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Autumn happening!③

毎日が過ぎていくのが早い。

そりゃそうだよね。新学期が始まって、怒涛のスケジュールだ。
いろいろあった文化祭。
今回は体育祭。
次は学園祭。

音楽祭がないのは、吹奏楽部がコンクールに毎年出場している時期とかぶるためだ。

だって、これをこなして、部活の大会や受験勉強って、きつすぎるよね?

華厳学院みたいに、提携校への優先進学があるとかなら、イベントだらけなのもわかるけど。

華厳学院の場合は、良家の子息が多いので、提携校に進んで、いずれは親の跡を継ぐ、という人がほとんどだ。

亜音のところはどうなのかしらないが、きっと安泰だろう。

ぼくのうちは、決して裕福じゃないから、美大にいくにはとにかくお金がかかる。
特待生としていけるなら、その心配はないけれど、ぼくよりうまい人なんてたくさんいる。

リクは普通の四大で、その気になれば有名大学も目指せるだろう。
ただしガリ勉ではないから、そこまでしないだろうなぁ。

「今日は放課後、男子はテントと、防護柵作り、女子は教室でポンポンをつくるように。もちろん危なくないものなら、ポンポン以外でもかまわないからな」

なにげなくグラウンドをみていると、帰りのホームルームで担任からの伝達だった。

体育祭はいよいよ今週。
保護者のことは、ぼくもリクもあえて言わない。

お弁当はぼくが作るし、いきなりいっても、母さんも仕事を休めないのはわかっているつもりだ。

リク、結構食べるけど、今回はリレーがあるし、お腹いっぱいすぎても走れないよね…。

そんなことを考えていると、
「ソラ、いこう」


ポンと肩を叩かれた。
顔を上げると、リクが立っていた。

「あ、うん」

「どうした?ぼんやりしてたけど」

「ふふ、…秘密!」

にっこり笑うと
「ん?秘密!?にこにこしてるから悪い秘密じゃないよな?」

こくこく、とぼくは笑顔のまま首を縦に振る。

「もうすぐわかるから、その日をお楽しみにー」

リクはぼくの頭をぽんぽんすると、
「わかった。たのしみにしておく」

そこで小橋くんが

「おーい、柵の数が多いから、グラウンドまで運ぶのを運動部組、力自慢のやつ、ちょっと多めに手伝ってくれ!頼む!」

「お、いってくるよ、じゃあな、ソラ、あとで」

「うん」

リクは駆け出し、小橋くんのあとを追った。

「早めにちゃっちゃと片付けて、司会進行の練習しないと。
そういや篠原くんも美術部のほうがあるもんね」

やや早足の真田くんがぼくに追い付いて、やってきた。

「うん。ぼくらは大体出来上がっている人が多いけど、真田くんはもうすぐだもんね」

そうそう、と真田くんは大きく頷いた。

「みんな緊張してないと思っているけど、その分かなりイメトレと音読練習はしてるよ」

「そうだよね。みんな言わないだけで、努力しているよね。
でないと本番こわすぎて無理。
でも真田くんは本番強い感じがする。コンテストのとき思った」

「ええっ!!」

真田くんは驚いた表情でぼくをみた。

「だって、いきなりたっくんと花音さんがきても、
難なく紹介してたよね。あれ出演サプライズでしょ?」

「あ、あれはたしかに。直前に名刺を渡されて、棒読みにならないように、肩書きとかはそこから読んでたんだ」

やっぱりすごい、とぼくが微笑むと、真田くんは顔を赤くした…。

「あれは女子の力が大きかった。花音さんをしっている女子がとても多くて、
いろいろ歓声のなかでも聞こえてきたし。
女子のコンテストがおわった高木さんがあわてて重要ワードのメモ送ってくれたんだ」

「そうだったんだ!ニューヨークで活躍してるとか、
雑誌によくでてるなんて、男子にはわからなかったもんね」

ぼくはずっと不思議だったんだよね。まるで前から知ってたように流暢に言葉を紡いでいくから。

「そうなんだよ、あれは助かったなぁ。思い付かなかったし」

真田くんはいまでも感謝しているのだろう。おもいだしたのか、安堵の表情がみえる。

「そんな裏話があったんだ。すごいね。高木さんもナイスサポート」

「ああ。まだまだ俺らが知ってることって少ないんだなっておもった。お、はじまってる、いこうぜ」

「うん!」

ぼくらはグラウンドに駆け出し、
既にかなり運ばれてきた柵の元に走った。

「ここが応援席だから、この線からここの線まで一列な~」

小橋くんがラインをひいてくれて、そこに順番に柵を置いていく。

「あと、背の高いやつは、テントのほう応援たのむ!」

「小橋、ちょっと風が強くないか?このテントではちょっと心もとない気がする」

リクが木々のざわめきを見て、落ち葉もかなり落ちているところから、気になるようだ。

「んー、そうだな。突風がたび    

たびあるからなぁ。柵は高さもないし、大丈夫だけど、テントだけやめとくか」

小橋くんも辺りの様子を見て、納得したようだ。

「じゃ、テントは縛って応援席のエリアの建物に置いておこう」

とりあえず、いまできることをこなして、ぼくらは教室に戻ることになった。

「リク、今日は打ち合わせとかあるの?」

「いや、もう昨日で決まってるし、あとはもう本番待ちだな」

「そっか。ぼくも今日は美術室寄らないけど、一緒に帰れる?」

「ああ」

「よかった」

戻った教室では、女子はポンポンは持ち帰るようで、それぞれ鞄にいれていた。

「作品もうほぼできてるから。あとは額にいれて、整えたら終わり」

「そっか。ソラは集中力あるなぁ。俺はできないよ」

「でも、リクだってサッカーで集中するときいっぱいあるじゃん。
ここではずせない!みたいなさ」

「まあそうだけど…ソラは何時間もできるからすごいと思う」

「好きなことだからできるんだよ。リクがサッカー好きなように」

「そうか…まあ好きなことしてるときって時間たつの早いよな」

かさ、かさ、と落ちている落ち葉を踏みしめながらぼくらは並んで歩いている。

不意に突風が吹いて、ぼくは段差につまづいてしまった。

頭を守りつつ、倒れたので足は大丈夫。
落ち葉に守られた感じだ。

腕で守り切れなかった
顔をちょっと擦ったみたいだ…。

「ソラ、大丈夫か。間に合わなかった…」

リクはひざまづいて、枯れ葉をとってくれる。

「大丈夫…リクが怪我したら、シャレにならないもん」

立ち上がると、

「あー、かわいいほっぺた傷ついてる。俺んちで処置しような」

「おおげさだよ。女子じゃないんだし」

「性別関係なく消毒しないと傷残るから!」

リクはぼくに有無を言わさず、とにかく家路を急がされた。


つづく

















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