海と私と詩の朗読コンテスト
少し前に、こんな夢をみた。
夢の中で、即興詩の朗読コンテストに出場していた。
私はどうやら詩人の卵みたいな、ある程度の才能が認められている者として出場をしていて、周りから期待されているという設定だった。
そしていよいよ出番がきた。
私はゆっくりと詩の世界にひたりながら、得意げになって詩を朗読した。気持ちがいい。
私ひとりが今、この瞬間を支配しているかのようで、胸の鼓動が鳴り響くのを感じるのである。
審査員たちが穏やかな表情で聞き入っているのを、私は視界の隅で認識していた。
この時、不思議なことに詩の中の世界と同じ状況が、わたしをとりまいていたのである!
(以下がその朗読した詩だ)
☆★
気づいたら、辺り一面、
海、海、海だった
自分しかいない。
少々荒れた、藍色の大海が目の前にあるだけ。
夜に近づいているかのような、
少し暗い曇り空とのコントラストも、
実に不気味である。
小波の、「ざぱん」という音がリズムよく
聞こえてくる。
こんな状況でもぼくは悠長に
プカプカと漂っている。
何にもしていないんだ。
あれ?
少しばかり先程から、自分の足が何かの上に
乗っている感覚があるんだ。
体は全然苦しくなくて。
なぜだ?
しばらくこの状態がつづき、
ぼくは浜辺へと近づいていく。
ゆっくりと、着実に。
そして、
なんと!
浜辺に到着した瞬間、
ぼくを乗せてくれていたクジラの存在に
気づいたのだった。
☆★
もちろん、これは実際に夢の中で朗読した詩とは違うのだが、できる限り情景を思い出して書いてみた。
それにしても、なんてつまらない詩なんだ。
いざ書いてみると、味気ない詩になっているではないか。
こんな内容の詩でも、夢の中では得意になっていたのだから面白いものだ。
だが、これはあくまでも夢の中で、しかも即興で読むからこその詩なのである。だから仕方ないのだ。
それにしても、夢から覚めてみると、このように落胆することはしばしばあるものだ。
さて、夢の続きだが、結局その後のコンテストの結果がどうなったのか分かっていない。
詩を披露し終えると、突然画面が切り替わり、私は部屋の中にいた。
窓の外をみると、目の前が海だった。
少々荒れた藍色の大海だったので、おそらく
さきほどまで自分がいた海と同じなのだろう。
海を見つめていると、そこでようやく夢から覚めるのだった。