上演権開放企画でTRUMPやらせてもらった劇団の演出で俳優の現役生物教師がTRUMPシリーズについて考えてみた その⑥
⑥吸血種のご飯事情について
お久しぶりです。静岡、霧のクランのクラウスで演出だった草野です。
生物屋で教師の自分が不老不死の役を演じる上で、納得して表現をしたくて色々考えていたら楽しくなってきちゃったので、このまま考察していこうと。
そういうやつです。ちょっとタイトル変えました。
自分用のメモなので、かなりこじつけかつ個人的解釈です。ネタバレあります。ご注意。広い心でどうぞ。
あなたのTRUMP考察はどこから?私はDNAから。
◆エッ、消化器官違うの?!
おいら衝撃だっただ。
公式に「人類の亜種で消化器官が異なる」的な記述があったので
そりゃもう、おったまげました。
いやいやいや、亜種って言ってたじゃん。
いや、まあ、亜種か……ギリ亜種でいいのか……
ガラパゴスフィンチみたいなもんか……
ガラパゴスフィンチというのは鳥の名前です。
ガラパゴス島というところに暮らしていて、食べ物によってクチバシの形が変わります。こんな感じ↓
…
……
………
そっか、食べ物によってお腹の中が変わったのね!!!
だいぶ無理やりな感じがしますが、今回はこの体でいきます。いきますからね。
吸血種はガラパゴスフィンチ。オーケー、いいだろう。
と、いうことで「吸血種のご飯事情どうなってんの?」の回です。
よろしくお願いします。
◆ご飯を食べる、ということについて。
吸血種は、その名の通り「動物の血液を主食にする人間の亜種」なのですが、
シリーズ内では、そのご飯事情についてあまり詳しく語られることはありませんでした。(ドナテルロ回顧録くらい?)
なんとなく聞き齧っている情報だと
1、人類(人間種も吸血種も)の血は飲んじゃダメ
2、食用として家畜の血液が売られている
3、血液を固めたショートブレッドみたいなものがある
4、消化器官が異なるため、人間が食べるような食料では効率的な栄養補給ができない
だったと思います。(追加あったら教えてください)
生物屋的に「お?」と思うのは4番です。
つまり、“代謝に必要なエネルギーを血液からしか得ることができない体になっている“ということです。
……ほォ
ではここで、人間種が必要とする栄養素について見てみましょう。
・炭水化物
・タンパク質
・脂質
・無機物
・ミネラル、ビタミン
五大栄養素ですね。
このうち、主にエネルギー源となるのは
「炭水化物」「タンパク質」「脂質」です。
特に「炭水化物」は、いわゆる「糖」なのでエネルギー効率が良く、
細胞の呼吸
一の型、「解糖系」
二の型、「クエン酸回路」
においていい感じで分解され、
三の型、「電子伝達系」
にて、たくさんのATP(エネルギー蓄えてるやつ)を作り出します。
なので、人間はこれを主食として食べているわけですね。
パンもご飯も美味しいですもんね。
じゃあ、これをどこから取り込んでいるのかというと、人間種の場合は、胃で分解して、小腸で吸収します。小腸には、柔毛という細かい毛みたいなものがびっしりあって、その毛細血管からブドウ糖やアミノ酸を取り込むわけです。
消化器官とは、この栄養源を摂取するところから、排泄までに関わる器官を指します。口から肛門までってことですね!
吸血種と人間種が異なっているのは、どの部分なんでしょうか…?
血液って、食料としてアリなの?について考えながら探ってみようと思います。
◆血液食とは?
いや、血液ってぶっちゃけご飯としてどうなの?
というところが今回の大事なところになります。
これはねえ、正直なこと言うと
主食として食べるのには向いておりません。
人間の血液の成分を見ると
・血漿 55〜60%
・血小板 1%未満
・白血球 1%
・赤血球 40〜45%
となっています。
このうち、有形成分である「血小板」「白血球」「赤血球」は大体タンパク質でできていますが、分解して栄養にするのは、ちょっと難しいかなと思います。
血漿というのは、血球たちを浮かせていたり栄養分や二酸化炭素を溶け込ませていたりする液体成分のことです。これも90%近くが水分なので、まあ、なんというか…ねえ?
つまり、血液食、めちゃくちゃ効率悪いです。
血液は塩分や鉄分が高く、ビタミンB群が不足しています。
血漿の中に栄養分は含まれていますが、少量です。
糖を例にとってみると、血糖値の正常な値は110〜140mg/dlなので、
空腹時で血液100ml中に110mg
1リットルで、1.1gくらいですね。
人間種がご飯をお茶碗1杯(150g)食べた時に摂取する糖質は、約55gです。
同じくらいの糖を取るためには50リットルの血液が必要だということです。
……50リットル飲めない。
高タンパクで鉄分が取れるという点では、補助食品的に食べるのはありなのかなと思いますが……
◆吸血生物について
「でも血を吸って生きている生き物いるでしょ?」
いますね。いますが、少ないです。
蚊も血は吸いますが、あれ実は主食にしてるわけではなく…
しかも血を吸うのはメスだけです。
現存する生物で、血液を主食にする哺乳類はナミチスイコウモリというコウモリのみです。いわゆる吸血コウモリというやつで、ドラキュラのモデルになった子たちです。
あと、ガラパゴスフィンチの中でも、ある島に生息するハシボソガラパゴスフィンチの亜種は鳥の血を吸うことが報告されています。
……やっぱり吸血種、フィンチなのでは?
というのは置いておいて、これら(特に脊椎動物の2つ)がどうやって血液をご飯にしているのか調べてみました。
そうしたら
わかったぞ、吸血種の秘密!
ヴァンプのお腹の中、まるっとゴリっとお見通しだ!
…
……
………
吸血行動の原因は、なんと腸内細菌でした。
ナミチスイコウモリと吸血フィンチの腸内には、ナトリウムと鉄を処理する細菌の仲間がたくさんいることがわかっているそうです。
これらの細菌によって、窒素性老廃物や鉄分を吸収・処理できる能力が飛躍的に上がっているため、血液を主食にしても、大丈夫というわけです。
なるほど。
なので、人間種と吸血種のご飯事情の違いは
消化器官の違いっていうか、腸内細菌の違いなのかもしれません。
これなら、遺伝子の変化がなくても食性の違いが起こります。
納得した。
これに加えて、
・吸収効率の良い小腸の仕組み
→分解作業がいらないので、時短で栄養を吸収できる。
→胃や腸の長さを短くして効率を上げる
(欧米人の方が日本人より腸が短いみたいな感じで)
・細胞の代謝スピードを早くする
→少ない栄養分で効率的に!酵素を増やすといいのかも
この辺りを採用すれば、主食が血液でもなんとかなるのではないでしょうか。
とはいえ
鉄分や窒素性老廃物を吸収・処理できようと
すっごい吸収のいい小腸があろうと
細胞の代謝がめちゃくちゃ良かろうと
ご飯の量だけはあまりにも気になる……。
50リットル×3食、飲めないっしょ
「血液を固めたショートブレッド」は、もしかしたらこれを解決するためのものかもしれません。濃縮還元血液、的な?ギュッとまとめて、固めて食べちゃえ!的な?
これ、クランに潜入してたハンター達どうしてたんだ?
あとダンピールはどっち寄りだ…?
教えて!転入生!
……考えれば考えるほど分からなくなってきました。
生きるうえでは大切な「食事」というシステム。
吸血種のご飯事情は、まだまだ謎が多そうです。
それよか、みんな美味しいご飯食べてくれ。頼む。
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