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新人キャピタリストの動き方(その1)

だいぶご無沙汰しちゃいました。2021年4月にYJキャピタルとLINE Venturesが一つになりZ Venture Capitalとして新しい航海に出たのですが、PMI(Post Merger Integration)と呼ばれる会社統合と、新規投資先の開拓に力を注いできていたら、すっかりnoteを更新するのを忘れてしまいました(汗)
東京、ソウル、サンフランシスコに拠点があって、各拠点メンバーにZVCのバリューやカルチャーを植え付けていくためには、情報発信が重要だ!と思って、私が経験したこと、苦労したこと、新しく発見したことを「日記」という形で、日々、社内向けにブログを書いていました。どれくらい社内に響いたかわからないけど(涙)
というわけで、社内向け日記をちょこちょこと社外向けにも発信していこうと思いました。自分の考えや思いを社外に発信することで、また新たな視点だったり意見をいただいたりできれば、と思っています。私が誇れるものはあまりないので、どんどん叩くなり破くなりしていただけると幸いです(笑)

お恥ずかしい第1回は、私がVCに転職した直後に感じたこと、どういう動きをしたかという点について振り返りたいと思います。新人キャピタリストの皆さんの参考になれば幸いです。参考にならないかもしれませんが(笑)


私がZVC(当時はYJキャピタル)でベンチャー投資業務に従事するようになったのは2013年5月からです。転職とはいえ、前職(DI)でVC(Venture Capital)・PE(Private Equity)業務に従事していたので、投資実務においては全くの素人ではありませんでした。しかし、直前までベトナムで5年間駐在していたため、日本での最新のVC業界についてアップデートが出来ていませんでした。

5年間で日本のVC業界は様変わりしていました。ベンチャー企業を主役とした大規模イベント。投資会社の看板というよりも、キャピタリスト個人が脚光を浴びるエンターテイメント業界のようなカルチャー。20代の方が運営する独立系VCファンド。Facebookを通じて蠢く様々なコミュニティ。どれも私にとっては衝撃的でした。「このベンチャー村に入っていくのは大変そうだな」と感じました。

ZVCに入ってすぐに、これまでの先輩方の実績もあって、インバウンドの紹介案件が自分の手元にどんどん入ってきました。当然、一つ一つ丁寧に対応していると、気付くと忙しくなります。そして、なかなか自分で発掘した会社への投資にいたりませんでした。

投資には一定程度の成功確率があります。成功確率を上げるための努力をしないといけません。100社面談する、という数だけを追えば良いビジネスではありません。成功しそうな将来有望な100社と面談する、というのが重要です。量と質を追わないといけません。

ベトナムでPEの仕事をしている時は、この確率を上げにいく仕事は実はそこまで難しくなかったです。当時、投資したい領域が消費財メーカー(Consumer Goods)でした。そしてほとんどの消費財メーカーは未上場でした。なので、各消費財カテゴリーのトップ10社のリストを作り、上の企業から順にアプローチして投資機会を探っていきました。当時はベトナムの消費財メーカーに出資しようとする投資家の数も少なかったので、アポも簡単に取れました。今振り返ってみても、競合環境って改めて重要だな、って思いますね。
しかし、日本に戻ってきた私が同じようなアプローチを試そうにも、うまくいきません。今ではたくさんあるスタートアップのデータベースも当時は全くなかったのでリスト作成は容易ではありませんでした。自分の力でデータを集めてリストを作らないといけません。これはなかなか骨が折れる仕事なので、ベトナム時代のように簡単にはいきません。

Tech CrunchやThe Bridgeなどのニュースメディアで紹介される会社はすでに資金調達をした後なので、そこからアプローチを開始しても時すでに遅しです。そこでコマース・メディア・B2Bというようなグルーピングをしてリストを作って、DMを送付してコツコツとアウトバウンド営業していました。

先輩VCにはあらゆる方面から魅力的な会社がどんどん紹介されていきます。どうしたら良いか悩み続けました。

SNSに目をやると、毎日のようにスタートアップメディアで資金調達のニュースが流れていました。そして、Facebook上でVCと起業家がコメント欄でワイワイと騒いでいました。私はどうすればそのコミュニティに入ることができるのか考え始めました。先輩キャピタリストのみなさんが起業家にコメント欄やTwitter上でワイワイいじりあっているのが羨ましくもあり、なんとかしてそのコミュニティに認めてもらって輪に入れてもらえないか、そんなことを真剣に考えていました。

そこで、Facebookで積極的に情報発信をしている人の投稿パターンを分析しました。一番多かったのが、出資先のプレスリリースを後押しする応援コメントです。「これは鉄板だ」と思いました。なぜなら、投資家が出資先のプレスリリースを一生懸命宣伝するのですから、起業家から感謝のメッセージが届くからです。Skyland Venturesの木下さんも「VCで投資先のサービスリリースや資金調達のリリースを投稿しない人は残念です」って仰っていたので、見様見真似で頑張ってSNS投稿するようにしました。

一方で、色々試して分かったことがあります。応援する起業家のフォロワーが少ないと、フォロワーの少ない私とその社長の二人のコメントの絡みで終わってしまうのです。これは観客のいない演芸場で漫才をやっているようなものでした。それはそれで楽しいのですが。自分が売れっ子芸人じゃないのが悔やまれます。ごめんよ。

どうすれば、もっとコミュニティに入っていけるのか。その答えは、コミュニティの重鎮と仲良くなることだと気付きました。でも、自分はキャピタリストになりたて。自分の出資先を持っていません。有名起業家やコミュニティの重鎮と何も関係を持っていません。

上司だった小澤隆生さんに紹介をお願いすることもありました。しかし、「有名な起業家に会いたいから紹介してください」と言っても馬鹿丸出しになりますし、キャピタリストなりたての私が相手に与えられるメリットが一つもありません。起業家は投資家に対しては、ビジネスの関係です。なので、経済合理性が働かないと投資家のために時間を使ってくれることはありません。

小澤さんから、「イベントをやってごらん」とアドバイスをもらい、いくつかアイディアを小澤さんに出してもらって、言われたままにイベントをやった記憶があります。しかし、長続きしなかったです。残念ながら。自分で考えていなかったからだと思います。でもその頃にやったヤフーベンチャーピッチでは、フォトシンスさんをゲストに呼んで、出資にいたりました。ご登壇いただきありがとうございました。

勉強のため様々なイベントに足を運びました。有名なイベントは、新宿の野村證券ビルで毎週木曜の朝7:00から開催していたMorning Pitchです。朝7:00開催なので、6:00に起床し、6:30には自宅を出ないと間に合いません。まるでゴルフに行っているような気分で、新宿に毎週足繁く通いました。何回行ったか覚えていませんが、そこから1社だけ出資につながりました。Helpfeelという会社で、私が初めて自分でソーシングし、出資できた会社でした。

また、前述の木下さんが企画運営していた渋谷新太宗ビルで開催されていた朝の勉強会にも行きました。そこでdelyの堀江さんとも知り合いになりました。他社のイベントで投資先を発掘するんじゃなくて、自分のイベントを作らなくちゃ、と焦る気持ちがつのりますがなかなか腰が上がりません。

YJキャピタルに入って3年ぐらい経過して、起業を考えている若者向けのイベント案を思いつきました。IPOやM&AなどのExitを経験してエンジェル投資家として活躍している先輩起業家をゲストに呼び、サクセスストーリーを語ってもらうイベントです。参加者は「すごい!」「かっこいい!」と先輩起業家たちを尊敬の眼差しで見つめ、必死でメモをとります。先輩起業家もそうした起業家の卵を見て、未来への恩返し、という思いで積極的に協力してくれました。また、聴衆の中にはまさにこれから起業するという方もいらっしゃったので、エンジェル投資を相談する場にもなりました。多忙の中、時間を割いて協力してくださった起業家・エンジェル投資家のみなさんには頭が上がりません。

有名な起業家との関係が構築でき、将来の起業家も発掘できる。しばらく私はイベントを続けました。結果的に、イベントを通じて起業家の皆さんから学んだことを一冊の書籍にして出版することまでつなげることができました。なんと結果的に一石三鳥!に。

イベントに参加する側、主催する側を両方経験してみて分かりましたが、他の方のイベントに行くよりも、自分でイベントを開催する方が、ターゲット顧客に会える確率は高まるので、イベント開催は本当におすすめです。多くのSaaS企業が自社イベントを開催している理由がわかります。

こうして輪に入りこんだ私は、やがてTwitter上で家入一真さんとけんすうさんとラップバトルを戦うステージにまで行くことができました。あのラップバトルはとてもつらかったですが、やっと憧れのコミュニティに足を踏み入れることができたかな、って感じがした記憶があります。足掛け5年かかりました。

次回はイベント以外の動き方についてまた次回ご紹介したいと思います〜。


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