2.会社人間ではなかったはずが
この度のご逝去、ご家族の皆様のご心痛いかばかりかと。
心からお悔やみ申し上げます。
私は会社で同期でした。もっとも私は新卒入社ではなく中途採用での入社組ですし、所属は営業部で総務部の彼とは日常的にはあまり接点はありませんでした。有給休暇の申請、税金控除、備品類の調達。他諸々と日常の細かな領収書の処理の仕方などをメールでも直接でも質問すれば的確な答えを差し出してくれる、感情起伏の少ない物腰の柔らかな人でした。
ちょっと中年太りでお腹周りが気になるからランニングを始めた、と聞いたのは50代に差し掛かる頃。コロナ禍前は、各地のマラソン大会にも出場していたようです。ストイックに走り込むタイプかわかりませんが、口数も少ない人でしたから独りで走るのが性に合っていたのだと思います。いや、ちょっと違うかな。何か自分なりの楽しみを見つけたかったのかもしれない。
社内でパワハラが遭ったかですか?うーん。それはわかりません。ただリモートワークが続いていたので仮に職場に嫌なことを言う人がいても、スルーしたりうまく避けることはできたはずですから。それに何をもってパワハラか?という線引きが難しい。同じ状況であっても人によって受け止め方が違うということもあります。何よりも総務部には社内のパワハラやセクハラを把握するプロジェクトチームもあったはずですし。灯台元暗し、だとしたら大変残念なことですが自分はパワハラがあったかは聞いたことがない。
しかし、やりにくくなったのは確かです。営業部も総務部も自分より年下の上司がおりますし。もちろん能力的に評価されて肩書がつくので、年齢は関係ないとはわかっています。それでも、今まで後輩だった人が上の立場になるのは、なんとなくギクシャクするんじゃないでしょうか。もっとも売り上げを気にしなくてもいい部署で、ギクシャクするとしたら単に人間的な相性かもしれません。誰でもちょっと苦手な人っていませんか?それが大人になるといったん飲み込んで、何とかうまく付き合おうとするものです。そもそも彼のことを恨むような人、社内に敵みたいな存在は誰もいなかったはず。反して彼自身が苦手な人はいたかもしれません。ベタな日本企業ですから、七面倒くさい習わしもありますし、小さなことに強く拘る人もいます。そういう人でもそつなく対応してくれるのが彼の人柄の良さだったと思います。
つまらないことばかりの社内の仕事に飽き飽きしていたとしても、そんな熱意をもって仕事にあたっていたとは思えない…というと語弊がありますでしょうか。それにマラソンだけでなく、スキーやゴルフ、乗馬なんかも趣味があったと聞いています。会社は収入を得るための手段で、けっして自分の人生を捧げるようなものではない。諦念というか、もともと上昇志向もなかったようなので、割り切って過ごしていたんじゃないかな。
え?私ですか?もう出向の立場で、本社には戻らずに定年になるでしょう。子どもも巣立ったし、定年後はまた大学にでも通って勉強し直そうなかと思っています。同世代でもやりたいことがあるかないかが、生きていく上でのエネルギーの違いです。とはいえ、やはり彼のような温厚な同期を喪ってしまい、無念です。コロナ禍でなかったら違った展開になったはずだ。こんな鬱々した暮らし、真面目に考えていたら誰でもおかしくなりますよ。
国が国民を救えないように、会社は社員の命まで管理できないんだってことです。所属っていったい何なんですかね。意味、あるんでしょうか。(59歳/会社の同期社員)
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