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GIF動画 「お先にドーゾ!」(対馬市・厳原町・阿連)
『 お先にドーゾ! 』(対馬市・厳原町・阿連)
「まいちゃん、今日は顔色のよかね」
「うん。おばちゃん、うち、もうすぐ卒業やけん、今度から、どこへでん、歩いていくばい!」
「へぇ、そりゃ大変ばい。きつうなったら、こんワカバに乗せてやっけんね」
「うん。ワカバもこがんしてがんばりよっとやっけん、うちも負けられんとよ」
◇
長崎はどこへ行っても、細い坂道が多いもので、うちの近所であっても、どこへ通じるのか、わからない道がたくさんある。
ある年の春先、坂道の写真をとろうと思って歩いたことがあった。予想通り初めて通る道ばかりで、思いがけない場所に出たりして、とても楽しかった。庭先の花々に心いやされ、小さなベンチや広場などには、その地区の生活がうかがえた。また、「地域ネコ」と言うのか、なわばり?を守るネコたちが多くいて、近づいていくと「ニャンだ、お前は?」というような顔でじっと見られた。そんな時は「ゴメン、すぐ行くけんが」と声に出し、足早に立ち去った。
おどろいたのは、電器屋さんなどが、登山者のように背中に荷物をかついでいく姿だった。でも、そんな場所だからこそ、すれちがう人は温かい人が多かった。あるお年寄りの夫婦は、やってくる私の姿を見つけると、おじいさんが、おばあさんの後ろに下がって道をあけてくれた。最高にかっこいい姿だと思った。
そんな坂道を人のためにがんばって登っていたのが、対州馬(たいしゅうば)。小がらだけど、おだやかで力持ち。大村で会った対州馬は、遠くから呼ぶと、初めはモジモジしていたけど、だんだん近寄って来て、最後は犬のようになつき、あまえてきた。すっかりこの馬にホレてしまった。この働き者で感じの良い馬が再び坂道を歩く姿を見てみたい。それはきっと、やさしい街に似合うから。(長崎新聞社刊・僕の子ども絵日記~ながさきの四季より)
イラストの中に出てくる「まいちゃん」という名前は、難病によって2005年3月16日に15歳の短い生涯を閉じた福岡県の江崎 舞さんからとらせて頂いた。
江崎さんを知るきっかけになったのは、NHK「みんなのうた」で2009年の10~11月に放送された「My wish」という楽曲。
「My wish」は、舞さんが生前の入院生活の中で綴ったとされる一遍の詩が原型となって生まれたもの。
この楽曲が流れる時のアニメーションを見た幼い娘が、登場する「トンボの女の子」が、保育園の友達に似ている!として、親子のお気に入りの曲となった。
私の大好きな対州馬と対馬の石屋根を、まいちゃんという仮想の女の子と描くことで、江崎 舞さんの生きた証を少しでも知らせるお手伝いになればと思い描いたものです。
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