見出し画像

電影観察

2024/6/14発行 夏号(1059号)

 チャップリンの無声映画に想う
「チャールズ・チャップリン」の名を知らない人はいないだろう。誰だってその名前を聞けば、山高帽を被り、チョビ髭を生やし、ステッキを持った1人の男を思い浮かべるはずだ。しかし、彼の映画 を見たことある人はかなり少ないのではないだろうか。彼の映画はコミカルで喜劇的な側面が強いが、 実はチャップリンの映画のテーマはどれも現代社会に通じ、我々が観ても十分に楽しめるものなのだ。 まず紹介したいのが、『PAY DAY』である。チャーリーが建築現場での労働で貰ったなけなしの給料 を使い夜更けまで同僚と呑み、翌朝チャーリーの財布を握る妻の元へと帰り、こっぴどく怒られると いう、ギャグ満載ではあるもの何とも哀しきストーリーである。現代日本の多くの労働者の置かれている境遇とも重なり、笑える映画でありながらもとどこか共感できてしまうストーリーが魅力だ。また同様な映画に、『Modern Times』というものがある。これも有名な作品であるが、やはり観たことのある人は少ないだろう。この作品ではチャッフプリン本人が演じる労働者が工場での単純作業で精神錯乱を起こす過程や、「Feeling Machine」が故障し暴走する様子が描かれる。現代では長時間労働や、機械やAIによるリスクが取り沙汰されているが、それをチャップリンはなんと約90年前に描いて見せたのだ。当然のことながら、現在の日本社会の源流はアメリカの資本主義社会であり、それが現代の資本主義と近い形にまで成長したのが20 年代のアメリカ都市部である。大量消費社会の幕開けは大衆文化の開化をもたらしながらも、長時間労働をはじめとする様々な社会問題をももたらしたのである。これらの社会背景の中で作られたチャップリンの作品は、白黒の無声映画でありながらも今の日本の社会状況と重なる部分が多い普遍的なストーリーが醍醐味だ。また無声映画は台詞が無い代わりに、場面における状況や登場人物の心情を音楽で表現しているため、英語が苦手でも楽しめる。 チャーリーの作品には他にも「The Gold Rush」や「The Great Dictator」など、コメディと映画の歴 史に残る珠玉の名作揃いだ。長さも1時間以内のものも多いので、是非一度観てみてはいかがだろうか。 (筒口実月)

いいなと思ったら応援しよう!