【論文要約】自動車車体塗装用複数ロボットアームの経路設計における複数の制約対処法の併用
論文情報
タイトル: 自動車車体塗装用複数ロボットアームの経路設計における複数の制約対処法の併用
著者:
永井 裕也 (Yuya Nagai)
田島 彩音 (Ayane Tajima)
中村 博光 (Hiromitsu Nakamura)
東園 雄太 (Yuta Higashizono)
小野 智司 (Satoshi Ono)
所属:
鹿児島大学大学院 理工学研究科 工学専攻 情報・生体工学プログラム
トヨタ車体研究所
発表年: 2023年
掲載会議: 第37回人工知能学会全国大会 (JSAI2023)
URL: JSAI公式ページ
背景
自動車塗装の工程:
自動車生産工場における塗装工程では、複数のロボットアームが1台の車体を同時に塗装。
塗装は、アーム間の衝突回避、移動する車体に合わせた塗装、塗装品質を維持するための順序制御など、複雑な制約条件を伴う。
現状の課題:
熟練の技術者がシミュレータを使用して手作業で設計しており、多大な時間(数週間~数ヶ月)がかかる。
溶接や移動タスクに関するロボットアームの経路設計は研究されているが、塗装特有の条件を考慮した設計は進んでいない。
研究目的
経路設計の自動化:
進化計算を活用し、塗装工程特有の制約を満たす経路設計手法を提案。
制約条件の効率的な対処:
複数の制約をその特性に応じて個別に最適化。
現場適応性:
専門技術者が設計した経路に匹敵するか、もしくはそれを上回る経路を生成。
提案手法
基本アプローチ
自動車塗装経路設計を配送計画問題(VRP: Vehicle Routing Problem)の類似問題として定式化。
制約条件を満たしつつ最適化を行うために、進化計算(遺伝的アルゴリズム: GA)を使用。
考慮する制約条件
アームの可動範囲:
アームの動作が可動域内に収まるよう制御。
アーム間の衝突回避:
アーム同士が一定の距離を保つ。
塗装順序:
下から上へ順次塗装を行い、塗装順序が逆転しないようにする。
塗装箇所の完全塗装:
全ての塗装箇所がカバーされるようにする。
車体の移動速度:
車体が一定速度で移動している条件に適応。
手法の構成
上位問題:
各アームの塗装箇所の割り当てと訪問順序を決定(遺伝的アルゴリズムを使用)。
下位問題:
各アームの詳細な移動経路を決定(貪欲法を使用)。
制約対処法
ペナルティ関数:
制約違反の程度に応じて目的関数に罰則を追加。
修復処理:
解の表現を変更し、制約違反が発生しないよう調整。
評価実験
1. 2Dシミュレータ実験
目的:
車体の側面塗装を4基のアームで実施。
結果:
提案手法は、専門技術者が設計した経路と類似する経路を生成。
アーム間の衝突回避や塗装順序の制約を全て満たした。
2. 3Dシミュレータ実験
目的:
提案手法の3次元拡張性を検証。
結果:
3D環境においても、全ての制約を満たした経路を生成。
考察
1. 制約対応の効果
ペナルティ関数と修復処理の併用により、多様な制約条件を効率的に対処。
塗装工程特有の制約を満たしつつ、効率的な経路設計が可能。
2. 専門技術者との比較
提案手法で生成された経路は、専門技術者が設計した経路に匹敵。
アームの稼働時間や塗装効率の観点では、専門技術者を上回る結果も確認。
結論と今後の課題
結論
提案手法は、塗装工程特有の制約条件を考慮した経路設計を自動化。
専門技術者が設計した経路と同等、もしくはそれを上回る性能を発揮。
今後の課題
微細な動作や速度制御を考慮した最適化。
アーム配置の最適化や異なる車体形状への適用。
現場実装を見据えた実時間計算性能の向上。