歩く

 公共交通機関で通学したことがない。
 小学校も中学校も徒歩30分以内、自転車をこぐ方が疲れるほどの坂道だった。高校は遠くて、しかもバスの本数が少なくて、坂道が多いのもあって、親に車で送ってもらっていた。
 だから、高校を卒業するまで、私の移動手段は、徒歩、一時間に一本しか来ないバス(今は二時間に一本)、自分じゃ運転できない自家用車だった。
 
 大学生になって、自転車を使うようになった。
 最初のころは、自転車が嫌でサークル棟に歩いて通っていたけれど、移動じゃなくてサークルがメインだからと(あとは、夜の独り歩きを怒られたので)使うようになった。今は、徒歩で移動なんて悠長なことをしている余裕がないので、自転車移動が当たり前だ。

 私はやっぱり徒歩が好きだ。特に朝方と夕暮れ。空色と紺色の間の空が薄い時間帯。 

 朝は今日したいこと、夕方は今日したこと、そして夜にすることをぼんやりと考えながら歩く。悲観的な自分が一番楽観的なのが、歩きながらものを考えている時だ。地に足がついている、とは言い得て妙だと思う。
 まあ、妄想に取りつかれたおしまいオタクもやっているので、想像力(妄想力?)が暴走してひどい話を思いついたりもする。

 この時期は、自転車で移動していると、風の悲鳴がひゅうひゅうと耳の横で聞こえるけれど、徒歩だと少し薄れる。キンと冷えた空気は、ゆっくりと進むから楽しめる。

 秋学期が始まって、一人でぼんやり何かを考える時間がなくなった。

よぼよぼな体は、効率効率効率と暗示をかけても動いてくれないどころか、へそを曲げてあっかんべー。何事も早く過ぎ去りすぎて、捕まえることができないのがご不満らしい。自分のペースで忙しいのは、どうにかできるけど、他に振り回されて忙しいと、頭はからっぽなのに何も吸い取れずに終わってしまう。うう、くるしい。

 歩きたいのは、自分のペースで動きたいことの表れかもね。自転車はやっぱりあくせく動く日常生活が思い起こされてしまって落ち着かない。

自転車が好きな人は、くるくる移り変わる景色と風の速さが好きなのかしら。それとも、徒歩は遅いから嫌いで、ただただ安くて速い移動手段として重宝してるだけかしら。他に何か理由はあるかしら。

 私は徒歩が好きです。皆さんはどうですか。

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