「太郎くんの、夏休み。」〈短い小説〉
太郎は、山と海に囲まれた田舎で、夏休みをだれよりも楽しんでいた。
それはもう、7年地中で待ち続けやっと地上に出れた蝉たちよりも、夏休みが来るのを楽しみにしていたし、夏休みが終わらないなんてことがもし可能ならば、なんだってできると、心から本気で思っていた。
タンクトップに短パン姿で、朝から虫取り網を手に山に向かい、クワガタやカブトムシをたくさんとった。
川で魚を釣っては、泳ぎ、小さな岩肌を見つけては登ってダイブした。
海ではシュノーケルをつけて、魚の後をひたすら追いかけ、疲れて足がしびれるまで、ぷかぷかスイスイ泳ぎ続けた。
スイカ割りをし、花火をした。
太郎は、この世のなによりも夏休みが大好きだった。
しかし、夏休みには終わりがある。
8/31の夜は、夏休みとの別れが悲しくて辛くて、おばぁちゃんちの縁側に腰かけ、オイオイ泣いた。
優しいおばぁちゃんが、太郎に声をかけた。
「太郎や、悲しいのは分かるけど、明日から学校が始まるのだから、いい加減に泣き止んで明日の準備をなさいな。ねぇ太郎?」
「いやだ!いやだ!学校なんて行きたくない!このまま夏休みを続けるんだー!」
「困った子だねー。明日、あんたが学校に行かなかったら、生徒たちはどうしたらいいんだい?先生がいないと、新学期も始まらないだろうよ。」
うるさいくらいに鳴き続けていた蝉の声が、一斉に止まった。
(あとがき)
私の夏休みはnoteで始まって、小説尽くしの夏休みだったけど、おじぃちゃんやおばぁちゃんと旅行も行けた。プールも行けたし、花火もできた。夏休みって楽しい!楽しいから終わるのは、寂しいし悲しい。でもそれはきっと子どもだけじゃないんだろうなーと思って、この物語が浮かびました。
先生が「先生も夏休み楽しかったですー!」と言ってたので、先生の夏休みが、太郎みたいだったら面白いなと空想してクスクスしました。