君と私の16年と8ヶ月
なんで泣いてるの。
なんでだろうね。
いつもは『行ってくるね』って頭を撫でていた私が
モカに『行ってくるね』って言われる日を想像するだけで
毎日涙が止まらない。
今日も私は『行ってくるね』ってモカを置いてきた。
どんな気持ちで私の後ろ姿を見送っているんだろう。
そう思ったら泣いちゃった。
16年と8ヶ月。
モカはいつも私を見送ってくれていたんだね。
息苦しそうな君を見かねて、酸素発生装置なるものを取り寄せた。
息するのも苦しいのに、ごはんも食べれないのに。
動くと発作が出るのに。
私が帰ると、君はみんなの声が聞こえるリビングまで歩いてくる。
みんなの気配を感じていたいんだよね。
酸素室でひとりぼっちで最期を迎える君は想像出来ないよ。
私が帰るまで待っててね。
君の苦しそうな顔を見てると、いまはその言葉も言えない。
よく頑張ったよ。
食欲のない君に何か食べれないかと色々作ってみたよ。
でも、君を苦しめてはいないかい。
私はどうしたらいいんだろう。
ヨーロッパに長期の出張行ったあと、
しっぽがちぎれるくらいの歓迎を受けると思っていたのに
私のこと、オバケを見るような目で見てたよね。
いつもそうやって私は君にお留守番を何回させたんだろう。
良い子だったねって、
褒めて貰って帳消しになるなんて思うなよ。
きっとそう言いたかったんだね。
16年8ヶ月分の行ってきます。
まとめてお返しする気だな。
ごめんね。
私は耐えられそうにないよ。
モカのはじめての行ってきます。
行ってらっしゃいって、私はいい子で見送れそうにないよ。
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