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Cy Young賞で見る、左腕の今後を考えタイ⑴

身バレしたマーモットです。おーい見てるー?(ヤケクソ)

今回は、Cy Young賞を受賞したCris Sale(ATL)に注目して、これからの左腕の可能性についてみていきたいと思います。⑴にしたけどSkubal編を投稿する日は来るのか。

では今回もよろしくお願いします。


クイズ:サムネの寿司は何の魚でしょうか。


1.Chris Saleについて

みんな大好きSavantを見てみましょう。

以下抽出。

家庭内別居みたいなチャートしてるな
「Active Spin%」は回転効率のこと

まとめると以下の通りです。
・球種
 Slider(40.3%)ave.126.5km/h
 4-Seamer(37.8%)ave.152.5km/h
 Changeup(14.7%)ave.140.2km/h
 Sinker(7.2%)ave.151.6km/h
・Sliderと4-Seam Fastballが中心
・縦ではなく、横の変化量で勝負する投手
・回転効率は高めの回内型
・Sliderがとんでもなく優秀

雑記:かつては「シンカー=右投手、スクリュー=左投手」といった認識が一般的でしたが、現在では「シンカー=投げ手側に向かって重力で落ちる球」「スクリュー=投げ手側に向かって回転で落ちる球(≒逆カーブ)」といった理解が主流のようです。

35歳を迎えるベテランながら、Chris Saleは投球術に頼りすぎることなく、球質で打者を圧倒するに値するスタッツを誇っています。Cy Young賞に輝いた今シーズン、その躍進の一因となったのが球速の向上です。

Saleは2020年にトミー・ジョン手術を受けた後、リハビリに取り組む中で何故か自転車事故にも見舞われ、昨季復帰しましたが、成績も球速も満足のいくものではなく、不本意なシーズンとなりました。しかし、今シーズンは4-Seam Fastballの球速が昨季比で0.9mph、Sliderが0.8mph向上し、見事な復活を遂げました。もちろん、球速だけが復活の理由ではありませんが、2017~2018年の全盛期の球速に近づいたことで、彼の持ち球の価値はさらに高まったといえるでしょう。

以下の記事でもSaleの球速増加が取り上げられており、「やはり球速は正義だ」と改めて感じさせられます。

特に、ここに注目したいです。今季、Saleが95mph(152.8km/h)以上の4-Seam Fastbalを投げた割合です。以下抽出&編集。
【Sale's percentage of four-seamers thrown 95-plus mph】
2019-23: 25.9%
・2024: 44.7%

これまでSaleが投じた4-Seam Fastballの多くが152km/hに達していなかったのに対し、今シーズンではその割合が半数に迫るようになりました。前述の通り、Saleの4-Seam Fastballの平均球速は今季0.9mph上昇しましたが、これには95mphに達する球が増えたことが要因と考えられます。また、4-Seam Fastballだけでなく、Sliderの球速も上昇している点も見逃せません。具体的には、Sliderの球速は昨季より0.8mph向上している一方で、変化量はわずか0.2インチ(約5mm)程度しか減少していません。つまり、もともとMLB平均より6インチ(約15cm)も多く曲がるSaleのSliderが、さらに高速化して戻ってきたことにより、打者を打ち取るための極めて有効な球種へと進化したと言えます。このように、Saleの全体的な球速の向上は、Cy Young賞を可能にする大きな要因となったと言えるでしょう。

雑記:現在スライダーの名手で名を轟かせているChris Saleですが、大学時代はフォーシームとチェンジアップのツーハンドピッチだったようです。
スライダーは並以下(below-average)とか言われててかわいそう。

また、Saleの躍進にはもう一つ、チームの守備力も関わっているかもしれません。
今季、BOSからATLへ移籍したSaleですが、チーム単位の守備力を見ているとATLの方がだいぶまともと言うことが分かります。各チームのOAAで比較してみましょう。
Savant:ATL+2(16位)、BOS-18(25位)
Fangraphs:ATL+1(16位)、BOS-18(25位)

もちろんOAAだけで守備力のすべてを評価することはできませんが、リーグ下位の守備力を持つチームから平均的な守備力を備えたチームへ移籍したことは、少なからず良い影響を与えたと考えられます。



2.Chris SaleのArm Angleで酒を飲みたい

ひえ~
ひえ~~~
ひえ~~~~~
これに至ってはもうサイドだろ

しかも、クロスステップで踏み込むことで、まるで往年のRandy Johnsonを彷彿とさせるような独特の軌道を生み出していますね。どこかで聞いたことがありますが、打者を打ち取るためには「いかに平均から外れるか」が重要だと言われています。例えば、160km/hという球速は、打者にとって日常的に対峙するものではなく、平均から大きく外れているからこそ対応が難しいのです。※ただあまりにも遅すぎる球速は慣れられてしまう模様。

同様に、変化量も「平均から外れる」ことが鍵です。左投手であれば、その独特なリリースポイントや球の動きが、「こんなの見たことない」という状況を生み出し、打者を困惑させる武器となります。まさに「予測できない要素」を作り出すことが、打者を打ち取るための大きなポイントなのでしょう。

Chris Saleの場合、一塁側に踏み込むクロスステップから、約11度のアングルで150km/hを超える速球が放たれるという、とんでもない軌道を打者に見せています。打者にとって「そんなの見たことない!」という状況が、彼の躍進の一因になっているとも考えられます。こうした異質さが、まさにSaleの投球の核心部分を形成しているのでしょう。



3.高めのFastballは全盛期たり得るのか

投球コースについては、Chris Saleだけでなく、他の左腕投手にも似たような傾向が見られます。具体的には、Fastballを高めに投げ、Breaking Ballを低めに投げるという配球です。このような攻め方は、確かに現在のMLBではオーソドックスな戦術なのでしょうか。

Chris Sale
Josh Hader(HOU)
Nick Lodolo(CIN)
Carlos Rodón(NYY)

しかし、高めのファストボール時代は果たしていつまで続くのでしょうか。2022年に投稿された以下の記事では、「もう高めの速球は恐れるに足りず」というセンセーショナルな見出しのもと、各チームが高めのファストボールへの対応を進めている様子が記されています。それにもかかわらず、いまだにChris Saleを始めとする投手たちは高めに力強い球を投げ込み、多くの打者がその球に翻弄されています。
記事の示唆する通り、高めの速球に対する攻略法は進化しているかもしれませんが、この攻防がどのように展開していくのか、そして「高めの速球時代」が終焉を迎えるのかどうかは、今後の興味深い観察ポイントといえるでしょう。

ただ高めにFastballをぶち込むのは、現段階ではかなり効果があるといってよいでしょう
先出の4投手がそうであるように、Fastballを打者の胸元にぶち込むのに対し、Breaking ballやOffspeed ballは膝元に落とし込むという配球というかピッチスタイルはまだまだ通用することは間違いないですし、アマチュアにおいてはより効果を発揮するものであるかもしれません。もし興味があったら下の記事を読んでみてね。



4.ところでSaleの投球スタイルは再現可能なのか。

いやーきついでしょ

理由①:そもそも速く投げられないと意味がない
そりゃあねえ…。92mphまでは言わないけれど、せめてその界隈の平均球速が出せないと、その特徴を活かすのは難しいんじゃないですかね。(ましてやアマチュアなら尚更)
理由②:身体が保たない
そりゃあねえ…(2回目)。あんなに踏み込んだ上で、リリースアングルを下げて投げることができたとしても、「お前、いつまでその状態が保てるんだ?」って話になります。腰や膝、肩、肘がグッバイしてしまう選手が多くなりそうです。
理由③:球質を担保できるか
理由①と重なる部分もありますが、直球と変化球の球質が重要になります。Rapsodoなどで逐一チェックできる環境が整っていれば問題ないかもしれませんが、測定ができる環境が整っていないと、結構高い壁になる可能性があります。

高校球児がSaleの投げ方を試したいって?身体が柔らかくてフィジカルが平均を余裕で超えるぐらいはあって既往歴がなくてコマンドが充分にできるならやってみれば?



5.おわり

ということで、左腕が左腕であることを活かすためには、球速とか変化量とかコマンド能力がキモになります。そして、それには相当のフィジカルが必要なことは自明の理です。さあ、今日もヨガマットでバーベルを持とう。マウンドでボールを持つなんて百万年早いわ、出直してこい。

というわけで今回はここまで。ご覧いただきありがとうございました。









X.答え合わせ

答え(魚の名前)はタイトルに書いてあります。

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