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また、おっちゃかしたと!?

  「また、おっちゃかしたとね! ちゃんと持っとかんばよって、ゆうたやろ。まだ、ひと口しか食べとらんやなかね。もうダメばい。ねえちゃんとは、やられんけんね・・・。少ししか、わけてやられんけんね。半分以上はやらんよ・・・ってあんたいつも半分以上食べるとやけんが。あ~あ」

◇ ☆彡 ☆彡 ☆彡

 おふろ屋さんに行くこと自体が特別なので、その上にアイスやコーヒー牛乳を買ってもらえるなんてことは、ほとんどなかった。

私が幼いころ住んでいたアパートは、まだおふろがついていなかった。だからアパートの近くにはおふろ屋さんがあり、たまに入りに行ったものだ。

 でも、そうしゅっちゅう行くのは、ぜいたくなので、どうしていたかというと、みな、アパートのベランダにふろオケをおき、そのまわりをベニヤ板でかこって、おふろに入っていた。ちょっとすき間もあり、冬には寒いこともあるが、みな、そんなおふろを楽しんでいた。

  ベニヤづくりなので、けっこう音も外に聞こえることになる。でもそれは、子どもたちのはしゃぐ声や、親の「ほら、ちゃんと洗わんね!」という声が、水音にまじって聞こえてくるというもので、いわば、シアワセな音だった。

  古いアパートもあんがい、いいなと思うのは、そういうことだった。

夕方、下を歩いていると聞こえてくる、家族の会話。だれかが練習するピアノやリコーダーの音。そして、おいしそうな夕げのにおい。上と下で話をしたり・・・。

きっとひとり暮らしをしていても、さびしさを感じなかったのではないかと思う。

そんな古き良き昭和のアパートも今は姿を消そうとしている。

僕の子ども絵日記-38c

(雲仙市小浜町おたっしゃん湯)

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江島 達也/対州屋
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