Contamination、する?
暑くなってきましたね。夏だ。
どうも、草野です。
演劇ユニットHORIZON番外公演「Contamination」の終演から2週間が経過しました。新型コロナウイルス感染症陽性のご連絡はなく、皆さんのご協力に感謝しております。
座組一同は、連日の雨や気圧の変動、気温の変化などで少々やられている人もいますが、みんな無事です。よかった。本当によかった。
これで本当に「Contamination、終演しました。」と言うことができます。一安心です。
このご時世に、社会人劇団が自主公演をやるということは、とてもリスクが伴います。それでも、私たち座組は「態勢をきちんと整え、劇場で皆さんをお迎えする」と言う道を選びました。後悔はないです。私たちの公演を見守ってくださった全ての方に心からお礼申し上げます。本当に本当に、ありがとうございました。
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公演もひと段落(まだまだ後処理は残っていますが)ついたところで、溜め込んでいたいろんなものをポツポツと書いてみようかなと思います。お時間あったらお付き合いください。
裏側とか、見たくねえなあ…の方は回れ右。戻るボタンを押してどうぞ。長いので。たぶんとても長いので。
◆「Contamination」という脚本について
原案というかもともとの着想は、箱庭的創作でした。
もう何年も前に、Twitterでオリジナルの設定だけ作って遊んだやつ。その時は吸血種と混血種の療養所…みたいな感じでした。2015年版TRUMPを見てLILIUMを摂取した影響です。(わかりやすい)その時とは背景と設定が違うのですが、水尾のネタだけ参考にしました。「弟を〜」ってやつですね。
で、なぜこの話を今になって書いてみようと思ったのかというと「星シリーズとは違う創作シリーズ、しかも現代物で終わりがクリアでない物語」を書いてみたくなったからです。というか、書けるのか?私?という挑戦をしてみたくなったからです。
ご存知の方も多いかと思うんですが、私、キャラメルボックスが実家でして。
だから、ちゃんと終わるというかオチがしっかりしてる、みたいな脚本が好物でした。いや、好物です。なので、こういう、感情がごちゃごちゃとコンタミするようなお芝居を書いてみたくなったというのが本音です。
でも、初めてそう言うの書くので、ベースになるようなものがないかなと過去の創作物を見返していて出会ったのが原案でした。ま、もはや全くの別物になったのですけど……
◆モチーフについて
「Contamination」を書く際に、たくさんリストアップしたキーワードの中から選んだのは『欠落』『植物園』『花』です。(キーワードのリストアップについては、Twitterで#草野脚本ができるまでを調べると出てきます!)
ま ん ま
改めてみたら、まんますぎてびっくりしました。まあ、でもそりゃそうか。
「植物園」をピックアップしたのは、作品が展開する舞台に有機物が欲しかったからです。植物園のある療養所、憧れませんか。私も温室に住みたい。
「花」はこの時点では病気の原因になるという設定はついていませんでした。美しいもの、という理由でチョイス。
「欠落」からあの病気ができました。欠落病については後ほど。
植物園を箱庭にしたことによって、ここに楽園ができました。楽園の中でおこる欠落・忘却の記録。それは、狂気を孕んだ美しさになるだろうなと思いました。そしてそれは、「幸せ」な空間なんだろうなと思いました。
◆「幸せの形」について
私の脚本は、なぜかいつも「幸せ」がテーマになりがちです。
……なんでなんだろ?自分でも実はよくわかっていません。Contaminationも、最初はバチバチのミステリーにしようと思っていたら、いつの間にか「理想の幸せと現実がぶつかる話」になっていました。私の深層心理の中に、なんかあるんでしょうね。
もしかしたら、それはキリスト教の概念なのかもしれません。感想でも頂いていましたが、カトリックの香りがしますよね。わかる。自分でも思うもの。
私自身はクリスチャンではないのですが、自分がこの世から去るときにお経が上がるのがちょっと不思議なくらい生活の中にキリスト教が溢れています。
幼稚園はカトリックでしたし、高校もミッションスクール、今の職場も卒業したミッションスクールにいます。日常的にシスターとお話をして毎朝祈るのが当たり前の生活をしているので、そんな空気が出るのかもしれません。なんとなくしっくり来るんですよね、この空気が。こう、祈るという行為が。
千秋楽の声だしも「あめのきさき」(聖歌)でしたしね。
あの楽園で歌う聖歌、とても気持ちが良かったです。桔梗先生もあんな気分だったのかなあ。
キリスト教の教え、というかよく言われることの中に「使命を持つ」みたいなものがあります。人は生まれながらにして何かの使命を持っている、という感じなのですが、私はこれもすごく好きな概念です。
おまんの、成すべきこととはなんじゃ?
って、竜馬さんも言ってますしね。(また逢おうと竜馬は言った参照)
とはいうても、キリスト教もかじった程度の知識なので、もっと勉強してみたいなという気持ちもあります。
そうそう、「楽園の蛇」は旧約聖書に登場します。よかったら調べてみてください。桔梗のセリフが面白くなりますよ。
ざっくりまとめると、私は常に「幸せ」を追い求めているということなのでしょう。……たぶん。うーん、「幸せ」ってなんなんでしょうね?
まだまだ答えは出なそうです。ねえ、阿瀬比さん?
◆欠落病について
人生における“何か“が抜け落ちる病。欠落したものは、発症するまでわからない。感染症かどうかも不明な未知の奇病。
「欠落病」が本当にあったらどうします?
私は、ちょっといいなと思ってしまいながら、この病を創作しました。メカニズムも一応考えてはあります。生物屋ですし、その辺のリアリティはきちんと出したかったので、脳科学を勉強し直しました。ヒトの脳は大脳が複雑すぎるので、理論通りに行くかはわからないのですが、たぶん道理は通っていると思います。
要は、一番多く使う神経回路を阻害するのです。花粉が。だから、たいせつなものや辛いことが抜けるのです。
さて、「辛いことなんか忘れて、前を向いて生きていく」のと「過去や現実を乗り越えて未来に向かう」の何が違うのでしょうか?
現実に欠落病があったら、きっと何かの治療にも使われるのかもしれません。欠落することが幸せなのかどうかは、この舞台を観劇した皆さんにお任せします。私は……少しだけ羨ましい、という言葉だけにしておきます。
◆登場人物について
阿瀬比
名前、良くない?水尾くんの「アセビの花が咲いたんだよ」の台詞とリンクする名前をつけたくて、この名字になりました。フルネームは「阿瀬比然」。ゼンという名前に彼のキャラクター性が詰まっているんじゃないかと思います。ゼンだよね。
芝原くんの阿瀬比は、“強いから脆い“という人間の二面性を良く表してくれていました。演出が彼に与えた役割は「カメラ」。不思議の国に迷い込んだアリスのように、観客と共に謎を解いていく。この立ち位置めちゃくちゃ難しいんですけど、なんか……凄かったよね(ろくろ)
燃えていく植物園で、七葉の名前を呟いた阿瀬比を、配信で初めて観測したんですけど、芝原くんそういう……そういうところだよ……こういった細やかな呼吸が阿瀬比を現実味のある人物として存在させてくれたんだろうと思います。
作中、衣装が変わるのも彼だけです。これは芝原くんからの提案だったのですが、最高だなと思って採用しました。あの色チェンジにも理由があるんですよ。
夏目
カッケー女を書いてみたくて、夏目ちゃんが女性になりました。最初の時点では男性だったんですけど、そこは、私の夢が詰まっているということで一つ。あと、私は絶対に恋愛に発展しない男女コンビが大好物なのです。わかるだろ?(ゲンドウポーズ)
姫乃さんの夏目は、戦い抜いてきた人だな、という印象があります。夏目ちゃん、いつも何かと闘っていますよね。
演出は彼女に「スイッチ」という役割を与えていました。阿瀬比も柾木も、彼女のエネルギーを受けて心のスイッチを入れます。姫乃さんの芯が通った夏目は、それを見事にこなしてくれました。彼女が来なかったら、阿瀬比はまだあの植物園にいて、桔梗達と暮らしていたのかもしれません。
あの植物園にとっては、夏目が入り込んできたことがContaminationなのです。外界の圧倒的なエネルギーで空気を入れ替える人。かっこいいですよね。
柾木兄妹
あえてまとめちゃうんですけど、柾木くんと香澄ちゃんはもう一つのストーリーラインとして描いていました。患者とその家族、しかも兄と妹。すれ違いの多い関係性です。ここに「欠落病」という病が加わることによって、その絆をさらに色濃く見せるという目論見がありました。たぶん、うまくいったんじゃないかな…
さらに、この2人には“水尾と一葉との対比“という役割もありました。てんこ盛りか?歩み寄れた兄妹と、違ってしまった兄弟。少しのすれ違いや感違いで、柾木兄妹も水尾兄弟のようになっていたのかもしれません。
香澄ちゃんの欠落は「愛」。髙橋へのリクエストは「ドライフラワーから生花に」でした。序盤のカラッとした笑顔から、後半の複雑な表情へ。上手に潤ってくれましたね。香澄のように、あの療養所に残りたい人は多かったんじゃないかなぁ。でも、彼女は色んなものを取り戻して前に進みました。欠落病の危うさを表現してくれていたと思います。
柾木くん、名前は「葉介」。瑞々しい若葉のような刑事でした。彼には「事件を追う刑事の目」と「患者家族の目」2つの視点を持ってもらいました。演出からは「公私混同して」とリクエストが飛んでいました。ナイス公私混同。彼が当事者として欠落病や事件と向き合ってくれたので、患者になってしまった阿瀬比の異質さや、植物園の箱庭感が良く出ていたんじゃないでしょうか。さっちゃんの真っ直ぐな声がいいんだよなあ……
水尾
わし、水尾やりたかったんじゃ。これ座組では有名な話で、罠が延期になって今のメンバーでContaminationを作ろう!ってなる前は、結城天野草野で植物園かなみたいな話が出ていたんです。今となっては、自分が水尾くんを演じられるのかどうか全く自信がありません。いや、だって、うちの水尾くんは月野の儚さが必要でしょ……。
水尾は、演出によって立ち位置が大きく変わるキャラクターだと思います。実行犯は彼ですし、一葉を殺めた理由も脚本上では明らかになっていません。これは水尾を演じる役者さんにお任せしたかったところなので、これからも明らかにはしない方向です。月野へお願いしたのは「温室で穏やかに暮らして」でした。これは私が桔梗を演じていたからこそのリクエストかなと思います。水尾くんは、幸せでいて欲しいのです。幸せの形は、彼なのです。
橘
みんな好きでしょ、こんなん。穏やかそうに見えてちょっと危ないやつって、なんつーか……その……刺さるじゃないですか。オタク心に。それです。(察して)
脚本を書いている間は、彼が一番謎でした。植物園に住み着いている理由とか、桔梗先生への忠誠心?執着?みたいなものが、何を原因としているのかが不思議だったからです。その不思議さが面白くてそのままにしてみたら、ああなりました。なるほどな?
天野くんへは、あれ、なんかリクエストしたかな?確か「私のためにいてくれれば」みたいなことを言った記憶もありますが……それ、ちょ、どうなん……まあ、「楽園の種」読んでいただくと納得する感じもあります。橘くんは、桔梗とセットで感想いただくことが多くて楽しかったです。ここの関係も、演出によって大きく変わるところだと思います。他の植物園ではどうなるのか気になります。
桔梗
彼女の強さは、「楽園の蛇」を自称するところかなと思います。知恵を与える、という自覚があるんでしょうね。脚本時は、もっと中性的な印象で書いていました。事実、座組の中でも最初は男性だと思っていた人が多かったんです。読み合わせとキャラクター設定打ち合わせの時に草野がピンヒールを持ってきて、座組衝撃!という事件がありました(笑)。私が演じた桔梗は、この中性的なイメージからだいぶ遠ざかって“女性“を強みにするキャラクターになりました。驚いたでしょ?私もだよ
桔梗は「幸せを具現化する」という目的を持たせました。圧倒的幸せ主義者。彼女は本当にみんなに幸せになって欲しいのです。しかも、その手段も場所も金もある。強いですよね。黒幕だと思ってくれれば、私の演出が通った証拠です。やったぜ。水尾も被害者なのでは?となれば、いいのです。桔梗にとっては。
桔梗の欠落については、もうちょっと時間が経ったらお話……するかなあ?
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長…!
とりあえず表方の方はこんな感じです。音響とか照明とか舞台セットについては、また追加で書きます。ここまでお付き合いいただいた皆さん、ありがとうございました。
配信販売あります。
色んなものを詰め込んだ「Contamination」という作品が、誰かの心に残りますように。誰かの幸せの形を、描き出せますように。
2021,7月
演劇ユニットHORIZON
草野冴月(大橋美月)
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【配信情報】
演劇ユニットHORIZON 番外公演 The beauties of nature
『Contamination』
脚本:草野冴月
演出:大橋美月
観劇三昧にて配信中!
料金:
買い切り(見放題):3000円
2週間レンタル:2000円
https://v2.kan-geki.com/tvods/detail/184
※会員登録(無料)が必要です
◇あらすじ
「欠落病」。それはある地域でのみ、発症が確認されている未知の奇病である。症状は、何かが欠落すること。その対象は記憶、行動、感情など多岐にわたる。原因は特定されておらず、感染症であるのかもわかっていない。また、この病にかかった人物が謎の失踪を遂げる連続失踪事件が起きていた。
阿瀬比はこの奇病と失踪事件を追いかけるフリーの記者だが、突然発症し「恋人の記憶」を失ってしまう。重症と診断された阿瀬比は、欠落病の重症者を集め、保護観察を行う療養所へ送られる。世界中の花を集めた植物園を持つ療養所で、阿瀬比は様々な欠落病の患者と出会う。ある日、足を踏み入れた植物園で遭遇した「弟を探している」という水尾という男に違和感を覚えるが…
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