「世界から、お金が消えた。」〈ちょっと長い小説の予定〉
1話 「お金が消えた。」
正人は仕事帰りにいつものようにコンビニに寄って、夕飯代わりになるお弁当と500mlのお茶を買おうとレジに並んでいた。
正人の前には、同じく仕事帰りのOLらしき女の人がカップラーメンとビールを手に、自分の順番がやってくるのを、ぼーと待っていた。
「お並びの方、こちらへどーぞー」突然正人は、店員から声をかけられ隣のレジへと促された。
"ピッピッ"
バーコードを読み取る心地いい機械音が鳴り、店員に金額を言われ、正人は財布から1000円札を取り出す。
店員に渡そうとしたその瞬間に、手に持っていた1000円札が見事に消えた。
それはまさしく"消えた"という表現しか思いつかないような消え方だった。
店員と正人は、どのくらいだったろうか…1秒かもしれないし、1分かもしれない。ただただ固まって顔を見合わせた。
「…今日か。」
正人はそう静かに呟いた。
隣のレジをみると、OLらしき女の人が慌てふためき財布を逆さにして、今にも泣き出しそうだった。
「…えっと、お金はいいです。」
店員は戸惑いながらもそういうと、お弁当とお茶をビニール袋にいれて正人に渡した。
「あっ…どうも。」
正人がコンビニを出ると、そこら中で悲鳴やら、泣き声やら、笑い声やらが響いていた。
あれは、突然やってきた。
2週間前、渋谷のスクランブル交差点にどこからともなく、丸く大きな球体が現れた。
もちろん、街はパニックに陥り、救急車やパトカーや機動隊やマスコミで、渋谷の街はあっという間に警戒態勢をしかれた。
丸い球体は、その全体がスピーカーになっているかのように"キーン"という耳障りな金属音を発すると、流暢な日本語を話し始めた。
「えーお騒がせして大変申し訳ございません。私共は銀河系252列C番地に存在するリズ星からやって参りました、宣告庁の者です。この度、地球の平和危機をお助けすべく、ある3つの任務を遂行させて頂きますので、何卒よろしくお願い申し上げます。
1つ目は、今から2週間後に地球上から全てのお金を消させて頂きます。
2つ目は、各国にリズ星へのご相談窓口を1ヶ月ほど設置させて頂きます。
3つ目は、この銀河系でいま一番問題視されているゴキブリを排除させて頂きます。
えーその他にも、数点対応処置を取らせていただきますが、細かいので今は割愛させていただきます。
以上となります。それでは、ご静聴ありがとうございました。」
街中、いや、世界中が一瞬、無言に包まれたのはいうまでもない。
誰もが“私は一体何を聞いたのだ?"と思った。
正人は、その出来事をテレビで呆然と、ただただ見つめていた。
(続く)
(あとがき)
ゾゾタウンの前澤さんの記事を読んで想像した物語です。続くと書きましたが、続くかもしれないし、続かないかもしれません。でも、空想すると楽しい世界なのは間違いないので、書きたいなーとは思います。