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私が対州馬を絶滅から救いたいと思う理由  その53

蹄が伸びる


最も苦労した事のひとつが「蹄(ひづめ)の処理」でした。

自然界に生きている野生の馬や、頻繁に柵外を歩く馬であれば自然と蹄は削れるのですが、どうしても柵内中心の馬となると、蹄が伸びてきてしまいます。

放っておくと、バランスが悪くなったり、健康面でも悪い影響を泳野してしまう為に、定期的に蹄を削る必要があります。

一般的には削蹄士(さくていし)という蹄を削る専門家に頼むのですが、その削蹄士は、蹄を削る技術はあっても、馬に脚を黙って上げさせる術は持っていません。

ひん太のような半野生馬は、黙って脚を上げさせるように訓練する必要があります。
これはなかなか大変なことでした。

ご存知のように馬が相手を攻撃する場合、後ろ脚で蹴り上げます。これはなかなか強烈な一撃であって、打ちどころが悪いと人間の場合、大怪我をしてしまいます。

よく、競馬のテレビ中継を見ていると尻尾にリボンを結んでいる馬がいますが、これは「この馬は蹴りグセがあるので注意!」という意味です。

私は結局、一度も蹴られることはなかったのですが、私の友人で何度か世話を手伝ってくれていた友人は、一度軽くですが、蹴られてしまいました。

私は、「馬に蹴られるようでは、信頼関係など結べない」と考えていたので、この「脚あげ」にも非常に気を遣って時間をかけました。


まず前脚からです。
上げて欲しい方向に手のひらでひん太の脚に圧を加えます。これは強すぎても弱すぎてもいけません。

そして圧をかけるときに「はい」という声をかけます。
すぐに上げなかったとしても、しつこくはやりません。
これを何日も何日もかけて気長にやりました。

そのうちにパッと脚を上げる(折り曲げる)瞬間がきました。
これを繰り返していつ内に、何も圧を加えていないのに、脚を上げることもありました。
これはなかなか感慨深い出来事でした。


しかし、後ろ脚はそうはうまくいきませんでした。
ひとつの大きな原因は、経っている場所がまっ平らではなかったということです。

脚は300㎏ほどの体重を支えているわけなので、バランスを保つために平らな場所で行う必要があります。
しかし、私が行っていた場所は借りていたので、コンクリを打つことができなかったのです。

しかし、そういう練習に時間をかけている間にも蹄は伸びます。
私は、鉄製のやすりを購入して試してみました。


するとイメージよりも蹄は堅いものでは無く、ひん太は大人しくやすりをかけさせました。

とりあえずは、問題を回避することとなりました。


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