文房具、特にすきな万年筆の話

 文房具が好きだ。
 そしてこの前の金物道具市場にふらふらと足を踏み入れて分かったことだが、どうやら人が使う道具全般が好きであるらしい。人が何の気なしに適当に選んだ道具、こだわりぬいて選んだ道具、どちらも素敵だと思う。

 筆箱の中身の変動が激しい自覚がある。高校時代はひどかった。ほんとうに毎日変わる。今は高校時代に比べたら筆箱の出番が多くないので、ちょっとましにはなったのだけど。

 大量の筆記具たちの中から今日の気分に会うものを選んで連れていく、楽しい筆箱組みの作業が日課だったあの頃を思い出す。
 大量の筆記具たちのなかには毎日選ばれるような人たちもいる。あとは、 週に一回ぐらい出ていくやつ、月一、家から出さない子、とか、大量の文房具の中にもなんとなく区別があったとおもう。シャープペンなんて、昔は太軸と細軸のブームが交互に来るものだから、毎日出ていくこともあれば全く使われない期間もある、みたいな感じになってかわいそうだった。今は細軸に落ち着いているけど。

 万年筆の話をしよう。
 筆箱の中身のなかでも万年筆は、私が楽しく日常生活を頑張るのにとってもだいじな要素だ。
 最近インクを補充するのがちょっと面倒くさくて筆箱のメンバーから外していたのだけど、授業中の落書きは鉛筆よりボールペンより万年筆だ、と思ってもう一度出してきた。

 うちには万年筆が20本ほどある(と思う)
 基本的にはペン先がステンレスの「鉄ペン」だ。一番安いのがプレピーで、200円ほどだったと思う。それなりに使えるし、コンバータ(瓶のインクを使うための道具)も使えるので、ぜひ使ってみるといいと思う。もう少しお金を出せるならプレジールは、カラーバリエーションが豊かだし、見た目が万年筆らしくて楽しめると思う。1000円だし。

 20本強あるなかで実働はたぶん5本未満。季節や気分でどの万年筆を出すか、どのインクを入れるかを決めている。
 そういえば今年はまだあまり洗ったりインクを変えたりということをしていない。ペン先を水に入れた時の、インクの溶け方をぼーっと見ているのが好きだった。そんなことをする余裕がないのだろうか。余裕なあ。
 いつもだったら模様替え、衣替えのような気持ちで丁寧に万年筆を洗ったりインクを詰め替えたり、ということをするのだけど。せかせかぐてっ、みたいな生活ばかりしているせいかなあ、

 私は2本だけ金ペンを持っている。一本は、高校合格の時に買ってもらったセーラー万年筆の白いプロフィット。これには恐ろしいことにセーラー万年筆の顔料インク「青墨」を入れて使っている。これしか入れたことない気がする。
 もう一本は、結婚祝いのお返しのギフトカタログの中から親が選んでくれたプラチナのプレジデント。名前的にプレピー、プレジールの上位モデルなのか?わからない。この人は、セーラーの純正ブラックインクを入れて使っている。

 先ほど「恐ろしいことに」青墨を入れているといった。これは、顔料インクが染料インクと違って乾いちゃうと結構まずいことになるからだ。(詳しくは言わないけど) 
 昼と夜の間のやや夜寄りの緑寄りの気品あるブルーブラックをもつ青墨に惚れこんでしまった。絶対気品のある軸に入れたかった。その良さを最大限に生かすには、色の濃淡を生かせるかつ常用可能な中字の軸じゃないとだめだ、ということで、白のプロフィットさんに入れている。
 彼女(たぶん淑女だと思う)、私みたいなガサツ女に買われてしまってごめんと思うことが多くて悲しいんだけど。

 ちなみにこの人たちはあまり筆箱の中にいることはない。
 持ち歩いて落としちゃったら嫌だからだ。ツイートや現実世界の行動を見ていれば分かる通り、ぽにゃでぼけなので、小さいものはすぐ無くしてしまうのだ。無くしたら一週間ぐらい引き摺るけど。何しろ高価なもので。

 うちの万年筆の中で一番使用頻度が高いやつ、それは、LAMYサファリの青のF(=細字)だ。
 LAMYのサファリは、シャープペン、ボールペンが同じ型で出ているので、知っている人も多いかもしれない。高校のサッカー部の男子がシャープペンをおそろいで持っていたような気がするなあというぐらい手が届きやすくて使いやすいラインだ。

 シャープペンは確か2000円ぐらいだったのだけど、万年筆は4000円ぐらいで普通の文房具よりはちょっとお高めだった。金がない中学3年生だった私は、妹が「サンタ=親」を知らないために続行していた「サンタさん」にこれをもらった。

 かなり開くクリップとあまり高価そうでないプラスチックで持ち運びやすく、舶来のFなので日本製のM(=中字)ぐらいはあるのだが、小回りが利いて書きやすい。この辺がたくさん使いたくなる理由だろう。あとは、結構見た目がチープなので気負いせず使えるところとかもいいよね。

 この子に入れているのは、パイロットの純正ブルー。ブルーブラックを入れていた時代もあったのだが、軸の色があまりに鮮やかなので、中のインクも合わせたくなってからずっと真っ青なインクを入れ続けている。
 最初は色彩雫の朝顔を入れていたけど、たくさん使うので割高だな、と感じたことと、わりと朝顔は紙を選ぶ(抜けやすくにじみやすい)ので安くて優秀なパイロットの純正ブルーを入れることにしている。

 実はインクも軸もたくさん持っていて、全部を「あのねあのね、これはね……」といって紹介したい気持ちはやまやまだ。全部に買ったストーリーがあって、思い入れがある。でもそんなことつらつら言われても面白くないだろうし、ここでやめておくことにする。(ここまで読んでくださってありがとうございます)

 万年筆で書くことの良さは、書いてる感と特別感。
 ただのメモ書きでも楽しくなれてしまう魔法の文房具。好きな軸と好きなインクをかけ合わせれば、いつでもどこでも素敵な手書きライフが待っている。
 まあ、これをこじらせるとインクに紙にこだわりだして大変なことになるんだけどね……。

 というわけで今回はここまで。読んでくださってありがとうございました。
 天色をしたラムネがおいしい季節です。そろそろ乾いてしまった万年筆を洗って、新しくインクを入れて夏に切り替えたいと思います。


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