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【意味が分かると怖い話/タイトルは一番下】



1回目の目覚め


男は目を覚ます。

部屋の天井は見知らぬ模様で覆われており、窓の外には鈍い灰色の空が広がっている。

時計を見ると午前3時15分を指している。

「……またこの時間か」

彼はベッドのそばに置かれたノートを開き、今日の覚醒を記録する。


「目覚め1。場所不明。記憶、部分的。」

これが初めてではない。

何度目かわからないが、彼は「目覚める」たびに違う街にいる。

いつも、目覚めた瞬間に何かを失った感覚がする――それが記憶なのか、もっと抽象的なものなのか、彼自身にも分からない。

部屋を出て街を歩く。道行く人々は無表情で、彼に気づいているようで気づいていない。

ただ、一人の老婆が彼をじっと見つめていた。老婆は震える声でこう言った。

「また戻ってきたのか……」

男は答えようとしたが、次の瞬間、視界が揺れ、再び目を閉じることになった。




2回目の目覚め

今度の目覚めは別の場所だった。

男は白い部屋で、真っ白なシーツのベッドに横たわっていた。

天井にはカメラのようなものが設置されており、目が合った瞬間、カメラが動いたように見えた。

「……ここはどこだ?」

記憶を辿ろうとすると、頭に鈍い痛みが走る。

ふと枕元にノートが置かれているのに気づく。

それは彼が前の場所で使っていたものだ。ノートには走り書きでこう記されていた。

「君が次に目覚めるとき、何かが奪われる」

男は不安を抱えたまま、白い部屋を出た。

廊下の奥には一枚の鏡があった。
彼はそこに映る自分の顔をじっと見つめる。だが、その顔がどこか他人のように感じられた。



3回目の目覚め


男は次に目を覚ましたとき、完全に知らない顔をしていた。部

屋の窓ガラスに映る自分の姿は、彼の記憶にある顔とまるで違っていたのだ。

「これは……どういうことだ?」

記憶の断片が頭をよぎる。

老婆の言葉、「また戻ってきたのか」
前回のノートのメッセージ、「何かが奪われる」

彼は急いで部屋を出る。
街を歩くたびに、通りすがる人々の顔がぼんやりしていく。

そして、何かを囁いている。

彼は足を止め、近くのガラス越しに反射する自分を見た。そこに映る顔は――もはや人間ですらなかった。



最後の目覚め

男は暗闇の中で目を覚ます。

今度は、何も見えず、何も聞こえない。
ただ、頭の中に響く声があった。


「ようやく辿り着いたね。君が探していたのは『ここ』だった」

男は声の正体を知るため、周囲を探るが、そこには自分自身しかいない。

そして気づく。
この声は、自分自身の声だった――それも、自分がかつて持っていた記憶の残滓から生まれたものだったのだ。

街も部屋も老婆も、すべては彼の「断片化された意識」が作り出したものだった。そして、最後に彼が完全に理解した瞬間、すべてが消えた。


タイトル:正体



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