見出し画像

Trust in love③

しばらくして、向こうから飛んでくる人影?みたいなものが見えた。

「先輩です」

ヴィダが手を上げると、人影はまっすぐ、音もなく地上に降り立った。

「どうも。リベルテです」

リベルテと名乗る天使は長身の細身。
髪は半分赤髪で、半分グレーだ。

衣装をとめるベルト部分はチェーンになっている。

そしてサンダルがなんだかメタリックでハードに彩られている。

「なかなかとんがってんなあ…天使も色々あるんだな…」

リクはヴィダとの違いに驚き、おもわず心の声が出ている。

「リベルテは人間だったとき、ミュージシャンだったらしいです」

ヴィダの解説がはいる。
天界では基本制服をカスタマイズすることは許されている。

だいたい、イメージしたら変化させられるので楽なものだ。

「ヴィダは?」

「幼い頃は教会の合唱団に所属した、売れない画家でした。
それで農作業のお手伝いもしてました」

「あー、それで不思議な雰囲気なんだ。天界の人っていうのをのぞいても」

ぼくは足元に咲いていたタンポポを指差す。

「タンポポを踏まないようにとか、大地に見せる目が優しいというか…」

「えっ、気づいておられたんですか?」

ぼくの言葉に、ヴィダは驚いたようだった。

「うん。だってぼくもお花好きで普段同じことしてるから。

ほらあそこに咲いてるシロツメクサ。
昔、指輪と冠をつくって、リクにあげたことがあるよ。とても喜んでくれた」

あの頃から、ぼくはリクが大好きで、
リクはぼくをお嫁さんにするって言ってたんだよね…。

いま、大きくなってもずっと一緒にいられること。とても嬉しい。

「あなたは子供の頃とかわっていませんね…」

ヴィダのぼくをみる目が、穏やかで、
まるで子供をみるようだった。

まあ天界の人だから、人間の歳にしたら、たぶん100歳超えてるよね…。

「おーい!そこ、思い出にひたってないで、はやく行ってこい!」

リベルテがこちらをみて早くしろと手招きする。

「はい、ではいってきますね。二人が無事戻れるように…」

「お願いします。いってらっしゃいヴィダ。気をつけてね。」

ヴィダはパンクロッカー風
天界の住人と人間二人に送り出され、飛んでいった。

「あれって普通に飛ぼう、とおもったら飛べるのか?」

リクが不思議そうに小さくなっていくヴィダの姿を見ながらたずねた。

「ああ、歩くのと変わらない」

そういえばリベルテも普通にやってきたな…。

さて、結構受付は忙しいんだよな。

「とりあえず、来た者の名前と確認して、名簿と照らし合わせてくれ。

魂の状態を見るにはこれを貸してやる。
おかしいと思ったら俺を呼べ。」

「メガネ…」

さすが天界、空は飛べても見るのはメガネ。文明のギャップがすごすぎる。

「これならお前らも普段の世界でおなじみだろう?」

「そうだな…」
「とりあえずお仕事しなきゃね」

ぼくらは渡された黒メガネをかけた。

お互いメガネをかけて、向き合ってみた。

「…!!リク格好いい…!!
もし、こんな先生がいたら、ドキドキしすぎて授業になんない」

ふだんよりもリクの理知的な雰囲気に、おもわず口に出してしまった。

「そうか?まあ、俺、普段メガネかけないもんな。ソラも似合ってるよ」

「ありがとう」
リクの言葉に、おもわず笑顔になる。

「さーて、受付も混んできたしやるか!」

ぼくらは名簿とホログラムを渡され、受付にむかった。

「すみません。まずお名前の確認をしたいのですが…」

ぼくが中年男性に声をかけると

「うわあ、まちげぇなく、ここは天国だ。こげなかわいい白衣の天使のお姉ちゃんがいる」

なんか、相手がデレデレしている。

「あのお名前を…」

「白衣の天使ってのはちゃんと存在するんじゃなぁ」

白衣?
相手の言葉におもわずぼくは自分の姿見た。

「え!え!?なにこれ!リベルテ、ぼくなんでナースなの?」

「それ、お前の彼氏の趣味じゃねえか?ここではイメージで衣装変えられるからな」

たしかにそのとおり。

「リク!もう、なんてことすんのさ」

「いやー似合うかなとおもって、やっぱ俺の目にまちがいはなかったな」

悪びれないリク。
ぼくは複雑な気持ちだ。

「ちょっと仕事になんないから!普通のにして!」

「もう少し楽しませてほしいなぁ」

リクは普通に制服だ。なら…。

「うぉっ!いきなりスーツになった!

ぼくの逆襲に、リクは慌てることなく、淡々とすすめている。

「ええと、まずお名前の確認を…」

「あらー、天国ってイケメンいるんだ!かっこいい!ああ、あたしが30年若かったら…って死んでるから無理か!」

ガハハと笑うおばちゃんに捕まっている。

リクの方も当然受付がすすまない。

リベルテは、外見にみんなビビるのか、一番スムーズにすすんでいる。

「もう!リク!まともな服にしてよ!」

普段、なにもいわないのに、
脳内イメージがたくさんありすぎるのか、チャイナ服にかわったり、セーラー服に変わったりしている。
しかし服が変わろうと全くもって進捗状況は変わらない。

「これで統一しようよ!」

ぼくはかつて着たメイド服、
リクは執事。

これならまだ現世でも受け入れられているから平気なはず。

「いや、受付ならやっぱり白衣の天使と医師でしょ」

リクは白衣を着こなしていた。

メガネかけていて、さらに医師っぽいし、なんで向こうはなにやってもかっこよくなるんだ。

ぼくはなぜかロングヘアのナースだ。不本意だけど仕方ない。

とりあえず、仕事しないと、リベルテもヴィダにも
申し訳ない。

新米にもなってないぼくらは受付に立ち続けた。


つづく









いいなと思ったら応援しよう!