引退競走馬杯出場馬の傾向
〈はじめに〉
12月19日(日)に引退競走馬杯(障害・馬場)の2021年ファイナルがJRA 東京競馬場で行われる。本レポートでは、各地方予選に出場した乗馬の情報を血統(種牡馬)ごとに集計、その傾向をまとめた。
〈引退競走馬杯とは〉
引退競走馬杯は競走馬登録されていたサラブレッドが引退し、乗用馬として用途変更した際に出場できる競技となっている。2021 年度は、各地域で障害馬術14会場、馬場馬術4会場(L1 課目、新馬課目の2種目)、計18会場で予選大会を開催された。その地域大会より選抜された馬のファイナル大会(障害馬術28頭・馬場馬術L1課目12 頭)が今週末東京競馬場にて開催される。出場馬には制限があり、公益財団法人ジャパン・スタッドブック・インターナショナルに血統登録(内国産、外国を問わず)され、日本中央競馬会、地方競馬全国協会の競走馬として最終レースが平成 30(2018)年1月1日以降の出走歴持つ3歳以上の馬とする。また、未出走馬は年齢が3歳以上7歳以下と制限があり、各大会1種目に1頭の馬が複数回出場することはできない。
(公益社団法人全国乗馬倶楽部振興協会『2021RRC (Retired Racehorse Cup・引退競走馬杯)について』より)
〈障害馬術競技の傾向〉
障害馬術競技は、3歳〜11歳まで計474 頭の出場があった。以下、出場した乗馬の種牡馬ごとの上位 5 頭を記載する。なお、重複出場馬は除いて集計した。
最も多かったのはディープインパクトで、14頭出場していた。またディープインパクトとハーツクライ、ブラックタイドは父がサンデーサイレンスで共通している。また、ブラックタ イドはディープインパクトの全兄でもある。各種牡馬の産駒頭数(3 歳〜11 歳)に対して、本障害馬術競技に出場した頭数の割合は概ね1%程度だったが、その中でも最も割合が高かったのはヴィクトワールピサだった。
〈馬場馬術競技の傾向〉
馬場馬術競技はL1 課目競技・新馬競技(ファイナルは実施なし)の2競技が実施され、4歳〜13歳まで計125頭の出場があった。以下、出場した乗馬の種牡馬ごとの上位 5 頭を記載する。なお、重複出場馬は除いて集計した。
馬場馬術競技では、障害馬術競技と同じように上位にディープインパクトとハービンジャー がランクインした一方、クロフネやステイゴールド、タイキシャトルといった、障害馬術競技では上位に入っていなかった種牡馬がランクインした。各種牡馬の産駒頭数(4歳〜13歳) に対して、本馬場馬術競技に出場した頭数の割合は概ね0.5%程度だったが、その中でも最も割合が高かった種牡馬はタイキシャトルだった。
〈まとめ〉
競走馬は、競馬に勝つために全力で速く走ることを求めてトレーニングされている。乗馬 (馬術)では、ライダーが求めることを冷静にこなすことが求められる。障害馬術競技は、 競技場内の障害物を決められた順に、できる限り落下や拒止などのミスなく飛越し、かつ、早くゴールすることを競う。一方、馬場馬術競技は、フィギュアスケートのようにその演技の正確さや美しさを競う。
このように、求められることが競走馬から乗馬になることで変化し、さらに競技種目によっても異なっている。必然的に、各馬には適性があるのではないかと仮定することができる。 馬にとっても、より適正の高い道に進む方が良い。 以前より、乗馬に適したサラブレッドの血統について議論があったが、実際に調査した事例 はなかった。そこで本レポートでは、引退競走馬杯の出場馬をもとに分析を行った結果、各競技で違った傾向がみられた。
ただし、対象データ数が少ないことから、今後調査を重ねて いく必要がある。
まずは、明日の引退競走馬杯ファイナルの結果を楽しみにしたい。
以上
本レポートに使用したデータは公益社団法人全国乗馬倶楽部振興協会HPより参照
※HORSMARTでは、引き続きこういった調査などを行っていきたいと考えております。
他に調べてほしいことなど、ご意見・ご要望をお待ちしております。
HORSMARTリサーチ部
2021年12月17日
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