具合にフォローする必要がある。
どうしても書くことがない場合、質問の答えになっていない回答しても許される。例えば、アドバイス欄に「引き続き〇〇について勉強させてください。これからもよろしくお願いします。」などと記載することが考えられる。
実際の評価決定フロー
原案の確定まで
財務や人事からの資料などをもとに、社長と役員が来期の人件費の総額を決める。その後、本部ごとの評価や昇給額の合計値が決まる。
本部長が各部ごとにSが何人、Aが何人などと決める。また、部ごとの昇給額の合計を決める。
同様に、課ごとに評価の内訳や昇給者の数が決まる。
つまり、これらの過程でそれぞれ部ごと、課ごと、個人ごとの相対評価になるということである。例えば、相対的に成果を残した部ほどA評価枠が多く与えられ、そうでない部はC評価枠が多く与えられることになる。
平社員を評価する場合、課長がそれぞれに対して枠の範囲内で評価を割り振る。
課長が部長に対し、部下の評価を申請する。部長がこれを承認する。
昇給する人や昇給額についても同様で、課長が一次評価を行い、部長が二次評価を行う。
ここまでで評価の原案が確定する。
評価会議
評価の原案が確定後、同じ本部内の本部長と部長だけが集まり、本部内全員の評価を最終確定する。この会議のことを、評価会議と呼ぶ。
評価会議には人事も数名同席することが多い。
評価対象者数が多いので、複数日に分けて行うこともある。
評価会議では、評価の原案をもとに、部長が自分の部のメンバーに関してそれぞれ評価と、その理由を述べる。
他の部長や本部長、人事から質疑応答がある。
B評価の場合は特に誰からも質疑がないことがほとんどである。
C評価やD評価についても、あまり質問されない。
複数期に渡って悪い評価が続いている場合は、別途対応が検討されることがあるが、少なくとも評価会議においてはあまり深く突っ込まれない。
逆に、A評価やS評価を付けたい場合は、突っ込まれることがある。
具体的には、本当に成果を残しているのかとか、他の人の方が高評価を受けるべきではないかなどである。
評価会議の場で、部をまたいだ枠の交渉が起きることもある。「うちの部でどうしてももう1人A評価つけたいので、おたくの部のA評価のうち1人をB評価にしてくれませんか」という感じである。
この辺は部長の発言力次第であり、運要素が強い。当然、新米部長や性格的に大人しい部長、本部長と仲が悪い部長の下に配属されると損である。
基本的には、上司は部下の評価を上げたい生き物である。理由は、その方が自分の評価が上がるから、部下を出世させるためには上司がさらに出世しなければならないという玉突きが発生するからなどである。
したがって、部下にとって都合の悪いことが評価会議で吹聴されることは少ない。このことから、評価は原則として加点方式であることがわかる。
評価会議後
評価会議で決まった本部内の評価を、本部長が人事に提出する。
評価会議に人事が出席していなかった場合、人事からツッコミが入って評価会議がやり直しになることがある。出席していた場合は、評価会議中にツッコミをするので、事後ツッコミは基本的にない。
人事は社員の普段の頑張り等を見る機会がない。しかし、人事の権力維持のためにはちょくちょく評価に口出しをして、自分たちが最終的な決定者であるということを社員にわからせる必要がある。
そこで、人事は自分たちが口出しできる分野、例えば営業成績などの定量的な数値化された情報、遅刻回数などの勤怠情報、人事研修での態度や成績、ちょっとした提出物の遅れや不備など重箱の隅をつつく。
人事からのツッコミを受けて修正した後、最終的な評価や昇格、昇給が決まる。
ここまでのまとめ
昇格や昇給はどんな詭弁を使おうが絶対に相対評価で決まる。
上位20パーセント以上の評価を得ることを目標にする。
評価を得るために好かれる必要があるのは、重要な方から順に、一次評価者である直属の上司、最終的な決定権限を持つ人事、中間評価者である直属以外の上司の順である。
評価は基本的に加点方式である。
これを前提に、日々どのように立ち振る舞うと良いかについて次項以降で紹介する。
社内政治① 共通事項
ゴマスリ
ゴマスリは社内政治の基本中の基本である。
露骨にゴマスリをするよりも、間接的に褒めるほうが効果が得られやすい。
例えば、「Aさんのおかげで助かったんですよ」という話を、Aさんと仲の良いBさんにしておくと、いずれ伝わるはずである。
逆に、他人の悪口は絶対に言わない。どれだけ相手が悪い場合でも、言わない。勝手に話が膨らむことがある。
謙遜しない。特に、上司以外の人の前ですると、上司に対して変な感じに伝わることがある。
好かれたい人との接触機会を増やすことも重要である。飲み会やゴルフに同行するかなどがなんだかんだ現在でも有効なのはこのためである。
社外での接触が面倒な人は、日々の業務の隙間などでも話しかけると良い。
人は頼られると嬉しいものである。どんどん質問等するとよい。
対峙戦略
基本的には戦わないで勝つ方が好ましいが、どうしても敵対勢力と対峙する場面は発生する。当然、勝てる見込みがないなら戦わない。
その際は、まず相手に喋らせて、それに対して反論する方がよい。とにかく下手なことを喋ると危ない。
基本的に強気の姿勢を崩さなくてよい。大手企業ほど穏健な人が多く、堂々としていれば相手が折れてくれる。
交渉時には、あえてかみ合わない返答をして面倒なヤツと思わせるのも手である。
普段穏やかにしていればいるほど、少し強く言っただけで圧力と認識してくれるので楽である。
とはいえ、正直なところ上位レイヤーになると結構きつい言葉の応酬は日常茶飯事である。有名な上場企業の社長レベルでもそんな感じであり、年齢や性別には関係がない。結局、ある程度の圧力をかけないと動かない人が大半なのである。
証拠の集め方
言質を取られないようにする。危険を察知したら、できるだけ曖昧な表現を使ったり、証跡の残らない方法でコミュニケーションする。
逆に、相手の発言は積極的に言質を取る。いつ何がネタになるか分からないからである。
特に上司から言質を取る。いざという時に「上司の承認を得ていた」と述べて責任を押し付けるためである。
既に知ってることも知らないフリをして、改めて相手に喋らせる。
相手が警戒してメール等を避け、口頭で話したがっている場合、相手が喋ったことをあたかも一時的なメモかのような雑な感じで会議室のホワイトボードにメモをする。最後にそれを消す前に写真に収める。
会議を終えて会議室を出たところで再度声をかけ、会議内容の一部を会議室の外にいた人に聞かせるのも手である。
他部署等に提出する書類はコピーを取っておく。
PC上のファイルは過去分も別名で保存しておく。
処分すべき書類をシュレッダーにかけるフリをして、倉庫でこっそり保管することも検討する。
この場合、社内引っ越しなどの時にうっかりバレると墓穴を掘るので注意する。とはいえ、忘れていたことにすればごまかせることが多い。
上記は全て合法的な手法である。一方で、無断で録音したり、盗撮したりするのは流石に犯罪もしくは社内規定違反である。バレた時のリスクが高いうえ、証拠として後々提出できない。
抑えた証拠は温存しておき、最も良い時タイミングでカードを切る。
社内政治② 全体戦略の策定
ついていく人の決定
社内で誰についていくかを見極めることは極めて重要である。
ついて行った人が出世すると、自分も出世しやすくなる。
人格的に良い人かどうかと出世するかどうかは全く無関係か、むしろ反比例する。
仕事ができるか否かはある程度関係するが、ある程度しか関係しないともいえる。
基本的には、評価者である直属の上司についていけばよいことが多い。
しかし、例えば部長と課長の仲が悪い場合や、部長が課長を評価していない場合、その課長についていくことはリスクが高い。
そのような場合でも、露骨な見限り方をすると自分の評判が下がる。「私は最後までついていくつもりだったんだけど、どうしても無理でした……」感を出す必要がある。
上司以外に、同じ部署内に仲の良い人を数名作った方がよい。この選び方が難しい。
後輩や女性、非正規社員ばかりを周りに集めてイキっている人は大体地雷である。自分も取り巻きの中の1人にならないよう十分に注意する。
この手の人間は一見すると優しかったり正論を言っているように見えるので、新卒は特に騙されがちである。
年齢の割に役職が低い人も地雷である可能性が高い。
同性よりも異性の方が味方になってくれやすい。
上司に対してみんなの前で生意気な態度を取る人は、社内政治を理解していない可能性が高い。このタイプはうまく利用すれば手柄を譲ってくれることもあるが、基本的には足を引っ張られることの方が多いので気を付ける。
足を引っ張る人を除けば、味方は多ければ多いほどよい。つまり、無能社員であっても味方に引き込んでおいた方が得である。
結論として、自分に似ている人と仲良くなると概ねうまくいく。
全員と仲良くするのは難しい。誰が自分の評価者なのかを忘れないようにする。
良くしてくれた人でも、時には見捨てることも必要である。泥船に乗ると自分まで沈む。
異動先選び
どれだけ部署内でよいポジションを作っても、そもそも部署自体がハズレだと、S評価やA評価の枠が少ない。この場合、部署からの脱出を図る必要がある。
異動先の部署としてどこがよいかは、同期など他部署の人から情報を仕入れる。
Openworkなどを見るのもよい。大企業だと5ちゃんねるに社員限定スレッドが立っていることもある。
例えば別の本部に行きたい場合は、その本部の本部長から役員に出世している人がいるかを確認する。別の部に行きたい場合は、その部の部長から本部長に出世している人がいるかを確認する。
今は良くても近い将来落ちぶれそうな部署は避ける。
自分以外に出世しそうな人が多数いる部署は避ける。
異動手続き
異動できるかどうかと現部署での評価はほぼ無関係である。優秀すぎると現部署から引き留められやすく、無能すぎると受け入れ部署に断られやすくなる。
会社は、大幅な部署異動は本人が望まないのではないかと思っている。あとから「本当は嫌だった」と言われないように、本気で異動したいと上司や人事に伝える必要がある。
具体的には、日頃から上司に対して異動したい旨を伝えることが重要である。何度も伝える。くどいと思われるくらい伝える。
機会があれば人事にも伝える。
異動希望先の部署の管理職にも伝える。普段接点がないと思うが、無理矢理コンタクトを取ってOKである。
これを繰り返していると、今の上司から異動希望先の管理職に話を通してくれるようになる。ここまでくればほぼ成功だと思ってよい。
どのみち異動するなら今の部署での評価はあまり関係なくなるが、将来他部署に知り合いがいた方がよいので、できるだけ綺麗な別れ方をする。
社内政治③ 上司関連
積極的な提案
評価制度が加点評価になっている以上、とにかく挑戦することが大切である。
グループディスカッションで例えると、評価される方から順に、リーダー、プレゼン係、アイディアマンである。書記やタイムキーパーは評価され辛い。
言われた業務を粛々とやるよりも、積極的に新たな提案をする方がよい。
提案は上司に直接言う。先に同僚に言うと、横取りされる可能性がある。
上司に言うと、まず同僚と相談してくれと言われることもある。その場合は同僚に相談する。
しかし、次回別の提案をするときはまた最初に上司に言う。
提案内容はなんでもよい。極端な話、飲み会を企画するだけでチームワークに貢献したと思われたりする。
新規事業などにも積極的に携わるとよい。
上司によっては提案されすぎると面倒と感じるタイプもいる。特にエンジニア気質の強い人などに多いので注意する。
しかし、単に上司にとって扱いやすい部下になればよいというわけではない。
フィードバックでの立ち回り
上司としては、ゴネる部下の説得は面倒くさい。具体的には、フィードバック時に「なぜA評価じゃないんですか?」などと聞かれたくない。
そこで、日頃から「自分は評価されたいんです」ということを積極的に伝えておくとよい。これは、どちらかをC評価にしないといけない時、どちらでもいいと思ったら、面倒なことになりそうにない方を選ぶからである。
フィードバック時は大げさに喜んだり悲しんだりするとよい。
フィードバックが悪くても、上司に責任を押し付けてはいけない。前述のように評価制度は上司よりもさらに上位レイヤーの人や人事も絡んでくるので、彼らへの不満を共有できる関係になるとよい。
ただし、上位レイヤーの人や人事であっても、個人を特定しての悪口はどこから漏れるか分からないので避ける。
社内政治④ 日常的な業務
横取り作戦
評価者以外からの評判はある程度諦めることも検討する。特に、遠く離れた部署や非正規社員には多少強い姿勢で挑んでもよい。
他人の成果を横取りするのもこれに当たる。非正規社員などに業務をやらせ、あたかも自分の成果のように上司に報告する方法である。
この際、非正規社員等に頼んでいることが上司にバレないようにするか、自分がしっかり指揮命令していると上司にアピールすることかのいずれかが必要である。
非正規社員等のミスは自分の責任になるのが原則である。しかし、うまく同情を誘えば非正規社員の責任にできる。それにより非正規社員がクビになっても動じてはいけない。
サンクチュアリ作戦
自分にしかわからない業務を作ると、社内での自己のプレゼンスが上がる。真っ当に言うと、高いスキルを身に着けて周りの人から信頼されるということである。
しかしそれは常人には難しいので、あえて周りの人に説明しなかったり、複雑な仕組みにしておく作戦が横行しているのである。
この手法はサンクチュアリ作戦という隠語で呼ばれることがある。Sanctuaryとは聖域という意味らしい。たぶん他の人が簡単に立ち入れないというニュアンスだと思う。
聖域の作り方は職種やポジションによる。
例えば、営業の場合はお得意様の名刺を同僚に見せない、エンジニアの場合は自分にしかわからない技術を混ぜておくなどである。
ちなみに採用担当の場合、あえて難しい採用基準と、それに適合するいつでも紹介できそうな優秀な知人等を確保しておいて、周りから期待された時にその人を入社させるなどの方法がある。
出し惜しみ作戦
仕事において、苦労した感を出すのはとにかく重要である。
仕事を早期に仕上げると、「その人の能力が高い」ではなく、「仕事が簡単だった」という評価を受けることが多い。
そして、次の仕事をやらされる。次の仕事が終わらないと、本来やらなくてもよいはずのものだったのに、「終わっていない」というところだけピックアップされて怒られることがある。
したがって、基本的には締め切りの少し前くらいに出すのがよい。
場合によっては、あえて遅れる宮本武蔵作戦も検討する。
時にはあえて小さなミスを発生させ、難しい業務を行っているという演出を行う。いわゆるマッチポンプ作戦である。
宮本武蔵作戦やマッチポンプ作戦はやりどころが難しいので、うまく空気を読む必要がある。当然、ミスると逆効果にもなりえる。
あらかじめ2つの案を準備しておき、しょぼい方の案を先に見せ、「念のためもう一つ作ってたんです」と控えの本命案を出すのも効果的である。
社内政治⑤ 人事関連
勤怠関連
人事は数値しか見ないので、基本的にやむを得ない事情等は伝わらないものと心得る。
遅刻は絶対にしない。してしまった場合、うまくごまかしたり上司を懐柔して、人事にそれが伝わらないようにする。
残業は多くても月30時間以内にする。平社員でも残業をしてしまう人は、管理職になるとさらに残業をすると思われ、昇格候補から外されるからである。
有給を余らせすぎない。最低でも合法ラインである年間5日、できれば年間10日以上は消化する。
できるだけ休日出勤をしない。やむを得ない場合は、必ず代休を取る。
有給がないのに休む行為、いわゆる欠勤は論外である。無断でも、断りを入れてもNG
パソコンの起動時間の記録や、ビルのカードキーの記録で本当の勤怠時間がバレることがあるので注意する。
人事研修
定期的に訪れる人事研修は本気で受ける。
任意参加の場合でも必ず受ける。人事と仲良くなるチャンスだと理解する。
本業が忙しくても遅刻しない、早退しない。
研修内容を先輩などに聞いて下調べする。
人事に仲の良い人がいる場合、うまく聞き出せないか試みる。
研修を業務委託している場合、他社で同じ研修を受けた人がいるはずなのでネットなどで調べる。
外部の問題である場合は個人で購入できる場合があるので、購入して解いてみる。
昇進試験でグループワークや面接がある場合、コツは就活のそれと概ね同じである。
上司に模擬面接をしてもらう。管理職でないと見えない景色は意外と多いので、平社員の先輩ではダメ。
指定図書の読書感想文を書かされる場合は、綺麗な日本語で書く。
社内政治⑥ その他
地域格差はある。本社以外のオフィスは、正直に言って論外である。
上司が出社している場合、テレワーク推奨であってもたまには自分も出社したほうがよい。
所属先の企業が買収されたことによって社員となった場合は、しばらくの間独自の動きが許されることがある。しかし、早めに王道ルートに移った方がよい。
学閥は企業によっては多少ある。出身校が強い場合は素直にそこに乗っかり、そうでない場合はあまり関わらない方がよい。下手にFランのヒーロー的なポジションになると各方面から妬まれるので、Fランを主張しすぎない方がよい。
あとがき
この記事を読んでくださった方の中には、「そこまでして出世しなくてもよいのでは」と思った方もいらっしゃると思います。
しかし、どうしても身近な人達と比べてしまうのが人間です。入社時は楽しく働ければそれでいいと思っていた人がいつのまにかハマっていくのが、社内政治の恐ろしいところです。
また、結婚して家庭を持ったりすると、独身時代以上にお金が必要だと感じる場面が増えるでしょう。
私が人事としてみてきた限り、ハッキリと口にしないだけで、8割くらいの人はこれらの社内政治のいずれかを行って、出世をしようとしています。
また、自分のためだけでなく、部下や同僚を守るために社内政治をせざるを得ない人もたくさんいます。誰かを犠牲にして生き残らなければ、別の誰かを守れなくなる。会社員版トロッコ問題のような世界が、どのような会社でも確実に存在しています。
私は、社会人になり、人事部に異動になり、そういった非情な判断ができるようになったことが一番の成長だと自分では思っています。白でも黒でもない理想と現実の間の落としどころを上手く見つけられる能力が、生きていくうえで必要だと感じています。また、そうやって勝ち上がった人にしか、くだらない風習を変える権利は与えられないのが現代社会だと思っています。
なお、最初にもお伝えしましたが、この記事はあくまでも社内政治に特化したものであり、それとは別に、ある程度仕事で成果を残すことが前提です。社内政治抜きで生き残るのは至難の業ですが、かといって社内政治だけで出世することはできません。
まずは目の前の業務に一生懸命取り組みつつ、徐々に面倒な大人の世界についても知っていくのがよいのかなと私は考えています。
偉そうに語っている私も、日々頑張って精神状態を保ち、バランスを取りながら必死で生き抜いている状況です。一緒に頑張りましょう。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
ほしの