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対州馬の飼養と調教 36「 イノシシは対州馬にとって害があるか 」

害はありません。
山の中の放牧地でも新しい放牧地でも、山中に餌が不足しているのか、ひん太のすぐ傍までイノシシはやってきました。
最初の放牧地では、その強大な力とイメージに恐れをなし、ひどく心配になり、対馬の保存会などに対策情報を求めました。
その時、「ラジオをかけっぱなしにすると効果がある」と聞いたので、夜中など放牧地を離れる時には防水ラジオを馬が触らない場所に置いておきました。
近くの畑所有者は鉄製の檻を仕掛け、猟友会も動き回っていると言っていました。しかし、結局何もおきませんでした。
新しい放牧地はかなり民家の傍なのですが、ここにもイノシシはやってきました。親一頭の時は、私の姿を見ると逃げるのですが、ある時子どものウリ坊を連れた母イノシシが姿を見せるようになりました。
母イノシシは、やはり子どもを守ろうとするのか、逃げません。
しかし、イノシシは馬に何もしないし、馬とイノシシでは共通する食料もないので、放っておきました。
ある時、ひん太を曳いて外にいる時にこの親子に出くわしました。ウリ坊はさっさと藪の中に逃げたのですが、母イノシシはこちらをずっと見たまま動きません。
さすがに自分より大きな馬が近づいてきたら逃げるかと思い、ひん太を曳いて少し母イノシシの方に歩いたのですが、母イノシシはまったく動じることなく動きませんでした。
直観的に「これ以上進めると、ウリ坊を守るために突っ込んでくるな!」と予感し、引き返すことにしました。
結局、このニアミスもまったく問題ありまんでした。
イノシシだって馬と同じ生物ですから、何もしないのにやたら攻撃してくることはないと私は確信しています。
我が子を守ろうとするのは、それこそイノシシも馬も、そして人間も同じでしょう。
ただ私はミミズなどを掘っている時に間違って柵内に入ってしまうと、馬が興奮して怪我する可能性も完全に否定できないので、柵に動物除けのスチールネットを巡らせていました。
これは、馬が頭を柵に挟む事故を防ぐ意味の方が大きかったのですが。
私は正直言って、SNS上でイノシシなどを仕留めて、その亡骸を得意げにさらすような人間がすきではありません。
むしろ馬にとっての一番の害であり脅威は、何をしでかすかわからない人間の方なのです。


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江島 達也/対州屋
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