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『 行ってきます! 』(東彼杵郡・波佐見町・中尾郷)


「なんかランドセルの歩きようごたるねぇ」

「ああ、だいかて思うたら、さっちゃんね!? そこらばヨチヨチ歩きよったと思うたばってん、もう小学校ね。早かねぇー」

「ほんなこと、子どもは大きゅうなるとの早か」

「うん。ばってん、こっから小学校ゆうたら、たいがいあるばい!? ワシとチロでん歩いたらけっこうな時間のかかるばい」

「ホント、小さかとにえらかねぇ」

「こらチロ、なんばお前まで張り切りよっとか、お前は行かんちゃよかと」

「チロはさっちゃんば大好きやけんねぇ。じいちゃん、ちょっと下んにきまでチロと送ってやらんね」





春。入学、進学のシーズン。
波佐見町中尾郷を舞台にその風景を思いえがいた。

3月生まれのウチの息子はみんなよりいつも頭ひとつ小さく、見るからにたよりなげだった。

保育園は送りむかえをしていたので、ひとりで買い物に行ったこともない。

入学ひと月前に「おかし、とうちゃんのびーる」と書いたメモを持たせ、近くのスーパーにお使いに出すと、なかなか帰って来ない。

帰ってきた息子に話を聞くと、やっぱりヘンな道を行ってしまったとのこと。

自分のおやつは買えたものの、ビールは売ってもらえなかったのだと。

でもそんな小さなことでもできたことがすごくうれしかった。

そして入学式。翌日は嵐のような大雨。
本当に歩いて行けるの!? 

坂の途中まで送ってやって、雨の中を黄色いカサとぼうしとランドセルがヨタヨタと歩いていく・・・。

その日、「ただいま!」と帰ってきた息子の笑顔を見て心配はふきとんだ。

今では友達と元気に登校しているが、毎朝姿が見えなくなるまで見送っている。

いつか青年になり、家から、自分から巣立っていく日の姿をうっすらと想像しながら。


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僕の子ども絵日記-26



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江島 達也/対州屋
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