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100年前に描かれた、何気ない1枚のイラストが語り掛けてくるもの
妻と娘と、久しぶりに浜屋のレストランに行ってみることにした。
まだ、子どもが小さかった頃。
屋上のプレイランドで遊具に乗った後、8Fのレストランで食べて、更に7Fのおもちゃ売り場に寄る。
これが、「ゴールデン・コース」なのだった。
すいてるだろうと思いきや、20分待ちの行列!サービスがしっかりしていて、美味しいので、年配のファンもかなり多いらしい。
やっと席について、待っていると壁に架けてある小さなポストカードの額が目に付いた。(下の画像)
何となく気になるイラストで、近寄ってよく見ると、ボロボロの服を着た二人の子どもが、何やら液体の匂いをかいで、「うっとり」している。
昔からそこにあったに違いないが、昔はそんなの、気にも留めなかった。
しかし、今は携帯というインターネット・ブラウザーがある。
「Bisto」で調べてみると、英語のwikipediaが翻訳されて表示された。
実はこれ、115年くらい前からイギリスとアイルランドで発売されてきた、グレービー・ソース(最初はパウダー)の商品名だった。
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イラストを描いたのは、ウィル・オーウェンというイラストレーターで、この「ビスト・キッズ」が広告として新聞に掲載されたのは、なんと戦前の1918年(大正8年)のこと。たちまち人気キャラクターになったらしい。
「それにしても何故、この二人はボロボロの服を着ているのだろう?まだこの時代、肉を食べるなんて、一般的ではなく、貧しい人が多かったからだろうか?」
「グリーンはアイルランドのカラーであるから。女の子の服は、アイルランドを表していたのではないか?」
「女の子の髪色は赤毛だから、やはりアイルランド人を表しているのだろう。すると男の子の方は、白いシャツがイングランド、紺の上着がスコットランド、赤い帽子がウェールズを表しているのだろう」
などと、しばし会話が弾んだ。
まさかウィル・オーウェンも、100年以上も経って、地球の反対側の国の端っこにある県のそのまた小さなデパートの食堂で、こんな風に興味を持たれているとは想像すらできなかっただろう。
何気ないイラストだが、改めてイラストレーションというのは、すごい魅力と影響力を秘めているものだと思った。
また長崎とアイルランドなどのカトリック国は、実は縁が深い。
今、世界遺産に登録されている長崎のカトリック教会群は、明治期に造られたものが多いのだが、その建築資金は、アイルランドなどの貧しい人々の浄財によるところが大きいのだ。
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