④魂天になったあなたへ
魂天→???
(先に、『麻雀強くなるには?マインドセット編、技術編』を読むことを推奨。)
○長い旅を終えて
まずは、ゲームクリアおめでとう。
長い長い旅を終え、あなたはついに、魂天に到達した。
気分はどうかな?
きっと、すぐには言葉にできないほどの、達成感や満足感、そして麻雀や仲間たちへの感謝の気持ちで、満たされていることだろう。
ならば今は、それを思いっきり味わえばいい。
こんな経験は、人生で何度も味わえるものではないし、人によっては出会うことのないまま、生涯を終えることだってあるだろう。
あなたは本当に幸運だ。
だからまずは、その幸運を噛み締めること。
このから先の話は、あくまでゲームクリア後の"おまけ"だ。
今までと同じく、興味が無ければ、無理して読む必要はない。
と言うより、喜んでいる時に読むべきではない。それくらい、踏み込んだ話なのだ。
もしかすると、これを読んだタイミングによっては、あなたはものすごく後悔することになるかもしれない。
だから、強く、念を押しておきたい。
まずは、魂天に到達した喜びを、全身で味わってほしい。頑張った自分を、精一杯労ってほしい。
これからする話は、その後の話だ。
魂天になった後の、麻雀との付き合い方について、僕なりの見解が書いてある。
焦る必要はない。
あなたが魂天になった今でも、麻雀への飽くなき探究心を、強くなることへの燃えるような情熱を、変わらず持ち続けているのならば、きっと興味深く思ってもらえるはずだ。
これは、僕からあなたへの、挑戦状だ。
どうか心して、読んでもらいたい。
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○ここが本当の、スタートライン
はっきり言おう。魂天とは、麻雀人生の終着点では、断じてない。
むしろ、ここが入り口だ。
これから、あなたの麻雀への探究の旅が、はじまるのだ。
騙されたような気持ちになったのなら、申し訳ない。ただこれも全て、あなたにここまで来てもらうためだったのだ。
それに、ここが頂上であることにも、変わりはない。ここからもっと、さらに高いところへ、飛び立とうという話だ。
魂天到達は、偉業だ。
あなたは、とんでもなく高い目標を、見事クリアしたのだ。
麓から想像する頂上の景色は、どこまでも美しく見えただろう。
それはあなたに、無限のエネルギーを与えてくれていたはずだ。だから、あれだけ辛い試練を、敗北の夜を、乗り越えられたのだ。目標が遥かな高みにあったからこそ、あなたは頑張れたのだ。違うかな?
それにむしろ、これを読んでいるあなたはきっと、ワクワクしてくれていることだろう。
そう、麻雀の旅はまだ終わっていない。
もっと面白い冒険が、この先で、あなたを待っているのだ。
○戦術は、捨てよ
今まであなたは、魂天になるために、多くの知識や技術を学んできた。
その中には、"戦術"と呼ばれるものも、たくさんある。
戦術とは、目標を達成するための戦い方のことだ。例えば、押し引きや読み、アシスト、絞り、差し込みなど。
しかし、これらは一度、捨て去ってもらいたい。
これらは全て、ラス回避ルールに特化した戦術だ。ここからはルールが大きく変わる。
今までと同じ戦術を使い続けるだけでは、この先、苦戦を強いられることになるだろう。
とはいえ、安心してほしい。あなたが学んできたことは、決して無駄にはならない。
「目標が変われば戦術が変わる」のは、当然だからだ。
○"ラス回避"という特殊ルール
まず、「ラス回避」という"戦略"とそのための"戦術"が、どのように生まれたか、おさらいしたい。
雀魂や天鳳など、今多くのユーザーに遊ばれているネット麻雀の段位戦では、「ラスに大きなペナルティを課すポイント配分」が一般的だ。
例えば、
1位+133pt
2位+63pt
3位-8pt
4位-261pt
のような配分だ。
少し考えれば、この歪さに気づくはずだ。
どうして、ユーザー同士で遊んでいるだけなのに、誰かが大きく損する仕組みなのか。
これは、企業がサービスを継続するのに、最適な仕組みだからである。
どういうことか、もう少し詳しく説明しよう。
オンラインゲームを提供する企業は、ユーザーを多く集め、長く楽しんでもらう必要がある。というより、それができなければ、利益が上げられず、サービス自体が継続できない。
これが仮に、Mリーグルールのような「トップに大きな報酬が与えられるポイント配分」だとどうなるか。
初めは皆、トップを目指して対局に臨むだろう。しかし、その対局に、勝ち目がないと判断したプレイヤーは、ゲームを途中で放棄してしてしまう可能性がある。
いわゆる、"萎え落ち"だ。
麻雀は、特にそれが起きやすい。運や理不尽に、振り回されやすいゲームだからだ。
「ラス回避」とは、その対策として作られた、いわば特殊ルールなのだ。
古くからある麻雀というゲームの歴史でにおいて、「ラス回避」という戦略が生まれたのは、ごく最近の話なのだ。
麻雀サービスを提供する企業が、勝手に決めたルール(ポイント配分)に、ユーザーが適応した結果と言える。
この特殊ルールの中で、「ラスを回避する」という戦略が生まれ、そのための"戦術"の数々が生まれていった。
あなたが学んできた"押し引き"や"読み"などの戦術は、この前提の上で成り立っている。
巷に溢れる"戦術"のほとんどは、「ラス回避」を前提としたものなのだ。そして、あなたがこれから戦うフィールドは、「ラス回避」を前提としていない。
まずはこの違いに、気づくことだ。
○試されるのは、学びの深さ
とはいえ、玉の間と王座の間で、やることはほとんど変わらない。
問われているのは、あなたが「どれだけ自分の頭で、麻雀というゲームついて深く考えてきたか」ということだけだ。
「他人の考えた戦術を、鵜呑みにしてきただけ」なのか。
それとも、「戦術の本質について、自分の頭で考え、試し、身につけてきた」のか。
あなたはそのどちらかということを、試されているのだ。
拾ってきただけの"知識"か、深く考え身につけた"知恵"かの差、とも言えるだろう。
麻雀というゲームにおいて、楽しみ方は人それぞれだ。自分の決めた目標を、達成できさえすれば、それでいい。
今までは「魂天になる」が目標だった。
では、これからは?
少し厳しい表現になるかもしれないが、人の言うことだけ聞いてきた"お利口さん"は、ここで一度大きくつまづくことになるだろう。
なぜなら、習ってきたことが、通じなくなるからだ。「正解」だったものが、崩れ落ちていく感覚を、一度体感するからだ。
正確には、あなたが学んできた知識や技術のほとんどは、もう皆知っている可能性が高い。その上で、どう勝つかを考えている人が勝つ、それが王座の間だ。
とはいえ、大丈夫、焦らなくていい。
最初は違いに驚くかもしれない。
ただ、地元の中学校じゃエリートだったあなたが、有名な進学校に入った途端、周りの友人たちのレベルの高さに、少し戸惑っているだけだ。きっと、すぐ慣れる。
そもそも、「魂天になる」という高いハードルを越えられた時点で、ゲームクリアなのだ。王座の間は、クリア後のボーナスステージ、あなたへのご褒美なのだ。
○王座の間は、ボーナスステージ
魂天になることは、「ラス回避ルールからの解放」を意味する。
もう僕たちは、争わなくていいのだ。
自分の身を守るために、誰かから富を奪う必要はない。
なぜなら、王座の間は、これまでと世界の構造が大きく違うからだ。
ラス回避ルールは、限られた富(ポイント)を奪い合い、勝った人が少しの富を得て、負けた人がより多くの富を失うようにできている。
しかし、王座の間では、戦えば戦うほど、全体の富の総量は増えていく。
ポイント配分はこうだ。
1位+0.5pt
2位+0.2pt
3位-0.2pt
4位-0.5pt
例えば、魂天同士のポイント(魂珠)のやり取りの場面を考えてほしい。
説明のために、1対1の勝ち負けで考える。
魂天A vs 魂天B
(10.0pt) (10.0pt)
WIN LOSE
↓
10.5pt 9.5pt
魂珠の総量は変化していない。
いわゆる、ゼロサムゲームだ。
次に、魂天と雀聖のポイントのやりとりを考える。
魂天 vs 雀聖
(10.0pt) (4500/9000)
WIN LOSE
↓
10.5pt 4230/9000
ここでは、長い目で見て魂天は雀聖に勝ち越すものとして考えてほしい。(こればかりは、雀力の差だ。)
するとどうだろう。戦えば戦うほど、魂珠(=富)の総量が増えていくことに、気づけただろうか。
○雀聖は、観光客
魂天にとって、王座の間は、戦いの場であり、強い相手と出会える、最高の遊び場でもある。
雀聖が王座の間で戦うのは、高い料金(ポイント)を払う代わりに、「私も、ここに混ぜてください」と言っているようなものなのだ。
これはこれで、一種の贅沢だといえる。
ちょっとした、観光地への旅行のようなものだ。高い料金を払う価値は、十分にある。
これは、雀聖に到達した人に与えられた権利だ。行使したければ、いつでもすればいい。
ただし、「ポイントを増やす目的」では、オススメしない。玉の間と比べて対戦相手のレベルが高く、効率が悪いからだ。
あるいは、王座の間とは、会員制のクラブのようなものと考えてもいいかもしれない。
魂天とは、会員証だ。厳しい審査に通ったもののみ、自由に出入りできる。ただちょっと、おいたがすぎると、会員証が剥奪されてしまうだけだ。だいたい平均順位2.5を維持してさえいれば、何をしても自由だ。
この場において雀聖はゲストである。ポイントを支払って、特別に入場させてもらっているのである。
まとめると、
「雀聖という観光客のおかげで、魂天たちの富の総量は増え続ける」のである。
これが、王座の間の構造だ。
だからそもそも、「なんとかしてポイントを増やそう」という発想自体が、既に間違っているとも言える。
楽しく遊んでいるうちに、ポイントは勝手に増えていくからだ。
ただしこれは、あなたがこれまで自分の頭で考えてきた人ならば、の話だ。
実力が足りないうちは、少しだけ息苦しく感じるかもしれない。
○僕からできる、唯一のアドバイス
これ以上、「答えのようなもの」について語りすぎるのは、あなたの成長の機会を奪ってしまう可能性が高い。
だから、僕からできるアドバイスは、一つだけだ。
「自分の頭で、考えること」
麻雀とは、どんなゲームなのか?
強いとは、どういうことなのか?
いかにして、戦術が生まれたのか?
あの人はなぜ、勝ち続けられるのか?
そもそも、「考える」とは何か?
、、、
僕もまだまだ、勉強中の身である。
偉そうなことを言うつもりはない。
ここに書いていることは、未来の自分への戒めでもある。
学ぶことを、忘れないように。
そして、楽しむことを、忘れないように。
初心忘るべからず、だ。
○AIの下位互換になりたいのか
そもそも、人間が麻雀について「自分の頭で考える」なんて贅沢が許されているのは、"今"しかないのかもしれない。
AIの進化のスピードは、人類の比ではない。
まだ麻雀は、人間の優位性がギリギリ保たれているような気もするが、それももう、時間の問題かもしれないのだ。
というより既に、ラス回避ルールの「正解」に近いものは、AIによって導かれつつある。
有名なもので言えば、NAGA、Suphx、LuckyJあたりだろうか。
僕は麻雀の勉強をする上で、直接の指導というものを誰からも受けてはこなかった。全て、本と動画とAIを活用した、独学だ。
特に、AIの牌譜は嫌というほど見続けてきた。リアルタイムで、どんどん強くなっていくAIの進化を、見てきたのだ。
AIの進化は速すぎる。
僕が必死にAIの出した「正解」を追いかけている間に、既にAIは次のステージへと進んでいるのだ。
だから僕は何度も自分に問いかけてきた。
「おまえは、未来のAIの下位互換になりたいのか?」
この先10年くらいなら、今ある戦術だけでも、そこそこ勝ててしまうだろう。
しかし、これから一生麻雀を楽しむには?
口を空けてAIの"答え"を待つ人生でいいのか。本当に、後になって後悔しないだろうか。
これは、ラス回避ルールを熱心に勉強してきた人を、批判しているわけではないことに、注意していただきたい。楽しみ方は人それぞれだし、僕はラス回避ルールも大好きだ。尊敬するプレイヤーも沢山いる。
ちなみに、魂天になった今も、別のアカウントでは玉の間で遊んでいるし、天鳳も特上卓でのんびりと遊んでいる。
あの独特の緊張感は、たまらなくクセになるのだ。
ただ、ラス回避ルールは、既に研究されすぎてしまった。「もうこの分野では、僕はAIに勝てない」と、直感的に感じてしまったのだ。
あと、渡辺太プロやお知らせさんに、僕は全く、かなう気がしない。彼らは本当に、同じ人間なのだろうか。ある意味では、AIなんかよりもずっと、"人外"じみていると思うのだが。
麻雀に興味を持つのがあと5年早ければ、また違ったかもしれない。
最新の戦術を学んだところで、その優位性はあっという間に崩れ去る。
10年前の人類の最善手の中には、今のAIにとっての「悪手」が、数多く存在する。
今のAIの最善手すら、10年後には「悪手」とされている可能性だってあるのだ。
僕たちは、何を信じて、何を疑えばいいのだろう。
このように、ラス回避ルールの勉強は、「現状のAIの最善手」を学ぶことに、比重が置かれすぎる時代に突入してしまった。
では、王座の間はどうか。
そこにはまだ自由がある。まだまだ研究の余地が、未開拓の領域が、人類の遊び場が、広がっているのが、あなたには見えないだろうか?
○ぼくのかんがえたさいきょーのまーじゃんせんりゃく
「もし子どもに戻れたら?」と考えたことはないだろうか。
純粋に、無邪気に、遊びたいだけ遊んで、疲れたら寝る。こんな幸せなことは、人生において、なかなかない。
遊びに夢中な子どもは、この幸せに気づいていないのだ。今にして思えば、なんという贅沢だろう。
僕にとって、王座の間は、子どもになれる場所だ。僕たちは皆、巨大な砂場で遊んでいる子どものようなものだ。
「誰のお城が一番スゲーか、勝負だ!」
ここでいうお城とは、"戦略"だ。
皆それぞれに「こうすれば勝てるのではないか?」という仮説を立て、全力でぶつけ合っているのだ。
それを考えるだけで、ワクワクしてくる。
まだまだ僕たちは、子どもでいられるのだ。
○あなただけの"勝ち方"を、ぶつけてみろ
もしかしたらあなたは、地元で一番、麻雀が強かったのかもしれない。家族の中では、負け知らずだったのかもしれない。
さらなる"強さ"を求めて、ネット麻雀の世界に挑み、ついには"魂天"と呼ばれるまでに、なってしまったのだ。
しかし、こんなことを感じたことは、ないだろうか。
「オレのすごさは、こんなもんじゃない」
「もっと強い人と、戦いたい」
「勝って、強さを、証明したい!」
だったら、一秒でも早く、王座の間で麻雀を打つべきだ。
受けて立とう。というか、大歓迎だ!
あなたのような人と戦いたくて、僕たちはこんなところまで登ってきたのだ。皆、あなたと戦えるのを楽しみに待っている。
今なら、「僕たちはここに来るために、麻雀の基本を勉強をしてきたのだ」と分かる。
僕らは皆、同じだ。
"自分の信じる最強の麻雀戦略"を、試したくてたまらないのだ。
○麻雀を愛するあなたへ
まず、これまで麻雀の戦術を磨いてきてくれた偉大な先人たちに、敬意を表したい。僕が今こうして麻雀の楽しさを存分に味わえているのは、先人たちの知恵を、効率良く学ぶことができたからだ。本当に、感謝している。
その上で、僕はこの先、自分の頭で考え、新しい戦術を生み出し、実践していこうと考えている。戦術を学ぶのは、超えていくためだ。
それこそが、僕にできる一番の恩返しだと、信じているからだ。
最も影響を受けたのは、鈴木たろうプロだ。
麻雀プロという、少ない対局数で結果を求められる立場でありながら、「麻雀は自由だ」と語り、勝つ姿も負ける姿も見せ続け、今なお"強さ"とは何かを探究し続けている。
その姿勢は、まさに僕にとってのヒーローだった。いつだって僕に、勇気をくれた。
僕は、彼のようなカッコいい人間になりたい。麻雀プロになりたいわけではない。一人の人間として、"自由であることの価値"を、教えられる人でありたいのだ。
たろうプロは麻雀を通して、文字通り"人生を賭けて"、僕たちにずっと大切なことを教えてくれている、と思っている。
効率良く勝てる戦術やテクニックも、確かに大切だ。だけど、それ以上にずっと価値あるものが、人生にはあるのではないだろうか。先人たちは、僕たちに、何を残そうとしてくれているのか。僕たちは、未来の子どもたちに、何を残せるのだろうか。
まだまだ、学ぶことだらけだ。
そして、今これを読んでいるあなたに、僕からのお願いがある。
僕と一緒に、遊んでほしい。
大好きな麻雀を、学ぶ楽しみを、僕はあなたと共有したい。
ほんの短い人生で、これほど素晴らしい時間も、なかなかないだろう。
今はまだ、戦いに夢中で、気づいていないかもしれないが、僕たちが過ごしているこの時間は、奇跡のような幸せな時間かもしれないのだ。
ただ、この贅沢な時間の過ごし方の価値に気づくのは、もう少し、後になってからなのかもしれない。遊ぶことだけに没頭している、子どものように。
やり方は簡単だ。いつものように"雀魂"を開いて、段位戦のボタンを押すだけでいい。
一緒に楽しく、麻雀を打とう。
長くなってしまったが、ここまで僕の話に付き合ってくれてありがとう。
もし機会があれば、あなたの考えも、聴かせてほしい。
きっと言葉を交わすより、麻雀を通してのほうがいいだろう。あなたの考える最強の麻雀戦略を最も表現できるのは、麻雀にほかならないからだ。
言葉だけの論理は、よほどの説得力がないと、相手にされない。というより、長い時間をかけて、あなたの麻雀の"強さ"の証明をする過程こそが、段位戦なのだ。
だから僕はここで待つ。あなたの考えを聴きたいからだ。僕の考えを聴いてほしいからだ。
あなたと一緒に、さらなる"強さ"を、探究したいからだ。
○さいごに
ここは、一つの旅の終着点であり、新たなる旅の出発点だ。
一緒に、未知の世界を冒険しよう。
魂天到達、本当におめでとう!
2023年11月23日 horiwo128