【怖い話】3年遅れてやってくる
「それ、3年前くらいに流行ってたよね?」
僕の服を見て、友達が言った。
いつも私はそうなのだ。
意識してやっているわけではないのだが、「あ、これいいな」と思ったものが、たいてい、ひと昔前のトレンドなのだ。
流行りの映画やドラマ、ファッション、言葉使いもそうだ。
僕には、全てが、人より遅れてやってくるみたいだった・・・。
ある日、知らない番号から電話がかかってきた。
「あ、もしもし、Aくん?私、Bだけど、覚えている?」
Bちゃんは、3年前まで同じ店でアルバイトしていた女の子だった。
仲良くしてたが、バイトを辞めてからは一切、連絡を取っていなかった。
「急にどうしたの?」
「あのさ、今度、暇だったら一緒にご飯食べにでもいかない?久しぶりに」
Bちゃんと日付の約束を取りつけて電話を切った。
3年後の誘い・・・。
こんなものまで遅れてやってくるのかと僕は少し自嘲気味に笑った。
よく考えてみたら、映画やドラマ、ファッションなども全て3年前くらいに流行ったものばかりだった。
自分には3年というスパンでいろいろなものが遅れてやってくるのかもしれないと思った。
その日、アパートに帰ると、郵便ポストに新聞が入っていた。
紙の新聞など、とうに取るのをやめているのに。
不思議に思って見てみると、3年前の日付の新聞だった。
また、3年前・・・。新聞まで3年遅れで届くとは。
この現象は何なのだろう。
得体の知れない現象への恐怖からか、ブルッと背筋に寒気が走った。
Bちゃんとの食事は、久しぶりに会うのが嘘のように話が弾み、楽しかった。こんな子と付き合えたら楽しいだろうなと思った。
「でも、ほんとAくんが元気そうで、よかった・・・」
Bちゃんが話題を変えて、ポツリと言った。
「何が?」
「だって、ほんとにあの時は心配したから。後遺症とかないかなって」
「あの時?」
「まさか、もう忘れちゃったの?いくら何もなかったとはいえ、あんなことがあったのに」
「何の話?」
「3年前のAくんの送別会の帰り。Aくん、酔って、車道に出て、トラックに思い切りはねられたじゃない。けど、Aくん、何事もなかったかのように起き上がって、ケロッとしてて。私、本当に気を失うかと思いくらい怖かったんだから」
僕は全てが3年遅れてやってくる・・・。
ポタッとテーブルの上に赤い液体が落ちた。
鼻から血が出ていた。
「Aくん、どうしたの?」
僕は全てが3年遅れでやってくる・・・。
「Aくん?」
視界が霞む。音が遠くなる。
身体中がバラバラになるように痛い。
僕には、死すら、3年遅れで・・・。
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