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「ひまわりは枯れてこそ実を結ぶ」堀 文子さんの言葉
早朝にたまたまテレビをつけると、堀さん(故)のインタビューをやっていて、堂々と「政府がまた戦争をやりたがってるんではないか」とか「隣組なんてのは、密告組織ですよ」と言った歯に衣着せぬ物言いが新鮮で、標題の本を購入し読んでみました。
感想を一言で言うと、「この人は圧倒的に裕福な階層の人だな」ということ。
若くして夫に先立たれた後は、大磯に土地を買って転居したり、イタリアに3年間住んだり、軽井沢にもアトリエを持ったりと、あまりにも一般庶民とは次元が違う。
表題の書も、堀さんの言葉を集めたものだが、それは堀さんが記録しておいたものではなく、インタビュー集から拾い集めたものだとわかる。
それ故、行動と言葉の矛盾も有ったりする。
しかし、堀さんのファンが多いということはうなづける。
自分は群馬大学の美術科に在籍していた。
「アート」に関してうんちくを語る先輩や同級生は、教育学部の美術科であるにも関わらず、かなり多かったように記憶している。
しかし、「この人は何か面白い」と感じさせてくれるような人は(自分には)いなかった。
堀さんのような先輩、或いは同輩がもしいたら、語り合ってみたかったなと思うような魅力のある人である。
その書の中から目にとまったものを幾つか書き出してみる。
(前略)「長生きですね」と言われますが、齢がたまっただけのこと。
歳をとったから偉いなんて、冗談じゃない。去年より偉くなった、なんてそんな馬鹿なことはありません。(中略)それを祝ってあげると言われても「ふざけるな」と言い返したくなる。(後略)
私の人生は誰かの真似をしたものではありません。
自分で初めてよじ登る山のようなものです。
「がんばる」とか「努力」とか私、いちばん嫌いなんです。
嫌いなものをしているから出てくる言葉だと思う。
私は好きだから絵を描いている。だから「がんばって」と言われたくない。
どんな雑草でも、自分の力で死ぬまで生きている。
それを見ることが、今の私の刺激です。
情報に寄りかからず寄りかからず、国なんかに頼らず、自ら頭を働かせ、自らの手や足で生きる生物としての力を取り戻さなければと思います。
人間が生物としての自然を失えば、人類はきっと滅びてしまいます。
ひとりがいいです。歳をとっても不便でも。
親を背負って飛んでいるスズメなんて見たことありますか。
生物はその時が来れば黙って去っていく。
私もいずれ、その時を、初体験するのだと覚悟しております。
日本は日露戦争で勝ってからおかしくなったのかもしれません。大国ロシアにとっては蚊にさされたようなものですよ。革命前夜でそれどころじゃなかったのだから。でも勝ったと信じて、日本は自分たちを大国だと思ってしまった。日本は今でも大国なんかじゃありません。勘違いし続けているから、これほど劣化してしまったのかもしれませんね。(後略)
長上を敬い、つつしみを弁え、自然の中で育てた日本人の美意識は姿を消した。敬語も失い、グルメとブランド物を追う、恥を忘れた群衆にもまれ乍ら、文明の行きつく先はこんなにも無惨なものかと、変貌した東京の片すみで私はぽつねんと佇んでいる。
起承転結の”結”は、恰好つけるためだけのものです。
私には”結”がございません。
私は”結”なしでこの世から消えていきます。
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