お母さんは、たまにわざと泣く。
私の変なお母さんは、いつも大体変なんだけど、この時は特に、ほんとに変な人だなーと思う。
お母さんは、たまに、「そろそろ泣かなければならない!」って、思い立つ日があるらしい。
私は、悲しかったり、悔しかったりする時にふつうに泣くので、"その日"を決めたりはしない。
"泣かなきゃならない儀式の日"は、ホタルノヒカリとか、海外の感動する映画とかをTSUTAYAから借りてきて、部屋を少し暗くして、ティッシュを用意して、大きなタオルケットに、弟と私とお母さんの3人で包まって大人しく観る。
けど、弟はすぐに飽きて、なんとかレンジャーみたい!とか、youtubeみたい!とか騒ぎ出す。
するとお母さんは、弟の耳にイヤホンをつけてyoutubeを持たせて、ほっておく。
そのうち、映画が悲しい場面になってお母さんは鼻水をかみながら、わんわん泣く。
私は、この変な儀式に慣れてはいるけど、それでもやっぱり、ちょっと引く。
お母さんは、満足するまで泣いて、映画が終わると
「あー!泣いたー!すっきりしたぁー!」と言って、この儀式は終わる。
「…あのさ?やっぱりこれ変だと思う。」(何度も言ってるけど、もう一回言ってみた。)
「えーそぉかなー」
「うん。もっと普通に観たいし、なんか…引く。」
「……あれ観て泣けない方が引くわ!このクールガールがっ!」
と、泣かない私にキレる。
どっちもめんどくさいけど、わんわん泣いてるより、ギャーギャーキレてた方がまだいい。
お母さんが言うには、体が疲れるとエステに行くとかマッサージに行くみたいなもので、心がもやーとした時に、わーと泣いて、心をスッキリ洗いたくなるらしい。
「大人は泣きたい時に泣けないコトが、多いからね〜たまに自分を泣かせてあげないと!」
と言っていたけど、付き合わされるこっちが泣きたいと思った。
山形県に住んでいる小学4年生です。小説や漫画を読むのが好きで、1年生の頃からメモ帳に短い物語を書いてきました。今はお母さんのお古のパソコンを使って長い小説「皐月と美月の夏。」を書いています。サポートしていただいたお金は、ブックオフでたくさん小説を買って読みたいです。