【意味が分かると怖い話/空白】

2024年9月28日 21:30

主人公とその友人たち、美咲、翔太、恭子の4人は、都会から離れた山奥にある古びた旅館に週末旅行に出かける。

ネットで見つけたその旅館は、口コミも良く、自然に囲まれた静かな場所にあるため、彼らはリフレッシュを期待していた。

到着した旅館は、想像以上に古めかしく、少し不気味な雰囲気を漂わせていたが、誰も特に気にすることはなかった。

彼らは荷物を置き、旅館の広い廊下を歩きながら、不思議な装飾品や古い写真に見とれる。しかし、その中の一枚の写真に不自然なことに気づく。

写真には彼ら4人が写っていたのだ。

全員が初めて訪れる場所のはずなのに、なぜ自分たちが写っているのか誰も覚えていない。だが、不安を感じつつも、その場をやり過ごす。

翌朝、最初の異変が起こる。

美咲が目を覚まし、突然「自分の名前が思い出せない」と言い出す。

彼女は自分のことを何も覚えておらず、驚きと混乱に包まれていた。

最初は「疲れているのだろう」と皆で慰め合ったが、徐々に彼女は友人たちの顔すらも忘れていく。

さらに恐ろしいことに、次は翔太が「なぜここに来たのか」「誰と来たのか」を覚えていないと言い出す。

時間が経つにつれ、彼の中の記憶も次第に薄れていく。そして、恭子も自分の誕生日や家族のことを思い出せなくなり、パニック状態に陥る。

主人公もまた、徐々に自分の記憶が曖昧になっていくのを感じ始める。

しかし、誰が彼らの記憶を奪っているのか、どうしてそんなことが起こっているのか、誰にもわからない。

旅館の中は異様に静かで、他の宿泊客の姿も見えず、スタッフすらもどこか影の薄い存在に感じられる。

旅館を管理している謎の男が現れる。

彼は穏やかな口調で「ゆっくり休んでください」とだけ言い、何も説明しようとしない。

しかし、管理人が出入りするたびに、彼らの記憶が一層消えていくことに気づき始める。

記憶が消えていく感覚は、「自分という存在が曖昧になるような恐怖」として描かれる。

主人公はかろうじて残った記憶を頼りに、部屋中を探し回り、過去の自分たちの写真や日記を見つけようとする。

だが、見つかるのは古びた旅館の書物や、過去にここを訪れた宿泊者の名前が並ぶリストだけ。彼らの名前もそこにあった。

そしてさらに奥に進むと、そのリストのページに「消された名前」の部分が無数にあることに気づく。彼らの名前も、そこに追加されていたのだ。

最後の晩、残されたわずかな記憶で主人公は仲間たちを集め、逃げ出そうとするが、彼らはもう完全に互いの名前も存在すらも忘れてしまっていた。

旅館を出ようとするも、出口を見つけることはできず、何度も同じ場所を彷徨い続ける。

管理人が再び現れ、「君たちはここに永遠に留まる運命なのだ」と冷たく言い放つ。

彼は彼らに過去の罪や負い目を問いただすが、誰も自分が何をしてきたのかを思い出せない。

彼らは完全に自分たちの存在が消えていくのを感じながら、絶望に沈む。

最後に、主人公が目を覚ますと、旅館のベッドに一人で横たわっている。仲間たちの姿はどこにもない。

鏡を見ると、彼の目に映る自分の顔は、徐々にぼやけ、消えつつある。そして、その傍には古びたリストに自分の名前が書き加えられている。

主人公が完全に自分の存在を忘れた瞬間、管理人が静かに微笑み、旅館にまた新しい客が来る音が聞こえる。

彼らもまた、自分たちが過去にここを訪れたことを忘れている。

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